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今回紹介いたしますのはこちら。

「一日三食絶対食べたい」第1巻 久野田ショウ先生 

講談社さんのアフタヌーンKCより刊行です。


久野田先生は17年に四季賞の大賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
その後18年に本作を読み切りとしてアフタヌーンに発表後、webコミックのモアイに再掲載。
大きな反響を呼び、読み切り版を第1話としてコミックDAYSにて連載作品となりました。

そんな本作、そのタイトル通り、主人公が一日三食食べるために頑張る漫画となっています。
ですがその世界観に大きな特徴がありまして……?




就職の面接で、「長所」を聞かれた青年、ユキ。
彼はこう答えました。
1日3食絶対食べることです。
これからも3食をずっと食べ続けたいので、ホントーにヤなんですけど、働くしかないんで来ました。
それにニートのままじゃリッカさんに嫌われてしまうかもしれないので、どうかよろしくお願いします。

そんな舐め切った返答をしたにもかかわらず、就職は決まりました。
自室に飛び込み、仕事決まったよリッカさん、と報告すると……
中で待っていた10歳の少女、
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リッカはユキくんすごい!!と大喜びしてくれました。
「中の仕事」は倍率高いのに凄いよ、と笑顔のリッカに、ユキはちょっと目をそらしななら、偶然事務員の空きがあってホントよかった、と答えまして。
そんな明らかにおかしい態度のユキに気が付かず、リッカは外の仕事はお給料高いけど危ないもんね、中の求人があってホントよかった、と喜びながらも安心しています。
ユキは、これで俺も稼げればもっといろいろな食材変えて、いろいろなご飯を食べれるようになりますよ!と話を変えて行くのですが……
リッカは、ユキくん実はご飯飽きてた?と心配そうに尋ねてきまして。
ユキはお慌てで、そうではないんですけど、野菜三種類しかないと限界があるっていうか、と言い訳をするのでした。

ある日突然起きた大洪水と、それから続いている氷河期。
その二重の大災害によって、人類は大幅にその数を減らしてしまっていました。
少なくなった人類は、かろうじて残った高層建築物をビオトープとして集団生活を送っています。
リッカはユキの同居人で、裁縫の仕事をして生計を立ててくれていまして。
その収入で何とか食べてはいけるのですが、流石に幼い彼女に頼りきりと言うわけにもいかず、ユキは仕事をする決意をしたわけです。
ですがいざ仕事の日になりますと、弱音を吐きまくるユキ。
働きたくない。
オレ馬鹿で役立たずで泣き虫でクズだから、すっげぇ怒られてすぐ辞めさせられる……
そんな彼を、一回り以上年下のリッカが励ましてくれて、何とかユキは気持ちを立てなおすことができたのでした。

期待と不安の入り混じった初仕事。
皆がみんな自分の仕事に手いっぱいで、まともに相手をしてくれる人すらいなかったのですが、たった一人、スギタという男性だけは自ら進んでユキのバディを買って出てくれました。
君と組むことになったスギタです、と言う彼……なんだかドライな印象を受けるテンションの低い男性。
なんだか怖そうだと思ったユキは、仕事前の作業中の事故があっても自己責任ですよと言うような誓約書にサインをしながら、俺メンタルすっげぇよワインで起こらないでくださいね、とアレなお願いをするのでした。
ちょっとイラついたらしいスギタ、軽く足を蹴って今日の仕事の説明を始めました。
今日は初日なんで近場にしてもらったし、事故を減らすために二人一組で仕事してるから、そう簡単には死なないから安心して。
……お前がヘマしなきゃな。
とんでもない人と組むことになった、と内心げっそりするユキですが、仕事の時間は待ってくれません。
スギタは防寒具を投げて私、早速外出るから、明日から今日と同じ時間に来て、チームは50人くらいいるけど基本組んでるやつ以外とかかわりはない、とりあえず見つけたもの提出してれば、あとは自由な仕事だよ、と一気に残りの説明をして外へ出るのです。

