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今回紹介いたしますのはこちら。

「どろろと百鬼丸伝」第1巻 原作・手塚治虫先生 漫画・士貴智志先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。 


士貴先生は91年にデビューした漫画家さんです。
デビュー後から「ライオット」「神・風」と言った人気作を数々連載されている士貴先生ですが、近年はその卓越した作画力を生かし、原作付き作品やメディアミックス作品、スピンオフなどをメインに手がけられておられます。
本作もそんな流れの作品となっていまして、こちらはそのものずばり手塚治虫先生の「どろろ」のリメイクとなっております!
「どろろ」と言いますと原作の方は未完で終わっているものの根強い人気を持つ作品でして、「どろろ梵」と言った漫画作品、ゲームソフト、実写映画、そしてアニメと様々な媒体で関連作品が生み出され続けていまして。
アニメ放映とほとんど同時期に連載が始まった本作ですが、アニメともまた違う味わいが楽しめる内容になっているのです!



一人の男が、複数の荒くれ者たちに取り囲まれていました。
男はその道を通りたいだけなのですが、荒くれたちはいわゆる追剥ぎのようで、ここを通りたいのなら金をよこせと男に迫ってきます。
ですが男、見るからにお金は持っていなさそう。
そこで荒くれたちは男の腰に差している刀に目を付けました。
かなりの業物と見た、そいつをよこしな、と男に命じるのですが、男はこう答えます。
だめだ、中身がねえんだ、外身だけ差してんのさ、と。
落ち着き払ったその言葉を聞いた荒くれたち、舐められていると思ったようです。
ふざけるな、と声を荒げ、男を取り囲んで刀を抜きました。
どうやらやる気のようです。
数人の荒くれ者に取り囲まれた男ですが、それでもなお余裕の表情は崩れず……
そんなに言うんなら
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仕方ねえや、と右腕を外したではありませんか!
そしてその外れた右腕の中からは、ギラリと光に本当の刀身が姿を現し……!!
その異様な姿に一瞬ひるむ荒くれ者ですが、一度抜いた刀を収めるようなまねはできません。
意を決して切りかかるものの、男は逆に荒くれたちをばっさばっさと切り捨てていくのです!!
気が付けば、そこに立っているのは男ただ一人。
まるで鬼のような強さを持つ男は……振り返りもせずその場を立ち去っていくのでした・

場所は変わり、男が襲われた場所からそう離れていない、戦場跡。
そこでは戦の犠牲となった兵士たちの亡骸がゴロゴロと転がっているのですが、そんな兵士たちが使っていた兵具をあさりに来る戦場泥棒たちが後を絶ちません。
その日も何人かが死体から鎧や刀をはがしていたのですが、そんな戦場泥棒たちの集めた兵具をかっさらおうと目を光らせている者がいました。
まだ年若い子供……名はどろろ。
どろろは身を隠しながら、積み上げられた武器の中から一番の値が張りそうなものを吟味。
目星を付けると、さっと抜き取って逃げ出そう、と考えていたのですが……ギリギリのところでバランスを崩し、音を立ててしまいました!!
当然も見つかってしまうのですが、どろろは持ち前のすばしっこさを生かし、すぐさまその場から逃げ去ってしまうのです。
戦場泥棒たちもどろろの逃げ足の速さをよくわかっているようで。
今回は幸い何も奪われていませんから、どうせ追いつけずに逃げられるのがオチだ、と見逃すのでした。

