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今回紹介いたしますのはこちら。

「メランコリア」下巻 道満晴明先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックス・ウルトラより刊行です。



さて、巨大彗星メランコリアが地球に衝突する間際と言う終末の世界で、今まで通り、あるいは何かを成そうと行動する人々を描いていく本作。
そんな一見バラバラに見えるそれぞれの物語が、やがて一つに繋がっていき……?



猫を助けようとして交通事故に遭い、昏睡状態になっていた少女、サトミ。
彼女の両親や看護婦さんが幾度となく話しかけても、彼女の意識は戻ることはない……と思われていたのですが、実際は少し事情が違っていました。
彼女には意識が残っていたのです。
とはいえそれはおぼろげなもので、深い井戸の底にいるような感覚にすぎず。
両親たちが話しかけてくれること自体はわかっているものの、ぼんやりとしていて何を言っているのかもわからない感じでした。
井の中の私、退会を知らず……
などと考えていたサトミに、それを言うなら大海だ、とツッコミがはいります。
振り向くことなどできるはずもないサトミが振り向くと、
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そこにはシルクハットにタキシードと言うしゃれた格好をした蛇がいました。
そしていつのまにかサトミは二本の足で、水が少したまった井戸の底のような場所に建っているではないですか。
聞いてみればここは、その蛇の頭の中の世界だとか。
蛇は、輪廻を司る神、ウロボロスだと名乗ります。
輪廻がそもそもよくわからないサトミですが、ウロボロスはそのあたりをサラッと流して語り始めました。
君は交通事故で昏睡状態になり、目覚めることなくこのまま死んでいく。
こんな仄暗い場所でだ、それでいいのかね?
勿論そんな運命を喜んで受け入れるものなんてそうはいません。
じゃあ、私を目覚めさせてくれるの?
すぐさま飛びついて尋ねるものの、それは無理、とあっさり却下されてしまいます。
ウロボロスは夢の中の存在で、夢の中でした存在できないからだと言うのです。
ですがそれ以外の事ならば何でもできるとのこと。
そんなことを言っても、こんな状態じゃ叶えたい願いもないよと漏らすサトミですが……ウロボロスはそんなサトミに上を見上げるよう促しました。
ぽっかりと空いた天上の穴から見える、無限に広がる空。
……その空を見て、サトミは言うのです。
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世界の滅亡!
気が付けば場所はハンバーガーショップに変わっています。
久しぶりのハンバーガーに舌鼓を打ちながら、世界の滅亡の仕方について話し合いを始めるサトミ。
どうせみんないつかは死ぬんだから、いっしょの方がいいよね。
綺麗でド派手に行きたい、流れ星を地球に落とすとか。
彗星、いいね!
そうやって、サトミの思うがままに決められていく世界の終わり。
彗星が落ちるまでまだ時間がありますから、それまでの「終末」に何かしたいことはあるか、とウロボロスはサトミに更なる望みを聞くのです。

何でもできるんだから、と世界にいろいろして楽しんだサトミ。
その結果、地球では様々な異常気象が起きるなどのあれこれがありましたが……
最終的にサトミがたどり着いたのは、日本人働きすぎだから最期くらい休ませよう、と夏休みを上げると言うもの。
ウロボロスはじゃあ猛暑にしよう、君は世界を滅ぼす天才だよ、と褒めそやしながら世界を炙り始めます。
それを聞きながら、サトミは天を仰ぎました。
いいなあ夏休み、私ももっと満喫したかったな。
だって私まだ11歳だよ、アラテンだよ、せめてあと10年は生きたかったなあ。
ウロボロスは何も言わずその言葉を聞いた後……残念ながらその願いはかなえてあげられないが、今の君にはもっと崇高な使命があるんだ、と話を変えるのです。

サトミの容体が悪化し、危険な状態に陥りました。
……とうとう、その時がやって来たのです。
いよいよ時が来ました、ご命令を。
かしこまってそう言うウロボロスに、サトミは……その命令を出すのです!
メランコリアを、墜とす!!
とうとう地球に落下するメランコリア。
その迫力あふれる光景を傍観するサトミとウロボロス……
だったのですが、そこに服を着ていないウロボロスのような蛇が現れました。
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止めるんだ、やっと見つけたぞ、なんてことをしてくれたんだ。
そう言うもう一匹の蛇を、ウロボロスはようやく来たか我が半身、と待ちわびていたかのような言葉で迎え入れました。
ウロボロスはもともと二匹で一匹の存在。
ですが離れ離れになったことで、お互いがお互いのすべきことを見つけてしまい、今までの出来事が起きていたのです。
タキシードのウロボロスが今作ろうとしているのが、完全なる輪廻(わっか)。
その完全な輪廻をようやく手に入れた、と言うのですが……
今まさに終ろうとしている世界で、なにがわっかだと言うのでしょうか。
メランコリアは地球に落ちようとしています。
そして、それを少年ヒーロー・キッドナップが何とか押し返そうとしているものの、いくらヒーローと言えどもひとりでは無理なようで……
もう地球は助からない、と思われたその時です。
ずっとこの星をひそかに見守り、地球を守り、ゲッサン……とウルジャンを愛し続けていた宇宙人が、時間を戻す装置のスイッチを入れたのは!!
宇宙人たちはこうして何度も時間を戻し、自らの介入を最小限にしながら地球を救う術を探していました。
ですがどうしてもメランコリアを押し返すことができず……
成すすべなく地球は滅亡の危機を迎え、時間を戻す。
そしてまたメランコリアが落下する時を迎え……
その繰り返しこそが、ウロボロスの求め続けていた完全なわっかだと言うのです。
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もう何回も述べたが、今回も礼を言わせてもらうよ、ありがとうサトミ。
また会おう。

まだ何事も起きていなかった日。
一匹の猫が悠々と道路を歩き、そこに車が迫って来る。
そしてそれに気付いた一人の少女が慌てて駆け寄って……
輪廻は、巡り続けるのです。



と言うわけで、この世界に何が起こっているのかがすべて明かされた本作。
終末の世界で起こる奇妙な出来事と、それを見守る人々の生活を描いていく本作、それだけでも十分に面白い作品でした。
ですがそれだけに終わらないのが道満先生の持ち味!!
それぞれのお話でところどころ見えていたものがここに来て一つになり、そして物語hが一気にクライマックスへとい向かっていくのです!!

クライマックスはやはり、メランコリアをどうするかと言うお話になってきます。
宇宙人たちはどうにかして地球人の力でメランコリアをどうにかしてもらうことしかできませんし、ウロボロス(裸)の方も人間の望んだことを叶えることしかできません。
ウロボロス(着衣)の作り上げた輪っかは非常に強固で、このままではその輪から抜け出すことは出来ないでしょう。
……どうやってメランコリアを押し戻すのか?
その全ては……メランコリアを見上げていた、本作の人々の願いに託されたと言うわけです!!

一つ一つのお話の完成度は言うまでもない道満先生の作品、ひとつにまとめられたクライマックスもまた素晴らしいものとなっています。
コミカルでシュール、それなのにドラマチックでメランコリック……そんな本作の全てを、是非ともその目でご確認ください!!


ちなみに本作、登場するキーワードで過去作品の世界とのつながりがあることが示唆されておりますが……その作品のあのキャラ、台詞付きでばっちり出てまいります!!
道満先生作品ファンならより一層見逃せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!