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今回紹介いたしますのはこちら。

「鬱ごはん」第3巻 施川ユウキ先生 

秋田書店さんのヤングチャンピオン烈コミックスより刊行です。


さて、就職を半ばあきらめながら、フリーター生活を送る鬱野たけしの食事風景を描いていく本作。
一人暮らしのフリーター暮らしなだけに、なかなか明るく楽しくとはならないのですが、今回は満足のいく食事がとれるのでしょうか……?



閉塞感にあふれる生活に、ひと時の救いを手に入れるため、有り金をはたいて旅行に出ることにしたたけし。
北陸新幹線に乗り込み、向かった先は金沢です。
禅を世界に紹介した仏教学者、鈴木大拙の哲学に触れることのできる施設、鈴木大拙館を訪ね、禅を組むのですが……さすがににわか仕込みの座禅で心の救済は得られませんし、たけし自身も得られるとは思っていません。
たけしが求める救済の本番は、そのあとにありました。
金沢くんだりまでやって来たのですから、当然今日はお泊り。
予約をしたのは温泉旅館でして、たけしは早速チェックインを済ませます。
お風呂に入れる時間や食事の時間などの案内を受け、部屋に通されまして……
その通された部屋にこそ、たけしの求める救済があるのです!!
温泉旅館の……広縁に!!
旅館の部屋の窓際にある、障子で隔てられた謎のスペース。
いい感じの椅子とテーブルが置かれ、ゆったりとくつろげるあこがれの場所……
この「広縁」こそが、今回の旅の真の目的!!
その真の目的を達することができる興奮を抑えつつ、広縁の椅子に腰かけるたけし、なのですが……
いざ座ってみますと、
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人一人のジャストサイズ……なんか、狭いのです!
広縁が広くない、これでは狭縁……!?
元々なかった部屋に強引に作ったのでしょうか、障子を閉めると懲罰房のような圧迫感に襲われてしまうのです!
カーテンを開けて外の景色を見ればまた気分も違うかと思ったのですが、そこに広がるのは網入りのガラス+網戸で外の景色があまりよく見えないうえ、虫まで張り付いていてまったく気分が変わらないのです!!
どうりで安かったわけだ、俺は何のためにはるばる金沢まで……
顔を覆って沈み込むたけしですが、そこでふとテーブルに置いてあるお茶菓子に気づきました。
袋に入った状態のままお菓子を砕き、食べやすくしてから開封。
旅館と言えばお茶菓子、これを食べて落ち着こう、とたけしはポリポリと口に運ぶのですが……
ひとしきり食べ終わった後、
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「お茶菓子」なのにお茶を入れていないことに気が付いてしまうのでした。


温泉に入りながらたけしは思います。
小さいころ、家族旅行で旅館に泊まった時は何もしないでも母親が勝手にお茶を入れていた。
三十路にもなるというのに、温泉に来るのはその頃以来だな……
どこかさみしくなるそんな郷愁にふけりながら、温泉の湯加減には満足するのです。

温泉から出れば、旅館でのメインイベント言えるお食事の時間です。
「笈」という詠み方のわからない部屋にやってきますと、何組かのグループが既に楽しそうに会話しながら食事を楽しんでおりました。
たけしはそんな自分には縁遠い喧騒をBGMにしながら、温泉上りに冷えたビールという至高の一杯を味わうのです。
そこに次々と料理が運ばれてきます。
能登もずくとミョウガの粕漬け、サーモンの手まり寿司とホタテの黄味焼き、万願寺唐辛子のもろ味噌添え。
加賀の太キュウリとジュンサイと葛きりの酢の物。
お刺身の盛り合わせ。
鮎の塩焼き。
郷土色豊かな料理の数々は、一つ一つなかなか食べでがあり、たけしをおなかを膨らませていきます。
ですがそんな食事の間ずっと、たけしには気になっている物があるのです。
ずっと食卓の箸の簡易コンロに鎮座している、鍋物。
あれはもしかしてもしかすると、能登牛のすき焼きだったりするのではないか?
そうだとすると、まだ満腹になるわけにはいかない!
ですが、昼間にインスタ映え目的の女子に人気の「金箔ソフトクリーム」を勢いで食べてしまったたけし、そのせいもあってお腹はほどなく満タンになってしまいそう。
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もう一品来たら厳しいかもしれない。
そんなことを考えていたそのタイミングで、仲居さんが小鍋に火をつけてくれました!!
固形燃料から立ち上がる炎。
やがてぐつぐつと音を立て始める鍋……!
お腹もいっぱいに近いたけしですが、思わず生唾を飲み込んでしまいます。
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はたして、小鍋の中身は……!?




というわけで、金沢旅行編が収録された今巻。
この金沢編も、遠路はるばるやって来たたけしをあざ笑うかのように、いつものようなちょっとしたがっかりの待つ食事風景が広がっておりました。
うだつの上がらない毎日を僅かでも忘れたい、そんな望みと共にやって来た金沢のラストを飾る鍋の中身は!?
そしてその後のたけしは!?
別にどうということがあるわけでもないのですが……たけしの旅行の顛末、皆様の目でご確認下さい!

その他にもさまざまな食事風景が描かれていきます。
施川先生の実体験をもとにした出来事と、よくある微妙な位置に存在するアイスの自販機をミックスした「自販機アイス」。
入ってみたさはあったもののなかなか踏ん切りがつかず、とうとう立ち寄ってみたそこで起こった小さな奇跡を描く「立ち飲み屋」。
様々なものがゼロな虚無の酒、ノンアルコールビールとそれを届けてくれる酒屋さんとのあれこれを描く「ノンアルコールビール」……
外食から自宅でのちょっとした飲食、出先での自販機といった、様々な食事風景を、たけしのモノローグと、仄暗い雰囲気で描いていきます。
ですが今巻は、紹介した金沢編の他にもある理由で出かけることになる沖縄編、思い立って出かける動物園編と、ちょっとしたイベントも盛り込まれております!
それぞれの場所やシチュエーションでたけしなりに食事を楽しもうとするのに、なぜかうまいこと行かないその光景……
そんなたけしの薄暗い食事風景、なぜだかくせになる味わいは今回も健在ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!