どろろは無事町まで逃げ帰りました。
井戸の水でとりあえず喉の渇きをいやすものの、水だけでは腹は膨れません。
間抜けな奴から何か頂くか、と街をうろつくものの……出会ったのは、今にも死んでしまいそうな僧侶ただ一人。
しかもその僧侶、逆に泥路に何か食べ物を恵んでくれないか、と頼んでくるではありませんか。
そこでどろろは、冗談じゃねえ、人にくれてやるほど持ってたらこの寒い中うろうろしちゃいねえよ、腹が減ったら人のもんをぶんどっちまうんだよ、今の世の中はみんなそうして生きてんだ、と啖呵を切ります。
人物をとるなんてめっそうもない、と弱々しく答える僧侶。
それじゃここで野垂れ死にしろ、街の中にもそんなのがゴロゴロしてる、今は「さむれえ」が人の命を無断で盗んでるんだ、おいらたちがくいもんぐれえ盗んだからって大したことねえんだぞ!
どろろはそう怒鳴りつけて僧侶のもとを離れるのでした。

暴力や死体が当たり前のように転がっている街を駆け抜け、どろろがたどりついたのは武家屋敷。
結局くいもんに不自由しないのはここだけか、と忍び込み、さっと見張りの侍の握り飯を盗み取ってまたとんぼ返りします。
泥路がまっすぐ向かった先は、あの僧侶の小屋。
おいくそ坊主、飯だ!と小屋に駆け込むどろろなのですが……
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もう、僧侶は息を引き取ってしまっていたのです。
無力感に襲われ、どろろは呆然としてしまい……追ってきた侍たちにつかまってしまいました。
それでもどろろは、てめえら侍が戦なんてやりやがるからこの有様だ、おいらは盗人でも生きてる間抜けから正々堂々盗む真っ当な盗人だ!と、侍たちに真っ向からケンカを売るのです。
……それは、目の前の僧侶一人助けられなかった自分と、そんな時代に嫌気がさして自暴自棄になった末の言葉だったのかもしれません。
侮辱された形の侍たちは、どろろが子供であろうと容赦なく痛めつけました。
さらに痛めつけるだけでは飽き足らず、川に投げ捨てようとしたその時……
その男は現れたのです。
荒くれ者たちを一瞬で切り捨ててのけたあの男、
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百鬼丸が!!

百鬼丸は、どろろを助けにやって来た、わけではないようです。
どいてくれ、俺の死霊退治を邪魔されたくないだけだ。
死霊、とはどういう事でしょう。
どさくさに紛れて逃げようとしていたどろろも、この調子ではそれも期待できないと思ったその矢先。
ずるり、ずるりと奇妙な音を立てて、草鞋「だけ」が橋の上を歩いてこちらに来るではありませんか!!
百鬼丸は口にしていた楊枝をその草鞋へと吹き付けます。
すると草鞋はぴたりと動きを止め……
そして、その草鞋を動かしていた「死霊」は
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川の中の死体やゴミを憑代として、実体化!!
悍ましい化け物と化して襲い掛かって来たのです!!
あわてて逃げだす侍たち。
そんな中で、どろろは見たのです。
両腕を外し、そこから覗く日本の刀を構える、百鬼丸の姿を!!



というわけで、生まれ変わった「どろろ」を描く本作。
原作の展開をなぞりながらも、士貴先生ならではの要素を盛り込んだ作品となっております。
どろろと百鬼丸がであった後、百鬼丸とそれなりにふるい仲であるらしい琵琶法師が加わり、物語は三人旅に。
それぞれのキャラクターを少しずつ掘り下げながら、登場するゲストキャラや魔物の背景もしっかりと描いていく……
そんな物語が堪能できるのです!

士貴先生独自のストーリーも非常に興味深いのですが、それ以外の部分も見どころ満点です。
先生の得意とするけれんみ溢れるバトルシーンに、おぞましさたっぷりの魔物たち。
さらに原作といいますか、手塚先生リスペクトの台詞回しや表情を時折盛り込みまして、読み手を様々な方向から楽しませてくれるのです!
こうなると楽しみなのは、原作を消化して終わるのかどうか、と言うところ。
原作はどろろの扱いが発表媒体によって変わりまして、ときとしてものすごく重要になったりします。
そっち方面に進んで重いドラマの方向へ進んでいくのか、それともどろろのその設定は使わずに終わるのか、あるいは原作とは全く違う展開にするのか?
そのあたりにも注目したいものです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!