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今回紹介いたしますのはこちら。

「ほぼほぼほろびまして」第1巻 吉沢緑時先生 

新潮社さんのバンチコミックスより刊行です。


さて、様々な雑誌で脱力ギャグ漫画をメインに活躍されてきた吉沢先生。
そんなギャグ漫画に時折シリアスな展開を混ぜてきたこともある吉沢先生、「NKJK」では完全にシリアスでありながらギャグ漫画でもあると言う新境地を開拓されましたが、本作はいよいよギャグ要素が皆無と言っていい、本気のシリアスな漫画を手掛けられることになりました!!
気になるその内容はと言いますと……?



房総半島のとある港町。
そこの4階建てのビルの屋上に、一組の親子がいました。
その父親は娘のノアにこう問いかけました。
寿商店前の羊さんの数は?
ノアと呼ばれた少女は、その視線を手元の図鑑から離さないまま、「2人そんざいです、パパ様」と答えます。
パパ様と呼ばれた父親はその言葉を聞いたうえで、双眼鏡で寿商店前を確認して、正解と答えます。
寿商店の前には、二体の……
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顔の大きな、異形の人型の生物がいました。
ちょうど交代の時間で、栄養補給らしき行為。
二体の生物がしている接吻のような行動を、パパ様はそう説明するのでした。
と、その時に近くの空いている民家の玄関に、昔はやった歌、「つくね三兄弟」のCDがあるのを見つけるパパ様。
パパ様は、行よノア、と声をかけてビルの屋上からその民家に向かおうとします。
どうやらそのCDを取りに行こうとしているようです。
ひ、ひつようですか?
ノアでなくともそう聞きたくなる、どうと言う事もないCD。
ですがパパ様は必要だよ、と断言するのです。
無理やりでも、一瞬でも、日常を取り戻す努力は……と。


2022年5月4日、16時58分。
左腕の先を失っている男性は、せき込みながら近くに立つ例と言う人物に声をかけていました。
玲、鬼沢さん戻ってもキレんなよ?ずっと頑張ってきた仲間だし。
そんな声が掛けられても、その人物、玲は突っぱねるように言うのです。
殴る。使えなきゃ仲間じゃない、と。
男はそんな冷たい言葉を言ったばかりの玲に、俺を置いてここを出ろ、この辺のモノは俺らと奴らで撮りつくしたからもう漁港に行くしかない、漁港が危険って情報がガセなら刺身が待ってる、ともうここでの生活が限界だから自分を捨てて行けと言う言葉を投げかけました。
ですが玲も実際は仲間意識があるのでしょうか、ガセじゃなきゃ刺身にされる、行くとしても未知のところに一人で行くのは自殺行為だ、早く治せ、とぶっきらぼうながら暖かい言葉で返すのでした。
と、その時、玄関をノックする音が聞こえます。
どうやら鬼沢さんが帰ってきた様子。
中に入れてやった後、鍵かけとけ、一人で外は危険だ、ととりあえずはその怒りを抑えた言葉で迎え入れるのですが……直後、気が付くのです。
鬼沢の右腕からおびただしい血が滴っていることに。
わたしじゃ、心中、無理、皆で神……
そこで鬼沢の言葉は途切れます。
鬼沢の背後に立っていた「奴ら」によって、
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頭をたたきつぶされてしまったのです!!
目の前で起きた突然の惨劇。
玲はバランスを崩し、その勢いのままガラス戸ごと倒れてベランダに身を投げ出してしまいます。
そこに、奴らが鬼沢の血で濡れた鉈をもって追いかけてきて……
めぇぇ。
奴らの泣き声が礼を追い詰めます。
逃げるにはベランダから飛び降りるほかないでしょう。
飛び降りても死にはしない高さですが……下には奴らが一匹車にもたれかかって座っていますし、なにより片手を失った男がまだ部屋の中にいるのです。
迷う玲。
助け……と、その失った腕を伸ばして助けを求める男。
直後、奴らの鉈が振り下ろされ……
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玲は、ベランダを飛び降りたのです!!
落下したのは車の上!!
地面に落ちるよりはずっとダメージが低いと判断したようで、実際落下直後から何とか例は動きを取ることができました。
ふらつきながらも手近なコンクリートブロックを手にして、車にもたれかかっていた奴らの頭をたたきつぶし……
そして、その場に止めてあった自転車を見つめてつぶやくのです。
漁港、と。

その漁港の街には、あの親子がいます。
大きなポリバケツをリュックのように背負ったパパ様と、おそろいのバールを持ったのあ。
二人は「つくね三兄弟」を目指して歩き始めます。
その道中に、アリの群れを見つけました。
それは一時期大きな騒ぎになった、ヒアリの群れ。
それを見て、パパ様は言うのです。
定着してたか、ヒアリ。
このハチ目アリ科や、ネズミ目デバネズミ科同様
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どこかに女王がいるのかもね……
羊さんたちにも。



と言うわけで、いわゆるゾンビもののテンプレートを踏襲しながら、本作ならではの要素を取り入れている本作。
「羊さんたち」とパパ様が読んでいる彼らが、人間だったものの成れの果てであることは間違いないようです。
ですが今のところ羊さんたちがどうやって現れて、どうやってああなるのかと言ったところはあかされておりません。
ゾンビのように増殖して人間を襲うことはわかるのですが、噛みつかれるなどの体液の侵入で即アウトと言うわけでもなさそうですし、コンビを組んだり仲間を呼んだりと言うゾンビとは違った明確な社会性を持っているのも大きな違い。
この後お話の中で、羊さんたちには何パターンか種類があることや、その種類ごとの特徴などが明かされるのですが、その中でそのほとんどには人間離れした力がないと言う事もわかります。
謎ばかりが増えて行くこの羊さんたちに支配された世界の中で、息をひそめて暮らしている者たち。
その中の、玲とパパ様達が主役となって物語は始まるのです!!

ギャグ漫画家と言っていい吉沢先生ですが、本作は本格的にギャグ要素をカット。
謎深まるストーリーにショッキングな描写が連続、その中で希望となるかもしれない場所の明示、さらに怪しげなキャラクターが登場するなど、先生が本気で新たなジャンルに挑んでいることがビシビシと伝わってまいります!!
読み応え抜群のゾンビ系ホラーサバイバル、今後の展開が楽しみでなりませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!