sh0
今回紹介いたしますのはこちら。

「杉並区立魔法女学園平和維持部」 吉富昭仁先生 

太田出版さんより刊行です。


さて、SFにホラー、アクションにと様々なジャンルを手掛けられてきた吉富先生。
そんな先生の作風の一つに、「へんなねえさん」のようなフェチ色の強いコメディタッチの作品もありまして。
本作はその流れをくむ作品となっているのです!



篠原楓、15歳。
彼女は今日から新しい学校、魔法女学園に通うことになります。
楓は高校からこの学園の一員になったわけですが、実はここ、小学部や中等部もある一貫校。
学園内では小さな小学生たちの姿も見受けられ、新鮮な気分に浸るのですが……
とはいっても、今のところそれほど普通の学校と変わったところは見受けられません。
まあ普段から普通と違う魔法ばかり使っているわけもないでしょうし、そんなものなのでしょう。
そんなことを考えながら、楓はある教室を尋ねました。
そこにはこんな看板が掲げられています。
「平和維持部」と。

平和維持部って何の部活だろう。
楓もその部の事は何も知らないようでして、ノックした後、軽く咳払いして、失礼します、とその部屋の中に入っていきました。
するとそこにいたのは
sh1
ふたりの、なんだか距離の近すぎる姿勢の女の子でした!!
思わず目が点になってしまう楓ですが……周りを見回すとさらに混乱が加速します。
鋭い目つきで楓をにらみつけてくるショートカットの女子。
そしてその横で何やら泣きじゃくっている子もいまして……
うろたえる楓ですが、ショートカットの女子になんだお前、と問いかけられ、そこでようやく本題を切り出すことができました。
えーと、こちらの部長さんにちょっとお話がありまして……
恐る恐るそう切り出しますと……先ほどの、妙に距離の近い二人組の女子のうちの一人が、何の用かと反応しました。
ここにいる4人の女子の中でも、ひときわ小柄なその女子が部長なのでしょうか?
確認を取ろうとしたところ、その部長の胸元に顔をうずめているツインテールの女子が、動かないでと部長に指示。
そしてそのまま顔を胸にぐりぐりとうずめていきまして……いいにおい、と言いだしました。
匂いは関係ないでしょ、と部長は彼女に突っ込むのですが、意に介さずツインテールの女子はその顔を下の方へと移動させていき……今度は太ももあたりに顔をうずめ始めました。
本当に一体何をやっているのでしょうか……
ショートカットの女子は、こう言います。
走査(スキャン)してるんだ、と。
爆発する可能性のある「豆」が部長の体内に入ってしまった、それを探してるんだ。

なんでもあのツインテールの少女……「近眼の零子」は、透視能力を持っているのだそうで。
ですが近眼のせいなのか、透過できる距離はせいぜい5センチほど。
調子のいいときは8センチくらい行けると言うのですが……なので、体内を見るためにこうして物凄く密着して中を見ている、と言うのです。
それでも全然見つからないという零子ですが、体内にあるのは間違いないはず。
そこで今度は、足の裏にぺったりと顔をつけ……
sh2
ひんやりしていいにおい、とまた部長に突っ込まれる台詞とともに捜索を続けるのです。
ショートカットの女子は、「小豆の景」。
豆上のものを爆発させる力を持っているのですが……今試して見せることは出来ません。
何故なら彼女の能力には指向性がほとんどなく、半径3.5メートル内の豆上のものを素B手爆発させてしまうのですから。
いまその能力を見せると、どこにあるかわからない部長の体内の豆も爆発してしまうと言うわけです!
もう一人の鳴きは食っていた女子は、「近場の由美」。
対象の物質をテレポートさせる能力なのですが、その距離は50~80センチくらい。
テレポート能力は確かにすごいのですが……正直、手の届く距離であまりその恩恵を受けることはなさそうな。
そんな由美が、能力をさらに向上させるためにゼリービーンズを移動させる訓練をしていたところ、誤って部長の体内に移動させてしまった、とのこと。
それで零子が体内をくまなく見ているのですが……
脳や心臓と言った最大に危険なところはすでにないことを確認済み。
井の中なら昇華されて問題ないですが、大動脈の横なんかにあったりすると大変です。
早く部長の体内の豆をどうにかしないと、敵と戦えない……!
景はそう焦りを見せるのですが……
「敵」ってなんなのでしょうか。
豆を爆発させる能力で戦える相手、って一体……?
そんなことを考えていると、零子はようやく部長の体内の豆を見つけたようです。
眼鏡をかけにっこりと笑い……
sh3
うんこすれば大丈夫、と零子。
どうやら豆は腸の中に移動していて、しかも大分消化されていたようです。
ほっと胸をなでおろしたところで、ようやく楓の用事の方に入れそう。
それで、新入生が私に何の用?
そう尋ねる部長に、楓は一枚の紙を取り出して、確認しながら用件を切り出しました。
この学校って、先輩が後輩の面倒を見る「姉妹制度」があるんですね。
それで今日、リストが発表されたんですけど……
平和維持部部長、桐谷摩依さん。
sh4
今日からあなたが私の「お姉さん」です!
……真依は何も答えず……トイレに向かいました。
中等部二年生の真依が、高等部一年生の楓のお姉さん……
いろいろ変な気がしますが、なにせこの平和維持部、そしてこの学園自体が変なところだらけだったりするわけで。
新入生を加えたことで、そんな平和維持部に大きな変化が起きる予感がします!!



と言うわけで、吉富先生らしい百合&フェチ色と奇抜なアイディアが存分に味わえるお話となっている本作。
この紹介した部分では、微妙な能力を持つ少女達の、ちょっと変わった日常を描いていくお話……に見えるのですが、この後物語の色が大きく変わっていくことになります!!
吉富先生もこう言った展開になることを当初考えていなかったのでしょうか、あとがきでもそのことについては触れられているのですが……
本作、まさかのあの作品と世界観を共有する作品なのです!
その作品がどの作品なのかをここで記してしまうとかなり本作の核心に迫ってしまうネタバレになってしまうので伏しておきますが、吉富先生ファン方ならばにやりとできること間違いなし!!
勿論そちらの関連作品を読んでいなくてもわかりますし、楽しめる内容になっているのでそのあたりはご安心ください!!

そんなお話のからくり以外にも、吉富先生らしい味わいは満載。
エロス要素……といいますか、吉富先生の性癖が惜しげもなくさらされるフェチ要素もふんだんに盛り込まれていますし、お得意のSF要素にアクション要素もばっちり。
他作品との関連と言う部分以外でも驚きの展開がいくつも用意されておりますし、オチもしっかり効いた結末が待っている、先生らしい作品に仕上がっております!!
ちょっと変わった、フェチ成分豊富な漫画を求めている方ならば間違いなく楽しめることでしょう!!

さらに表題作の後、2本の読み切りも掲載。
一本は完全に独立した百合成分メインのお話なのですが、もう一本は表題作と同じ世界観でいてまたがらりと違った味わいの興味深いお話になっていまして、単行本としてまとまったことでより楽しめることでしょう。
さらに巻末には表題作のその後を描く描き下ろし漫画も4P収録と、たっぷり楽しめる一冊となっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!