ga0
今回紹介いたしますのはこちら。

「ガンニバル」第1巻 二宮正明先生 

日本文芸社さんのニチブン・コミックスより刊行です。


二宮先生は16年にちばてつや賞の佳作を受賞、同年にモーニングの新人賞で大賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
さらに同年からモーニングで「鳥葬のバベル」を連載、その卓越した画力で迫りくるクリーチャーの恐怖を描かれました。

そんな二宮先生の最新作となる本作は、山奥の集落を舞台にしたサスペンスもの。
前作では得体のしれない怪物を相手にした謎の多いクリーチャー系のホラーを描かれましたが、本作はと言いますと……?



人類史が幕を開けておよそ20万年。
「食人」は一つの文化でした。
様々な理由からその分かは消えていき、日本では明治以降明確に禁止されています。
ですが……今でも世界のどこかで、あるいは日本のどこかの集落で、そんな風習が残っているかもしれない。
それは、この村かもしれない。

などと嘯いているのは、最近この山奥の村、供花村に赴任してきた駐在の阿川大悟です。
よそ者が、と心ない言葉を投げかけてくるものもいないではありませんが、大半はよくしてくれる人たちばかり。
起きる事件もせいぜい村人同士のちょっとした喧嘩や迷子くらいで、大悟はその平和ぶりをたっぷり堪能していました。
一応のパトロールも終わり、自宅兼駐在所に戻って一息ついていますと、奥から娘のましろを抱いた奥さん、有希が出てきます。
そして、アンタひまそーにしてんなら引越しの片づけ手伝ってよ、と大悟に文句を言ってくるのです。
いきなりそんな風に糾弾された大悟は……おまえ愛変え非ず巨乳だな、とすっとぼけた返答。
有希はこの村に来て一週間たつのに依然片付いていない現状に少し苛立っているようですが、それでもこの平和な環境は気に入っている様子。
ですが、平和過ぎて前の駐在さんのようになってはダメだ、と有希は言います。
聞いた話によれば前任の駐在は、暇すぎて借金を作るまでパチンコにのめり込んだあげくに失踪した、とのこと。
しかもいなくなる直前には村民ともめて奇妙なことを言っていたと言うのです。
この村の人たちが、人を……!
そこまで言いかけたところで、駐在所の電話が鳴りました。
今度は誰の喧嘩か……と思いきや、その一方は驚くべき通報でした。
遺体が見つかった、と言う……!!

その遺体は、無惨に食い散らかされた老婆のモノでした。
熊にやられたのだ、と同行した猟友会の面々は言います。
中でもそのリーダー格、後藤恵介はかなり苛立っているようで……
仇は俺ら猟友会が取ってやる、と怒りをあらわにするのです。
と、その時、大悟は遺体に気になるものを見つけました。
腕についた、人間の歯型を!!
恵介はそのばあちゃんはボケてたから自分で噛んだんじゃないか、と言うのですが、歯形がついているのは腕の外側。
自分で噛みつくのは難しいのではないか……?
そう呟いて首をひねっていますと、突然恵介が激昂!!
何が引っかかってんだ、梧桐の人間が虐待してたって言いてえのか?
周りの人々もみな口をそろえて、後藤の家がそんなことするはずがない、と糾弾をはじめ……!!
極め付けには、恵介が
ga1
猟銃を突き付けてくるのです!!
よそ者のあんたに村の人間を馬鹿にされるのは我慢ならない、あんたにそんなつもりがなくても関係ない、俺が馬鹿にされたと感じたらその瞬間頭をぶち抜いてやる!!
……その瞳には、明らかな「本気」が見て取れます。
そこで大悟は、わるかった、許してくれ、と素直に謝るのですが……
恵介はにやりと笑い、ならいいんだ、仲直りしよう、冗談だってホントにやるわけないだろ、と恵介の方に腕を回してくるのです!!
銃口を突きつけて脅してくることが、「冗談」で済むわけがありません。
確実に本気であった恵介に、せめてもの反撃として大悟は、完全に脅迫罪だから、次は逮捕するぞ、と反撃を試みて……
そんなタフな態度が良かったのか、あるいは一度は折れて話を聞くこともできる男だと思ったのか、恵介は大悟のことを気に入った、と言いだします。
警察の現場検証やらなんやらが終わってひと段落突いたら、自分たちがいつも飲んでいる店に家族を連れてこい、歓迎会をしてやる、と続ける恵介。
それは単純な歓迎ではなく、「ここで生きて行くなら大事なこと」だろ、と脅迫めいた言葉をつけたしてきたことから、実際は参加を強制しているようで。
……前任の駐在とは、ここで生きて行くなら大事なこと、が上手く築けなかったとでもいうのでしょうか。
恵介は、別に何もない、ととぼけながら……俺らはお互いのためにいい関係築いていこうってだけの話だ、とだけ言うのでした。

