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今回紹介いたしますのはこちら。

「開田さんの怪談」第2巻 木々津克久先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、怪談大好き開田さんが、リアクションの良い生瀬くんに怪談を話して怖がらせていくだけの本作。
生瀬くんが開田さんを好きなため、怖がらされてもめげずに彼女に近づいていくわけですが、今巻ではそんな構図が少し変わるお話が繰り広げられて……?



授業の開始を予告するチャイムが鳴りました。
生徒たちは各々の席に着くのですが、開田さんはまだ生瀬くんがまだ戻ってきていないことに気が付きます。
どうしたのかと考えているうちに、生瀬くんは戻ってきたのですが……様子が変です。
どうも、何かを怖がっているような……?
開田さんの階段を聞かせたから、と言うのならば話は早いのですが、今日に限ってはまだ怪談を聞かせてはおりません。
大切な生贄……もとい、リスナーである生瀬くんですが、既に十分怖がっているためか、いつものように授業中に怪談を聞かせようとしても拒否されてしまい……
可愛そうなくらい怯えている生瀬くんを見て、開田さんは気が気ではありません。
誰だ、生瀬くんを怖がらせた奴は!?
こんなに怯えさせるなんて、許さない!!

生瀬くんが「すでに怯えている」と言う状況は、その後も何度か起きてしまいます。
開田さんも何とかその怖がらせている人物が誰か探ろうとするのですが、なかなか尻尾をつかめないうちに数日が経ってしまいました。
ですが、とうとうその人物が誰か突き止めることができたのです。
学校で、誰かに呼び出されたらしい生瀬くん。
彼の後を追いかけていきますと、彼を待っていたのは金髪の美少女でした!!
彼女の名は高荷メリージェーン。
親の仕事の都合で2か月前に転校してきた、アメリカ人とのハーフの少女です。
彼女はその目を惹く美しさのみならず、成績まで優秀な傑物。
そんな彼女が、何故生瀬くんを呼び出しているのでしょう?
メリージェーンは生瀬くんに気が付くと、親し気に笑いかけ、今日は面白いものを持ってきました、と何かを取り出します。
それは、ホラー映画でクリーチャーが現れているワンシーンを映したタブレット!
見事に怖がって怯える生瀬くんを見て、メリージェーンは大喜び。
ナマセ怖がりデース、これワタシ編集したホラームービー、ゴーストストーリー、と笑うのです。
……何だ過去の光景、よく似たものを何度も見かけたことがあるような……
同じことを思ったのかどうなのか、開田さんはもう我慢できず、二人の前に姿を現してしまいました!

あなただったんですね、生瀬くんを怖がらせてたのは。
そう話しかける開田さんに、生瀬くんは全てを説明してくれます。
彼女とは委員会が一緒で何度か話したんだけど……彼女ホラーマニアなんだ!
オカルト映画だとかスプラッタ映画だとか、人に見せたがるんだ!!
最初は委員会の皆に見せてたんだけど、だんだん僕にばかり見せる様になって……!!
メリージェーンは、にこにこしながら、ピュアに怖がってくれる人に見せるのが一番いい、ナマセベスト、とそれはもう嬉しそう。
そんな一連の様子を見た開田さんは、かつてないほど機嫌が悪そうになっていき……
遂には、生瀬くんを怖がらせて何が楽しいんですか、可愛そうじゃないですか、とどの口が言うんだとつっこまざるを得ないような正論を言うに至るのです。
メリージェーンはと言いますと、もうすでに開田さんのことを生瀬くんから聞いているようでして。
ホラーストーリーを話してくる女性だと聞いている、会いたかったと笑うものの……彼女は決して開田さんと仲良くなろうと言うつもりではなさそうで……
当初、開田さんの怪談を聞いて、もう十分怖い目に遭っているからやめてくれ、とお願いしたと言う生瀬くん。
ところがそれを聞いてメリージェーンは、逆に生瀬くんにロックオンしてしまいました。
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日本の怪談ごときで怖がることができる生瀬くんは本当に怖がりだと確信した、自分も怪談を調べてみたが地味で退屈な話ばかり、我が国では子供でも怖がらない、そう結論付けて!
生瀬くんばかりか、愛する怪談そのものまで馬鹿にしてくれたメリージェーン。
もう開田さんの堪忍袋の緒は切れてしまいました。
放課後付き合ってください、本当に怖い階段と言うものを教えてあげましょう。
そう、メリージェーンに挑戦状をたたきつけたのです!!

