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今回紹介いたしますのはこちら。

「聖女の揺籃、毒女の柩」第1巻 夏海ケイ先生 

スクウェア・エニックスさんのガンガンコミックスJOKERより刊行です。


夏海先生は03年にスクウェア・エニックスさんの漫画賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
代表作は、人気ゲームを漫画化した「うみねこのなく頃に」シリーズ。
本作はそんな「うみねこ」の経験を活かした、サスペンスとなっております!




ジューゴとシローは、新しい生活を始めることになりました。
分け合って兄弟二人だけで生きてきた二人は、二人一緒に生活できる環境を求め探し続けた結果、シスター・コレーと言う女性の管理するよう五円に入ることになりました。
ふたりから見たこれーの姿は、さながら聖女のようで。
美しい声、穏やかな瞳、ほのかに漂ういい香り。
ジューゴはそんな彼女を見て、凄い美人だな、こんな人と一つ屋根の下なんて緊張して寝れないかも、シスターは年の差いくつまで行けますか?とおどけるのです。
そんなお調子者なところがあるジューゴがシローを引っ張っていき、シローは泣き虫で臆病ながら、家事などでジューゴを支える、と言うように二人はお互いを支え合って今まで生きてきました。
コレーはシローをそっと抱き寄せると、こう声をかけてきます。
よしよし、今までよく頑張ったわねシロー君、頑張り屋さんは好きよ、ずっとお母さんがいなかったなら寂しかったでしょう、これからは私に思いきり甘えてくださいね、
言ってごらんなさい、「お母さん」。
……シローはためらいながら、コレーをお母さんと呼びました。
今までため込んできたものが、抑えきれなくなったのでしょう。
その言葉とともに、シローの瞳からは大粒の涙が溢れ出て……

そんなシスター・コレーが管理している養護園は、孤島にあるのだとか。
いろいろ不便そうな気はしますが、世俗の偏見にさらされないためのびのびと暮らせる、とコレーは言います。
さらに子供たちからすれば、「孤島」と言うワードだけでもわくわくを呼ぶもののようで、二人はますます新しい生活への期待を膨らませるのです。
……が。
その期待は裏切られることとなるのです。
行きましょう、新しいおうちへ!
そう言って差し伸べられたコレーの手。
その手を取らなければ……二人は離れ離れには成らず、死よりも濃くて深い地獄を知らないでいられたのかもしれないのですから。

二人はコレーに連れられ、常世島へやって来ました。
ここが養護院、「エリュシオン」のある孤島です。
島には養護院以外の建物や住人はなく、ここに行き来する方法も週一回、近くの島の漁船に来行き来してもらう以外の方法はありません。
ですが建物はまるでリゾートホテルのように美しく、そんな不便を忘れさせるほどの魅力に満ち溢れていました。
そんな中で暮らす仲間たちはと言いますと……何やら庭に大きな穴を掘って、何かを埋める作業をしていました。
年のころは様々な彼らですが、みんなコレーを慕っているのは同じ。
皆、コレーの姿を見ると子供たちはいっせいに駆け寄り、「ごほうび」をねだるのです。
それはしたっているの一言では収まらないような、度を越したもののようにも見えますが……
養護園の仲間たちは、ジューゴたちの姿を見ると
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何やら恐ろしい形相で見つめてきて……?
いや、気のせいだったのでしょうか。
はじめまして、と恐る恐る挨拶をすると、彼らはにこやかに迎え入れてくれたのです。

ですが、やはり不安はぬぐえません。
この養護園の仲間の少女のスカートについていた、真っ赤な汚れ。
それはまるで血のようで……
少女はこれはこの島で栽培しているザクロの果汁だ、と言うのですが……ザクロは今まさに花が盛りを迎えています。
花が咲き誇っているときに実がなるものなのだろうか?
ジューゴの中のもやもやはなかなか晴れることがないのです。

