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今回紹介いたしますのはこちら。

「宇宙戦争」第1巻 原作・H・G・ウェルズ 脚本・猪原賽先生 漫画・横島一先生 

 エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。


さて、猪原先生・横島先生タッグ 久々の単行本刊行となる本作。
今回の作品は1898年に執筆されたSFの、そしてパニック物の名作古典、「宇宙戦争」の漫画化です!!
映画化もした超有名作品である本作ですが、以外にも日本では本格的な漫画化というのはされていませんでした。
実力派タッグが手掛ける「宇宙戦争」、気になるその中身はと言いますと……?




1901年、イギリスはメイベリー。
大きな流れ星が空をよぎったことにも気が付かず、写真家の男は仕事に精を出していました。
写真のこととなると他のことには目がいかなくなってしまう彼は、出来上がった翌日、朝一番にその写真をお客さんに届けるべく家を出ていきました。
朝ごはんを食べないどころか、奥さんのクララが言ってらっしゃいの口づけをしようと顔を向けてくることにも気が付かずに!
クララもそんなことにはもう慣れっこなようで、そんな彼を全くもう、とあきれながらもやさしく見送るのでした。

キスは忘れても、クララのいい表情をとることは忘れていなかった写真家。
そんな写真をとる大事な相棒、カメラをいじりながら道を歩いていました。
そんなことをしていれば当然注意は散漫になるわけで、当然というべきでしょう、街を歩く少年とぶつかってしまいました。
少年の運んでいた新聞と、彼の持っていた写真が散らばり……
お互いの荷物を拾い集めていますと、少年は写真家にこんなことを言い出しました。
写真屋なら、ホーゼルに写真を取りに行くんだろ?と。
全く思い当るところのない写真家ですが、それもそのはず。
少年によると、ホーゼルにあるオグルヴィ氏の砂採取場に隕石が落ちたというのです。
あの、写真家が仕事に夢中で全く気が付かなかった流れ星。
あれが落ちたのでしょう。
幸いそのオグルヴィ氏が写真の届け先。
写真を届けるのがついでになってしまいかねませんが……そんな撮り甲斐のあるものを逃すわけにはいかないでしょう!!
一も二もなく写真家は隕石のもとへと足を運ぶのです!!

……ところが、どうしたことでしょう。
そこにあった「隕石」は、我々の思い浮かべるそれとは全く違うものだったのです!!
それは
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巨大な、光沢ある金属製の筒のようななにか。
どう考えてもこれは普通の引責ではないでしょう。
ですが、少なくとも多大な興味を惹かれる被写体であることは間違いありません!!
写真家が夢中になって撮影しておりますと、そこにオグルヴィ氏がやってきました。
オグルヴィ氏は、自分の土地の迷惑なものが落ちたもんだ、と顔をしかめながら注文の写真を受け取り、ついでにその隕石の前でもう一枚写真を撮ってもらいます。
それでもやれ天文学者だ新聞記者だと対応に困っていてね、と愚痴の止まらないオグルヴィ氏。
ですがその横で、天文学者のステント先生が声を上げるのです。
隕石じゃあありませんよ、私は見たんです。
3日前、火星から何らかの火正体が発射されるのを!以来毎日決まった時間に同様の現象が起きている!
次々と火星から列をなして、地球に向かって真っすぐ飛来しているんですよ!
ものすごいスピードで、この円筒がね!
ざわつく周囲のやじ馬たち。
ということはつまり……この円筒の中にいるのは……!
ステント先生は一層気分を高揚させながら、謳い上げます。
これは、最初の接触(ファーストコンタクト)!
火星人から地球人への何らかのメッセージが、これから次々と……
と、言いかけたその時でした。
円筒のふたの部分が開き……
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中から、触手のようなものが見えたのは!!
その悍ましい姿に戦慄する人々ですが、ステント先生だけは違う表情を浮かべます。
火星人だ。
助けなければ!!
化け物にしか見えないその触手を見て、人々はその場を離れ始めます。
ですがステント先生は、あの姿こそ火星で生きるために進化した究極の姿で、向こうから見れば地球人の方が醜悪な姿をしているのかもしれない!と主張。
さらに火星人が苦しんでいるように見える、それは火星の重力が地球の三分の一だから、きっと未知の自重がつらいに違いない、助けよう、とみんなに声をかけるのです。
そしてみんなが徐々に納得し始めたのを見ると手近な布や枝を使って、自分たちが知性のある存在であることと攻撃の意思がないことを現す白旗を作り、円筒の方へと進み始め……
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地球という世界、火星という世界、我々はどちらも別々の文明と文化を持っているのだろう。
だとしたら、あの旗は……?
写真家の脳裏には、そんな不安が過ぎります。
そして、円筒の中から激しい閃光が迸ったのです!!
閃光は白旗を穿ち、燃え上がらせました。
突然の出来事に驚き戸惑う一同に向かって、円筒の中から……何か、奇妙な筒のようなものがのぞいていました。
それはまるで、銃口か何かのようで……!?
逃げろ、と叫ぶ暇もありませんでした。
その銃口再び放たれた閃光は
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とんでもない規模で……
その光の先にあった人間も、木々も、大地さえも、閃光の形に「消え失せて」いたのです!!
……その職業の性でしょうか。
写真家は、その瞬間を撮影していたのです。
地球対火星。
その戦争の、始まりの瞬間を……!!



というわけで、火星人の襲来から幕を開ける本作。
火星人の持つ兵器の力は絶大そのもので、人知を超えたものすごい火力を持っています。
そしてその火力を、交渉の余地など見せないままに無慈悲に振るってくるのです!!
現代の軍事力をもってしても勝てるかどうか怪しいと言わざるを得ないその力ですが、本作の時代は1901年。
軍隊と言ってもライフルや、人間や馬が引いて動かすタイプの砲台くらいしか持っていません。
そんなもので火星人に太刀打ちできるでしょうか……?

この後物語は、どんどんと絶望の色を強めていきます。
火星人の脅威をいち早く体験した写真家はこの後おびえてこの場から逃げようとします。
彼の中にある希望は、この地球が火星の三倍の重力があるという事。
ということは、火星人は満足に動くことができない、動かないということは、近づかなければ脅威にはならない……
そう考えたいところなのですが……
ここで思い出していただきたいのが、ステント先生の観測したもの。
……そう、脅威はまだまだこれだけでは終わらないのです!!

そんな火星人の恐怖と人々の奔走を、猪原先生の脚本でドラマチックに、横島先生のしっかりとした画力でダイナミックに描いていく本作。
原作が名作だけにお話のオチを知っている方も多いでしょうが、それを補ってあまりある身ごたえを生み出しております!!
これから先もこの名作をどう彩ってくれるのか、楽しみでなりませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!