「残機×99」第2巻 愛南ぜろ先生
新潮社さんのバンチコミックスより刊行です。
さて、突然見知らぬ空間に閉じ込められた99人の少女。
彼女たちは昔のテレビゲームをモチーフにした高難易度のゲームを、自らの命を使ってプレイさせられることになってしまいます。
続々と死んでいく少女たち。
「残機」が減っていく中、20番のあきらの順番がまわってくるのですが、そのあきらのとんでもない秘密が明らかになり……?
かえでは、あきらに命じました。
その手をどかしてよ、あきらちゃん、と。
あきらの手は、自らの股間を隠すように押さえつけています。
絶望的な表情を浮かべるあきらですが、目を閉じ、呼吸を整えて……落ち着きを取り戻すと、そっと手をどかして見せました。
ですが楓はまだ追及の手を止めません。
パンツの中見せてよ、女同士なら恥ずかしくないでしょ?
それともなに、人に見せられない体してるわけ?
あきらは必死に、待ってくれ、私の話を聞いてくれ、と弁解するのですが……もはやかえでに聞く耳はないようです。
あたし言ったよね、「男は大嫌い」だって。
あたしにはあきらちゃんが、脳みそが性欲に満ちた変態スケベ男に見えたんだけどなぁ……?
……あきらは、それでもかえでに自分の思いを理解してもらおうとして、言葉を続けるのです。
私は、自分を男だと思ったことは一度もない、だけどおかしいんだ、周りの人たちはみんな私を男にしたがるんだよ……
それは、あきらの心の底から出た本当の思いなのでしょう。
かえでは、あーなるほどー、と笑顔で手を叩くのですが……
すぐにこう続けるのです。
……かえでにあきらの気持ちを理解してもらうことはできないのでしょうか。絶望に打ちひしがれるあきら……ですが、そんな状況をぶち壊す悲痛な悲鳴が辺りに響き渡りました。
あきらの前のプレイヤー、19番の少女。
彼女もまた、死の淵に追い込まれていたのです。
最初の村の前に立ちはだかる、大きな一つ目の怪物。
その怪物が、遠距離からレーザーのようなもので攻撃を仕掛けてきたのです!!
そのレーザー葉すさまじい切れ味を持っていて、19番の少女は両足を切断されてしまいました。
もう逃げることはできません。
もうやめろ、やめてくれ!
そう叫んでも、怪物が止めてくれるはずもなく。
やがてそのレーザーは
あきらの順番がまわってきてしまいました。
待ってかえで、話を聞いてくれ。
涙ながらに懇願するあきらなのですが、かえでも涙を流しながらあきらを拒絶します。
うそつき、初めて誰かを信頼できると思ったのに。
そんな楓の声を聴きながら、あきらはゲームの中へと入っていきます。
目の前には、あの一つ目の怪物。
さらに唯一の対抗手段である剣は、怪物の後ろに落ちているという状況。
まずはあの件を取りに行かなければいけないわけですが、一撃でも喰らえば待っているのは「死」。
現実世界に戻ることはおろか、もうこうやって何かを考えることもできない。
無の意識を永遠と過ごす、それが死なんだ。
あきらを包む圧倒的な恐怖。
そんなあきらのプレイを、かえでは憎々しげに見つめています。
あの時抱き着いてきたのが男だったなんて。
私があきらちゃんに何かを感じていたのは、不快感からくる胸のざわめきだったんだ。
気づかなかった、最悪だ。
男なんて、死ねばいいのに。
恐怖に駆られたあきらは、木の陰に隠れて震えることしかできません。
見ているほかの少女たちも、少しでもゲームを進めてよ、こいつ男なのに一番役立たずじゃん、と悪口を並べるのです。
そんなギャラリーの声が聞こえたあきらは、私は男じゃない、と漏らします。
現実世界でも、あきらはつらい経験を強いられてきました。
自分が女性であると主張しても、親ですらそれを認めてはくれない。
それどころか、手遅れになる前にもっと男らしく育てないと、と学校にまでお願いして無理やり男子と一緒の扱いを強いてくる。
父さん母さん、僕の心を決めつけないでよ。
僕は男じゃない。
私は生まれ変わったんだ、女になったんだよ。
いつの間にか口に出ていたあきらの想い。
ですがあきらの感情など、怪物にとっては何の関係もないのです。
木の陰に隠れていようが、レーザーの切れ味は変わりません。
あきらはあっさりと、肩口から左腕を切り落とされてしまい……!!