そしてその不安が明確な形になったのは、夕食の時でした。
出てきた了以は目移りするほどおいしそうなものばかりで、ジューゴたちは夢中で口に運ぶのですが……
そんな美味しい料理の中で、シローの皿のトマトがひときれだけ残されていました。
何でもシロー、昔トマトを食べてはいたことがあり、それ以来どうしても食べられないのだとか。
ジューゴはそんなシローのトマトをひょいと取って、じゃあ俺が食ってやるよ、と口に運ぼうとした瞬間、
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コレーがその手ごとトマトをがっしりとつかみ、シローの事をにらみつけるではありませんか!!
そしてぽろぽろと涙を流しながら、シロー君が人の愛をむげにする酷い子だったなんて、と訳の分からないことを言い出すのです!
食べ物は愛、作ってくれた農家さんと、用意してくれた自分たちの二重の愛が込められているのに、口にできないなんてひどい、と。
ジューゴはその異常ともいえるほど大仰に謳い上げるシスターを見て、戸惑いながらも苦手なものを残すぐらいで大げさだ、自分が食べれば無駄にはならないじゃないか、と主張するのですが……
今度はこう言いだしました。
では、私の方がおかしいと言うのですか?
シロー君が愛の結晶を受け取らないことを許すと?
そうすると今度は、養護園の子供たちが次々に声を会経るのです。
シスターはおかしくないです、シスターが正しい。
シスターの愛がわからない奴は、「わるいこ」。
わるいこには、罰が必要だ。
子供たちはジューゴたち二人を取り押さえます。
そして……コレーは、シローに罰を下すのです。
「おなかいっぱいの犬の刑」。
コレーはシローに犬のマスクを被せ……
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愛の結晶ですよ、わんちゃん、お腹いっぱいおあがりなさい、と、四つん這いになってトマトを食べることを強要するのです!!
その表情には一切の慈悲は感じられません。
泣いても叫んでも、吐き出しても……
食べつくすまで、決してコレーは許さないのです。
嫌いなものを、それも手を使わない四つん這いで食べさせる。
自分がどれだけ残酷なことをしているのか、コレーもわからないはずがありません、
苦しむシローに、コレーはこう言いました。

大丈夫、できるまで見ていてあげるから、ね?

あまりの異常な「罰」。
危険なものを感じたジューゴはこの島から逃げることを考え始めます。
何かないかと養護院の周りを調べていたところ……あの、穴掘りをしていた場所へとたどり着きました。
ザクロが実る季節ではないなら、あの赤井汚れはどうやってついたのか?
そんなことを考えながら、その場所に行くと……
ジューゴはとんでもないものを見つけてしまったのです。
無数のアリが集る、
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人間の、指を……



と言うわけで、安息の地かと思われたそこが、恐ろしい闇の巣窟だったと言う幕開けを迎える本作。
この後物語は、どんどんと恐ろしい方向へと進んでいきます。
異常ともいえるしつけを施すコレー。
彼女のその異常さはさらに加速していくことになるのです!
さらに恐ろしいのが、この養護院に住む子供たちがみなコレーの事を異常ともいえるほど慕い、完全にその支配下にある事。
コレーがどれだけ異常なことをしても、彼らはその行為を肯定し、後押しすらしてくるのです!

コレーや子供たちの目を盗み、この島を脱出するために奮闘する。
当然本作もそうなっていき、お約束のように様々な困難が立ちはだかります。
ですがその困難のうちの一つに、よくある脱出ものとは違うとんでもないモノも含まれているのが本作の鍵となりそうです。
この世でただ一人、心から信じ、助け合ってきたはずのジューゴとシロー。
ですがその関係にゆがみができて……?
その他にもコレーが子供たちに与える「ごほうび」や、あの人間の指が誰のものなのか、コレーの異常な愛の元は何なのか、そして子供たちは本当にみんなコレーに忠実なのか、と言った様々な要素が盛りだくさん。
これからそれらの謎がどう絡み合い、どう明かされていくのか?
今後の展開に期待せずにはいられませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!