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今回紹介いたしますのはこちら。

「死人の声をきくがよい」第12巻 ~今度こそみんな死ぬ!!編~ ひよどり祥子(うぐいす祥子)先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、強大な霊能力を秘めた岸田と、彼にそっと寄り添う幼馴染の霊、早川さんの出会う恐ろしい出来事を描いていく本作。
今までは基本的に一つ一つ独立した恐怖譚を描きつつ、時折物語の核心に触れるような出来事が巻き起こる……という形で本作は進んできました。
ですが今巻では、とうとう物語が大きく動くとんでもない出来事が巻き起こって……?



岸田たちの住む青葉市にある、青野浦海岸では奇妙なものが打ちあがっていました。
一見すると巨大な亀の頭部にも見える、異形の怪物の死体の一部が。
警察と共にあらわれ、その死体を検めていたのは、岸田の父親でした。
今とある組織で超常現象を調べ、その驚異の対策を立てる仕事をしている岸田の父親ですが、打ち上げられたこの死体には異様なものを感じています。
それはこの死体そのものに、ではなく……この一週間で、この死体が流れ着いたのが3体目だ、という点に、です。
海底で何かが起こっている……?
岸田の父親はどうしてもその不安をぬぐいきれないのです。

その海底では何が起きているのでしょうか。
実は、ゴーストが首謀者となり、彼女が起こした宗教の信者たちの祈りの力を使った儀式を行っていたのです!!
とある事件でその存在が明らかになった、「海神の娘」。
その娘を憑代として、海神を目覚めさせる……!!
海神が目覚めれば、すべては終わります。
復活した海神後からは絶大などという程度では収まりません。
いかなる霊能者でもとめることはかなわず、かりに直接接触しようものなら、それだけで脳を焼かれて命を失うことになる……
そんなとんでもない怪物が、今にも目覚めようとしていたのです!!

青葉市どころか、日本の、世界の危機が差し迫っていることなど知る由もない岸田は、コイズミにこう言われてしまっていました。
そろそろ一周忌だな。
早川涼子だよ、忘れるとかひどくね?
すぐに思いつくことのできなかった岸田ですが、彼のすぐそばにはいつも彼女がいるのですから、そういわれてもピンと来ないのも無理はないのかもしれません。
美人薄命というか、本当に気の毒だったよ、俺としてはお前を利用して彼女ともっとお近づきになるプランだったのに。
……そんな小泉らしい下衆すぎる小泉の言葉をスルーしながら、岸田は思い起こします。
時々考えることがある。
早川さんを救うこともできたんじゃないか、と。

それは早川さんが疾走する一週間前のことでした。
幼馴染といっても最近は少しばかり疎遠になってしまった早川さん、すれ違っても岸田は軽く会釈するくらいになっていました。
しかもそんな状態で、岸田はさらに気になる物を見てしまったのです。
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なにやら、イケメンの先輩と二人きりでいい感じになっているように見える早川さん……
ではなく、その彼女とあまり目を合わせないようにそそくさと通り抜けようとした直後、彼女の体に見えた
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無数にまとわりつく黒い蛇のようなものを……!!
後々わかる事ですがそれは、「死の蛇」と呼ばれる霊的生物です。
人間の死ぬ時に発するエネルギーを求めて寄ってくるモノだそうで、これにまとわりつかれたものは近日中に高い確率で死亡する、という恐ろしい存在。
その時の岸田は、それがなんなのかもわからず、その後一度も見ることはなかったのですが……
とにかく、よくないモノであることだけは分かったようです。
下校の夕暮れ時、早川さんが一人になったタイミングを見計らい、岸田は彼女に声をかけました。
あの、早川さん。
これだけは言っておこうかと……変に思うかもしれないけど。
君に、変な奴がまとわりついてる!!
……岸田が決意して告げたそのタイミング……あまりにも悪すぎました。
早川さんは、先程の先輩のことを言っているのだと思ってしまったのです。
岸田は何も気づかず、それは邪悪な蛇というか、本当に気持ち悪い奴だ、ぞっとするほど危険なんだ、と続けてしまいます。
例の先輩を悪く言っていると勘違いしている早川さん、そんな言い方純君らしくない、先輩はいい人だよ!!と声を張り上げました!!
そこでようやく意見のすれ違いがあることに気が付いた岸田が口ごもっておりますと……
早川さんはこういって、立ち去って行ってしまうのです。
心配しなくていいよ、別に私先輩と付き合う気ないし。
……彼女の去り際の表情は、怒り、というものではありませんでした。
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岸田がそんな悪口を言ったことそのものが悲しいような……そんな微妙な表情で……

最近の岸田は、父親の勤める施設で霊能力を磨く訓練をしていました。
もともとちょっとしたきっかけで霊能力が強く発現しすぎることのあった岸田ですが、施設の研究者たちはそうなってもケアできるようにするのも自分たちの仕事だ、と言ってくれています。
ですが……早くもその訓練の成果が出たのでしょうか。
早川さんを助けられなかった後悔の念を抱きながら街を歩いていた、その時です。
街を歩く、すべての人に
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あの死の蛇が見えてしまったのは……!!
しかものその蛇、いつの間にか岸田の右腕にもまとわりついていて……!?
岸田は早川さんを振り返り、あわててたずねます。
一体……何が起こるの?
早川さんはいつものように、何も言わず……ただ、岸田を見つめ返すのでした……




というわけで、いよいよクライマックスとなる本作。
今巻は丸々一冊を使って、物語を完結へと導いていく構成となっております!!
ゴーストがこのとんでもない計画を始めるお話で幕を開けたあと、その存在そのものがオカルトと言えるような賀露川先生、オカルトアイドルの魔子、そしてオカルト研究部の面々等々……それぞれがこの恐怖の連続に別れを告げるお話が繰り広げられていくのです。
それぞれのお話はいつも通りコミカルさやシュールさ、ストレートな恐ろしさやどんでん返しと、様々趣向を凝らしたお話となっていまして、ただ物語を整理するだけのお話で無いのもさすがと言えるところでしょう!
そしてある程度岸田の周りの人々の決着がついたところでやってくる、このすさまじい異変!!
この本作史上最大の事件が、物語のクライマックスとなるのです!!
あまりに強大すぎる敵を前に、一体岸田はどう立ち向かうのか?
その決着は……人によっては物足りないと感じてしまうかもしれませんが、ホラー漫画的に、何より本作の雰囲気的にはバッチリはまったラストシーンとなっております!!
そして本作の最大の謎であった、早川さんの霊の真実もとうとう完全に明かされることに!!
ホラー描写よりもその抒情を重視したラストエピソードは、まさしく必見!!
最後の最後でタイトルの意味もズンと効いてくるフィナーレを、見逃す手はございません!!!



今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!