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今回紹介いたしますのはこちら。

「団地ともお」第33巻 小田扉先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、ともおと団地の仲間たちの毎日を描いていく本作。
もはや小田先生のライフワークと化している……かと思われていたのですが、今巻でまさかの最終巻!!
16年にわたる連載に終止符を打つ今巻、果たして気になるその内容は……!!



木下家の壁にかかっている、一つの日めくりカレンダー。
2月28日のページには5本のマッチ棒が平行四辺形を二つの三角形に仕切るような形に並んでいる図形が描かれていまして、「マッチ棒を日本動かして正三角形を二つ作れ」と言う問題がつけられています。
ピリピリとした空気が支配する中、問題に挑むともおたち。
しかもこの問題に、ともおたちだけでなく単身赴任中のお父さんまで巻き込んで必死に解こうとしているようです。
ですが今日の問題は難題のようで、お父さんもお手上げ状態。
これは問題が間違ってるんじゃないか、と唸るのですが……お母さんは、
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だとしたらあたしたちに明日は永遠に来ないわね、ととんでもないことを口走るのです。
結局どれだけ頭をひねっても解答は出ず。
とりあえずあきらめまして、また明日、いや、また「今日」頑張ろう、と一同は眠りにつくのでした。

あくる朝、吉本と一緒に学校に向かうともお。
普通に登校しているように見えたともおですが、おもむろに体を動かしまして、突然落ちてきたはずの鳥のフンを避けるではないですか。
すげーな、なんでよけられたんだ、と驚く吉本に答えず、ともおは曲がり角を指さし、そこから甘やかされた犬が来る、とよくわからないことを言い出しました。
するとどうでしょう、犬をおんぶしたおじいさんがその曲がり角から現れるではありませんか!
一体どんなトリックなんだ、と仰天するほかない吉本。
ともおはそんな吉本に、こんなことを言うのです。
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うちの一家、日めくりカレンダーに呪われてるみたいなんだ。
今日だけでもうかれこれ10回目くらい……信じてもらえねーよな。

家に帰った後、ともおは完全に問題を解くことをあきらめ、マッチ棒を重ねてやぐらのようなものを作る遊びをしておりました。
君子にまじめにやれと怒られても、どうせわかんねーもんと取り合わないともお……だったのですが、その様子を見てお母さんがひらめきました。
重ねる、か。
マッチ棒の三角形の底辺の下に、二本並べるようにマッチを置くお母さん。
こうすると、三角形が三つ重なってるように見えるわよね。
そういうお母さんなのですが、それが正解だという割れてもあまりピンとこないような……
お母さんは、明日になればわかるわよ、とピッと日めくりカレンダーを一枚めくるのでした。
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朝日が昇りますと……白紙だった一番上のカレンダーに、「明日」だった3月1日と、機能に比べると大分簡単な問題が浮かび上がって来たではありませんか!3月が、やっと3月が来た!!
喜び勇むともおたち……!!
どうやら木下家は、この日めくりカレンダーの問題を解かないと明日を迎えられない、謎の呪いにかかってしまったようなのです!!

その後も様々な問題が木下家に立ちはだかりました。
「根津が最近睡眠不足です、それはなぜ?」
「巻いてもよし、一本でもよし、団子でもよし、これは何?」
そんななぞなぞだけでは終わらず、「さかあがりをしろ」というなぜか突然運動系の問題もあったり。
さらに運動系と頭脳系が混ざり合った「お互いの膝の上に座って座られろ」という問題まで多種多様。
あげくの果てに、「こんなクリスマスは嫌だ、どんなクリスマス?」というそれこそ正解なんてないであろう大喜利まで出題されて……!!
そして、ようやく1年の締めくくり、12月31日の問題はこんなものでした。
「好きな人の名前を言え」
……この最後の日もまた、10回以上繰り返すことになってしまいます。
友達のような当たり障りのない「好きな人」を言ってもダメ。
お父さんとお母さんは、お互いの名前を挙げてあっさりクリアしているのですが……
やはり多感な小中学生のともおと君子はそう簡単にはいきません。
ずっと小4のままでいい、とまで一度は言ってしまうともおなのでしたが、お年玉もらえないよ、という言葉でようやく覚悟を決めた様子。
君子の方もついに口を割りまして……
へー、そうなんだ、とにやにやする両親の方を振り返りもせず、ともおと君子は床に就くのでした。
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そしてようやく長かった一年が終わりを告げたのです。
お年玉をもらって喜び勇むともお、何事もなかったかのようにすまし顔の君子、穏やかな笑顔のお父さん。
本当に長かったこの日めくりカレンダーとの戦い……10回以上繰り返した日も珍しくはなかったようで、念願の新年を迎えたお母さんはしみじみと言うのです。
この1年過ごすのに、15年くらいかかったかしらね、と……!



というわけで、日めくりカレンダーとの戦いを描いたこのエピソード。
同じ一年を何度も繰り返す、いわゆるサザエさん時空だと思われていた本作の裏側にはこんなからくりがあったのだ、ということが明かされる驚きのお話だったわけです!
サザエさん時空のからくりにまで言及する日常漫画が今まで存在したでしょうか?いや、きっと存在しなかったでしょう!!
お約束に真っ向から切り込む小田先生……さすがと言わざるをえますまい……!

それ以外のお話はラストを飾るにふさわしい(?)いつも通りの通常営業となっております。
団地に現れる着ぐるみの紳士、ダンディライオンの正体とは。
真の「終活」、負の遺産の処分にまつわる間さんのお話。
30年ぶりに発売されることになったゲームの続編、「トラベル戦記2」に翻弄されるゲームファンとゲーム雑誌編集部。
毎回長い長いお話をすることが、実は掟だった校長の苦悩……
そして最後のエピソードは、枝急に夜な夜なあらわれる謎の列車、「キゴザ800形」にまつわる前後編のお話となります。
特別ラストらしいエピソードではなく、いつもの本作に近い味わいのこのお話ですが、最後のともおのセリフは何気ないセリフですが、今間まで呼んできたファンの方ならば心に響く事でしょう……!

最終巻感の薄い内容である今巻ですが、それはあくまで中身のこと。
表紙は第1巻の表紙のリライトとなっておりまして、始まりである1巻とほぼ同じ構図であるにもかかわらず、一層「さよなら」感が強まっているような……!!
同時に最終回を迎える巻末描きおろしのスポーツ大佐と併せて、じっくりと楽しみたい最終巻になっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!