望むところだとばかりに、メリージェーンはその怪談を聞きにやって来ました。
開田さんは、とある公園までメリージェーンと生瀬くんを連れてきて、自分が一番恐ろしいと思った心霊写真だと言うものを見せてきます。
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それは、この公園の角の方にある木々の間に、光の粒の様なものがいくつも写っている写真でした。
今一つピンと来ないその写真、流石の生瀬くんもまだ怖がってはおりません。
メリージェーンは、ゴーストフォトは大概CGだし、これに至っては人型すらしていないからで気が悪いと扱き下ろしてきました。
そこで開田さんはまず、今写真が20年前のフィルム写真で、CGではないし、合成もしていないと説明。
さらに、今同じように同じ場所を撮影しても、同じ粒々が撮影できる、と実演して見せてくれました。
確かに不思議ではありますが……これは何なのでしょう。
そこで……まず開田さんは、人の魂はどこに宿ると思うか?と前置きしてから……それでは、お耳拝借、と怪談と語り始めるのです。

1986年、この公園で衝撃的な事件が起きた。
高さ7センチ、幅20センチほどのビニール袋とガムテープで梱包された包みが公園のゴミ箱から発見。
その中身は、血抜きされて精肉されたような肉の塊。
表皮には体毛はなく、人間の肌のようにつるっとしていた。
その堤のサイズは、公園のゴミ箱に入るギリギリのサイズ。
犯人は明らかにゴミ箱に捨てるために、血を抜いて梱包している。
発見後すぐに公園中のゴミ箱を調べ、合計32の包みが見つかった。
犯人は車などの移動手段がない近所の人間ではないかと考えられ、大捜査が始まったものの……
見つかった死体からは、肝心な頭部や指先と言った身元確認につながる部位が発見されず、遺体が誰なのかもわからずじまい。
公園の半径10キロ圏内で徹底して聞き込みをしても手掛かりは見つからず……
今でこそ殺人事件の時効は撤廃されているものの、制度変更前の事件はその限りではなく。
結局犯人はおろか被害者すらわからないまま、捜査は終わりとなった。

怪談かと思われたところで、迷宮入りの猟奇殺人の話を聞かされ、生瀬くんとメリージェーンはさっそく腰が引けてしまいます。
それでも、猟奇殺人ならば我が国でもたくさん起きている、とまだメリージェーンは持ちこたえているのです。
が、この後の開田さんの放った止めには耐えられるはずもありませんでした。
わかりませんか?
さっきの写真見てください。
光の粒に見えるものはいくつあります?
20?30?
大きさは周りと比較してだいたい10センチ×20センチくらい……
よく見ると、見えてきませんか。
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32パーツでは人の形までは戻れない。
彼はまだ幽霊にもなれないで、ずっとここにいるんですよ。
パーツがすべてそろえば幽霊になって、恨むなり成仏するなりできるでしょうが、それすらもできず……
殺人者は彼の死後さえ奪った。
魂まで殺したことになりますね。
……恐る恐る、自分で写真を取り直すメリージェーン。
すると、やはりあの光の粒はしっかりと映って……メリージェーンはついに耐えられなくなり、マイゴッド、と頭を抱えておびえるのでした。

生瀬くんだけでなく、メリージェーンも怖がらせることができて、今までのもやもやの分さらに気分よく満足できた開田さん。
実際はあの光の粒、木漏れ日と金網、地面の照り返しでできる光学現象に過ぎないわけですが……
二人を怖がらせるには十二分だったようです。
が……この二人、ちょっと怖がり過ぎ。
メリージェーンは涙をぽろぽろとこぼしながら、生瀬くんにがっしりと抱き着いて放しません!!
絶対離さないでナマセ!!と泣きじゃくるメリージェーン。
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……開田さんは、いつまで怖がってるの、いい加減離れなさい!と二人を引きはがそうとして……またまた苛立つことになってしまうのでした……!



と言うわけで、開田さんと生瀬くんの間に割り込んでくる(?)新キャラクターの登場する今巻。
そもそも第1巻には巻数表記が無く、第2巻が出るかどうかもわからない状態でしたが……思いのほか早い登場となってくれました!!
単行本の売れ行きが芳しくないと、続巻が出なかったり電子版だけの刊行になったりする秋田書店さんだけに、この早い刊行は嬉しいところ!
そしてそんな秋田書店さんがGOを出した単行本ですから面白くないはずもございません!!
今巻でも開田さんは生瀬くんにどんどんと会談を語っていきます。
オカルト系、細菌系、サイコ系、そのジャンルは多種多様!
第2巻と言う事でバリエーションも増えまして、中には怪談を語るのが開田さんではなく、いつもの開田さんの創作ではない恐ろしい落ちが待っているお話も用意されていまして、開田さんも読者の皆様も飽きさせない工夫が凝らされております。
さらに感動系のお話もすっと混ぜこんでくるなど、流石の木々津先生と言った構成も見せてくれるのです!!
そして忘れてはならないのが、あの「フランケンふらん」とコラボしたエピソードも収録しているところ!!
怪談好きの開田さんと、怪談を現在進行形で生み出している感のあるふらん。
二人の出会いが何を生み出すのか……必見です!!
ついでに木々津先生の代表作の一つであるあの作品の主人公もセリフだけながら登場してみたり。
夢の競演までも楽しめてしまうわけです!

嬉しいことにおまけとして描き下ろしの6P漫画も収録されております。
その描き下ろしのお話もなのですが、開田さんと生瀬くんの関係にも変化が見られ始めるのも注目したいところ!
今回紹介させていただいたメリージェーン登場のおかげで、二人の関係性が怖がらす人と好きだから怖がらされても耐える人、と言うだけの関係ではなくなっていきつつありまして……
まさかのラブコメ的展開も今後期待できる、かもしれません!!
……その今後は、やはりこの第2巻の売れ行きにかかっていそうですが……!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!