今日の仕事場までは歩いて5分ほど。
すぐさま前髪が凍るほどの寒さの中歩いていきますと、その道中で「水チーム」の姿が見えました。
かつて川だった場所の氷を掘り起こし、「元」川の氷を切り出す。
そして溶かして生活用水にする……という仕事をしている水チーム。
あれは相当きつい、あっちに回されない貧弱な体でお互い助かったな、とスギタは言うのです。
では、スギタとユキのチームは何をするのでしょうか。
やることは大きく変わりません。
今日やってきたのは、かつての内だった場所。
この場所の氷を切り出していき、その中に埋まっている植物などを採集、そして提出するのです。
なにせ突然の災害で、何もかも無くなったわけで。
何かすらよくわからない植物でももしかしたら何かの作物かもしれませんし、そうでなくてもかつてあったものを研究することが復興の一歩になることも考えられます。
勿論それは植物に限らず、電化製品や生活用品、薬物などでも同じこと。
機械類などは壊れて使えなかったとしても、金属としての価値や、分解して設計図代わりにすることもできるのです。
何か凄いものを発見すれば、将来教科書になったりするかもしれない。
そんなスギタの割と適当な言葉も、ユキのモチベーションを少しばかり上げる効果があるようです。
仕事を始めると、かつて嫌われまくっていたあの黒い虫やら、何かよくわからない草、携帯電話、小さな花、といくつかめぼしいものは見つかりました。
スギタの評価は「7点」。
仕えるのはこの小さな花くらいか、金のあるやつが欲しがるから、と回収しようとするのですが……
ユキはけろりとした顔で、これはリッカさんのお土産何でダメです!と拒否。
スギタは……ユキが恋人と暮らしていると誤解してイラついたようで、私物の持ち帰り禁止でーす、と花を投げ捨てやがるのでした。

仕事に疲れて帰ってきたその日も、リッカはいつも通り優しい笑顔で迎えてくれます。
頑張らなくてもいい、毎日返って来てくれるだけでいい。
そう言ってくれるリッカなのですが……そうもいかないでしょう。
翌日以降も仕事を頑張るユキですが、そんな時に目を惹くものを発見するのです!!
それは……緑色の小さなマメ。
グリンピースか何かに見えるそれ、今の世の中では市場でも見かけることはありません。
早速内緒で懐に入れようとするのですが、スギタに見つけられてしまいました。
どうしようとしていたんだと言う彼の質問に、こっそり持って帰って育てようと思ってた、混載遺骸が食べたい、最近健康状態の良くないリッカにいいものを食べさせてあげたい、その為に
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給料以外に食糧が手に入りそうなこの仕事を選んだんだ、と食い下がっていくユキ。
するとスギタ、その食い下がりに意外な反応を見せたのです。
前自分が組んでたやつは真面目で正義感が強い奴で、すごく嫌いだった。
それに引き換え思えは気弱そうで、口答えしなさそうで良いなと思った。
実際はお前、自営の精神が強くて扱いづらいんだけど……
お前も副業を当てにしてはいったんなら都合良い、俺はお前が何を持ち帰っても何も言わないから、おまえも俺が何を持ち帰っても何も言わない、そんな感じで仲良くしよう。

期せずして仕事以外の協力関係となった二人。
そして例のマメの件も力になってくれました。
このまま持ち帰っても意味がない、専門家の助けがいる、見つけたものの活用の仕方を教えてやるよ。
そう言って、スズシロと言う研究者を紹介してくれたのです。
彼はさっそく、その緑色のマメ、エンドウを弄り始めました。
工学チームが作ったと言う、植物がすぐに成長するライトの下にエンドウを植え、水と添え木を与えると……エンドウはみるみる成長。
あなたがいれば俺んちの食糧事情は解決ですね!!と目を輝かせるユキ、スズシロも植物をくれるなら何でもいいよ、と自分の私的利用を良しとしてくれるようです。
ですがそのエンドウ、エンドウではあるものの、あまりいいものではなかったようです。
そのエンドウは原種で、成熟すると勝手にさやがはじけてマメが地面に落ちてしまいまして。
それだけならまだしも、品種改良される前のエンドウなだけに、味もよくはないだろう、と教えられて……
美味しいエンドウにするには、味の良いエンドウや、破裂しないエンドウを見つけて掛け合わせる必要があります。
もしくは、品種改良されているエンドウを見つけるか……
せっかくの成果が空ぶりでがっくりするユキですが、なんと近くにエンドウ栽培されていた農地がある、とスズシロが教えてくれたのです!
あまりに都合よすぎる上に、今まで何故そこが掘り返されていないのかと言う疑問は残りますが……とにかく手に入れらっれば食糧事情も改善します!
じゃあさっさと終わらそうとスギタも乗り気になってくれまして、早速回収に向かうのですが……
まずはお昼を食べてから。
一日三食、絶対食べるのが長所ですからね!!