もう、あきらは助からないでしょう。
死を前にして、あきらはもう一度かえでに話しかけました。
君に誤解されたまま死にたくない、聞いてくれ。
見て分かる通り、私の体は男だ。
「男らしくない」言動を取る度に私は周りから男になるよう強制されてきた。
私には「男らしさ」がわからなかった、どうやって生きれば周りから変な目で見られずすむのかずっと考えてきた。
大学合格が決まったあの日までは。
……素敵な人に出会った。
私は今までのウソの自分を捨てて新しく生きると決めたんだ。
私はあの日生まれ変わったんだ!!
男の自分を捨て、女の自分として生きていくと決めたんだ!!
そう絞り出すように言っても、かえでに「どうしてあたしの体に反応したんだ」と聞かれては、返す言葉がありません。
こればかりは、肉体に刻まれた本能というほかないのでしょう。
もうそのことを理解してもらう時間もありません。
あきらは、かえでに最後のお願いを始めます。
私はもうじきここで死ぬ、同じ大学の体育学部三年に、藤堂豊という人がいる、私が好きだったという気持ちを伝えてくれないか。
君は自分の命を懸けて私を守ろうとしてくれた。
本当の君は、とても優しい子なんだと思う。
……あきらを蛇蝎のように嫌っていたかえでですが、その言葉には何か心を揺さぶられたようです。
そんなかえでに、あきらは畳み掛けるように言うのです。
私と君は似ていると思ったんだ。
嘘の自分を作り、自分を守ろうとすることで今まで傷つかずに生きてきたんじゃないか?
煮たもの同士の私たちならきっと、いい友達になれると思ったんだ。
かえで、後は頼んだよ。
生きてここを出て私の願いをかなえてくれ。
あきらは、棒切れを持って怪物の前へと歩いていきます。
そんなもので怪物をどうにかできるはずもありません。
約束だ。
あきらのその言葉と同時に、怪物のレーザーは
すぐに次の順番の少女が転送される……はずでした。
ですがなぜか、なかなか次の順番の少女の転送が始まりません。
なぜなら、あきらはまだかろうじて生きていたのです。
どちらにしろまもなくその命を失うであろうあきらに興味を失った怪物は、その場を離れていきました。
あきらは……今まさに燃え尽きようとしている命を振り絞り、はいつくばって……
落ちている剣を取ったのです!!
私はもう助からないけど、同課他の人にはゲームをクリアして欲しい。
生きてほしい、死んでいった人たちの分まで。
あきらはそう言い残して……落ちていた剣で、自らの命を絶つのです……!というわけで、主人公の一人であるあきらが壮絶な死を迎えた今巻。
ですがそんなことはお構いなしにゲームは進んでいくわけで……!!
死を賭したあきらのプレイによって、ようやくプレイヤーたちの手元に剣が戻ってきましたが、怪物の強さが翳ったわけではありません。
残されたプレイヤーは、どうやって怪物を倒すのでしょうか。
そして個々を潜り抜けたところでこの先、どれだけの困難が待ち構えているのでしょうか……?
着々と「残機」を減らしていく少女たち。
更にこの後、このゲームに秘められたまた別の恐怖が明らかになると共に、思いもよらない助け舟が出されて……?
少女たちがどんどんとむごたらしい死に方をしていく情け容赦ないグロ描写は今巻も全く衰えません。
そんなハードなゲームが繰り広げられていくと共に、このゲームが現実ではどうなっているのか、という本作の謎に迫るピースも少しずつ見せていきます。
そして、ゲームをクリアして現実に変えるという大目的の他に、かえでにある一つの目的が生まれ、彼女の思いもよらない行動と共に物語はさらに膨らんでいき……
容赦な進んでいく物語、おぼろげに見えていく謎、さらに増していく恐怖、迫りくるタイムリミットと「残機」。
これから先も、目の離せない展開が続いていきそうです!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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