家の手伝いもせずに飲みに行くのか、いなかったこれだからイヤだ、と有希は出かける大悟にいやみを言ってきます。
それでも、ここで生きて行くって決めたんだから受け入れろ、と一喝し、大悟は歓迎会に向かいました。
大悟が着くなり、家族は来ないのか、お前の嫁父でかくていい女なのによ、と下品なことを言う恵介の仲間たち。
心から連れてこなくてよかったと胸をなでおろす大悟、有希は同窓会らしくて実家の方に言っちゃっている、と適当な嘘を言うのですが、その嘘は一瞬で恵介に見破られてしまいます。
ga2
下手な嘘はやめろ、お前の嫁も子供も家にいるだろう、この村じゃお前たちがどこで何やってるかなんて筒抜けだ。
供花村のせまさ、なめんな。
……再び恵介の、いや、この村の恐ろしさを思い知らされた大悟。
ここで生きて行く?
生きて行けんの?俺達……

そんな大悟の不安も知らない有希ですが、彼女は彼女で別の不安を感じていました。
なにせこの新居は、失踪した前任の駐在が住んでいた家。
この家に住んでいた人物が、消えている……
それを考えると、その背筋に寒いものを感じてしまうのです。
ここで済むのちょっとやだな、と言いながら、有希は一人で外に出て行ってしまったましろを追いかけようとします。
が、その時、何となく触れた柱に何か、字が彫られていることに気が付きました。
その字は、こう書いてあります。
ga3
逃ゲロ。
そしてましろはと言いますと、野良猫を追いかけて雪が降り積もりつつある夜道を歩いていました。
今まではまるでましろを導くようにゆっくり歩いていたその野良猫なのですが……
突然ピタリとその足を止め、ましろのほうを振り返って何かを見つめたかと思うと、ピュッと素早く駆けだしていってしまいました。
ましろを見て逃げた、わけではありません。
ましろの後ろに迫っていた、大柄な老人を見て逃げたのです。
そしてその老人は
ga4
口に人間の指を咥え……リヤカーに、人間の死体と思しき何かを積んでいて……!!!


と言うわけで、何やら恐ろしい気配を感じる供花村で追い詰められていく大悟達。
第1話にして、早くも家族全員に危機が降りかかって来てしまいました。
この村の中で起きていることは何もかもお見通しだとでも言うような、そら恐ろしい言葉を投げかけられてしまった大悟。
前任の駐在のものと思われる、戦慄のメッセージを見つけてしまった真希。
そして最も危険と思われる、怪しすぎる老人と出くわしたましろ……!!
大悟たち家族は、この危機的状況を逃れることができるのでしょうか……?
そしてこの恐怖から今は逃れられたとしても、まだまだこの村の恐怖は終わることはありません。
この村を事実上掌握している「後藤家」。
恵介をはじめとして、村内に多く存在している後藤家は、単なる地主や豪族と言った存在ではなさそうです。
彼らの持っている、一族のつながり以上の力は何なのでしょうか。
その後藤家ともめたと思われる、前任の駐在はどうなってしまったのか。
そして……あの奇怪な老人の正体は何なのか!?
村の奇妙な風習も垣間見え、さらにこの村が異様だと感じている別のキャラクターも登場。
謎と不安、そして恐怖の香りがどんどんと増していき、今巻のラストではさらに思いがけない急展開が……!!
二宮先生の確かな画力がその緊迫感を増幅させ、読み手を物語に没入させてくれるのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!