昼食中、スギタにもひとつしたいことがあると言う話を聞かせてくれました。
こうなる直前にレンタルしていたDVD,「惑星ソラリス」。
それだけは死ぬ前に見ておきたい、と。
テレビにDVDデッキと、現状ではなかなか入手が難しそうなものが必要なだけに、実現は遠そう。
それでも生きる目標があるのはいいことなのでしょう。
ユキも前は楽しみにしてた漫画とかあったな、と漏らすのですが……そちらの方が実現は不可能と言えそうです。
仮にその作者が生き残っていたとしても、今はライフライン維持のために全員が働かなくてはならない状況。
芸術活動している余裕はないのです。
さみしい世の中になった、と漏らしながら、二人はようやく現場へと向かうのでした。

そのエンドウ畑だった場所は……大きく整理出した氷の崖の真下にありました。
頭上には巨大なつららが無数に垂れ下がっておりまして、いつ落ちてきてもおかしくない状態。
直撃すれば命にかかわってしまうでしょう。
なるほど場所がわかっていても、命と引き換えにしてまで掘る必要はない、と思われたのもわかる立地条件です。
が、これも一日三食食べる為。
気休めのヘルメットをしながら掘り進めていくのですが、さらに悪いことにこの辺りは海抜が低いため、掘り進める距離も長くなってしまいます。
そして深く掘ると言う事は掘った場所が穴になると言うことで、その穴の中にいる状態でつららが落ちてきたら……お陀仏であります。
そこで、スギタは提案してきました。
穴の中にユキが残って掘り進め、つららが落ちてきたら上で待機しているスギタが空中で砕く、と言うワイルドな作戦を!
まあつららも相当な太さですから、ちょっとやそっとでは落ちては来ないはず……と言う事で作業を進める二人。
深さ的には十分掘り進めても目的のものが出なかったので、横に穴をひろげて行くことにします。
すると……つらら、落ちてきました。
幸い落下前の破壊が間に合いユキには当たらなかったものの……次どうなるかはわかりません!
出して、ここから出して!と恐怖におびえるユキですが、穴は結構な深さになっていて、穴から出すにはロープが必要です。
スギタがロープを取りに行っている間に、気を取り直すユキ。
どうせ見つけるまで終わらないし、やるしかないか。
俺が頑張ってエンドウ見つけたら、給料めっちゃもらえて、もっといい暮らしできるし、リッカさんはめっちゃ元気になる!
とか信じないと、やってられんわ!
戻ってきたスギタは、やる気がみなぎっている(ように見える)ユキをみてすぐ助けるタイミングじゃないなとおもいなおします。
距離を測り直し、エンドウ畑の場所がここで間違いないことを確認。
何か出てきたか、ずっと掘ってるけど平気か、替わるか?
そう話しかけても、ユキは言うのです。
俺の仕事なんで、と。
そんなユキの想いが通じたのでしょうか。
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とうとう、待望の……前に見つけたものよりずっと大ぶりのエンドウが見つかりました!!
喜び勇んでスギタにそれを見せつつ歓喜の声を上げるのですが……スギタは全然雪の方を見ておりません。
全然見てねえなこっち!と思わず突っ込むユキなのですが、スギタは逆にこう叫んできました。
てめぇこそどこ観てんだ、早く頭守れ、落ちるぞ!!
ちょうどその時、スギタは振ってきたつららを砕いてくれたところでした。
ですがその破片が全て消え失せるわけわけではなく……
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大きな破片の一つが、無防備な雪の頭部に……直撃するのです……!




と言うわけで、極寒の地で食事をするために頑張っていく本作。
生活を改善するためのものを命を懸けて掘り出すという、あまりに厳しいこの世界。
この後物語は、そんな世界の中で生きて行くユキとリッカの関係を中心にしながら、この世界の物語が紡がれていきます。
明確なゴールのない世界だけに、主人公の二人に最も求められるのはやはり食事と……絆。
やはりおいしい食事と言うのは人の心を満たすのに最も手っ取り早い手段ですから、一見いい加減なことを言っているようにも見える彼の長所は、この世界においては本当に長所であると言えるわけで。
とはいえ基本的にはダメな部分の多い彼が、なぜ一回り以上も年下のリッカと暮らすことになったのか?
そして、リッカは何故これほどまでにユキを大事に思っているのか?
そんな二人の少し不思議で、暖かな関係が楽しめる作品となっているのです!

勿論二人だけが活躍するわけではなく、スギタやスズシロの掘り下げも少しずつ行われていきます。
彼らにも彼らのドラマがある、そんな当たり前ながら大事な要素もしっかり描かれていますよ!

作品の雰囲気から、ゆったりと物語が進んでいくかと思われたもののそう言うわけでもなく、この第1巻の内から物語は大きく動いていきます。
早くも様相を変える物語は、これからどうなっていくのか?
独特の世界観の中で描かれていく、ユキとリッカの関係に注目せざるを得ませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!