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今回紹介いたしますのはこちら。

「銀 シロガネ」第1巻 水上あきら先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


水上先生はなんと本作がデビュー作となると言う新人の漫画家さんです。
ですが新人さんと言ってもその絵柄は相当完成されておりまして。
ところどころに何となくのりつけ雅治先生に近いものを感じるのですが、アシスタントなどされていたのでしょうか……?

そんな水上先生の初連載にして初単行本化作品となった本作。
本作は最近増えてきた気がする相撲を取り上げた作品なのですが、一味も二味も違う味付けのされている作品でして……?




熱のこもった稽古が行われている相撲部屋。
今日はこの部屋に、ある相撲取りが出げいこに来る予定があります。
相撲取りは何でも、入門以来負け知らずで、千の技を持っているのだとか。
ですがそんなものはあくまでうわさに過ぎない、化けの皮を剥いでやろう、と部屋の者たちは色めき立っておりました。
そしてそんな部屋に能われたのが……斎京部屋からやって来たと言う男、銀(しろがね)でした。
切れ長の瞳に鼻筋の通った顔立ち、身長は190センチ超、体重は150から60と言ったところでしょうか。
見るからに「できる」雰囲気を纏ったその男……
準備運動はいらない、といきなり浴衣を脱ぎ、廻し姿になりました!!
既に準備は万端と言う事なのでしょうか。
ですが彼の体はどう見ても冷え切っていて……?
本当に準備運動なしで大丈夫なのか。
そんな周囲の不安をよそに、銀はこんなことを言うのです。
最後には全員が、私にひれ伏すことになるでしょう。
その自信満々の言葉にダメを押すかのように、構えをとった後、目をつぶるではありませんか!
見ずとも身体が覚えている、とでも言うかのように……
こいつはいったいどれほどのけいこを積んできたのか。
対戦相手は生唾を飲み込みながら、立ち合い思い切りぶちかますのですが……
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そのぶちかましは銀の顔面を直撃!!
鼻血を噴いてぶっ倒れてしまうのです!!
しかも銀、足がつった、と悶絶。
ちょっともう今日は稽古できないかも、と早くも音を上げてしまうのでした!

しかし何なのでしょう、噂が独り歩きしたにしても行きすぎではないでしょうか。
稽古を終えた部屋の面々は、銀の情けない姿を肴にして飯を食おうとする始末。
場の空気もお腹の好き具合も最高潮に達したところで、ようやく今日のちゃんこが食卓に並びました。
……が。
そのちゃんこを持ってきたのは、銀ではありませんか!!
まだいたのか、と唖然とする部屋の男達。
ですが銀は、こう言うのです。
先ほどの私が全てだと思いますか?
笑止千万、あなた達はまだ私の何も見ていない!
稽古は終わりましたが、本番はこれから!
わたしの真髄を解くとご賞味あれ!!
何を言っているのかよくわかりませんが、とにかくそのちゃんこを食べない理由もないわけで。
早速食べてみると……口に運んだ男が突如として叫び声をあげ、悶絶するではありませんか!!
まさか稽古の腹いせにちゃんこに独でも持ったのか!?
騒然とする部屋ですが……すぐにそうではないことがわかります。
美味い!!
悶絶していた男が、目をキラキラと輝かせながら銀のちゃんこを絶賛し始めたのです!!
一見何の変哲もない塩ちゃんこ、だと言うのに胎内の全細胞が生まれ変わるかのような衝撃を受けた……
そう言って、男は一心不乱に鍋を書き込んでいくのです!!
これこそが銀の持つ数多の技の中の一つ……
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「胃掴み」!!
相手を内側から掌握する、魔性の秘技です!!
さらに銀の技は続きます。
うますぎるがゆえにすぐなくなってしまったそのちゃんこ、お代わりをくれとみんなが懇願するのですが、銀は今日はその一敗しかない、と言いだしまして。
絶望に打ちひしがれる男達……
幸せの絶頂から一気に絶望の淵まで突き落とす……この感情を自在に操る技は、「お預け」!!
そして今度は、嘘です、と実際は作ってあったお代わりのちゃんこを出す「手の平返し」を繰り出しますと、部屋は天と地がひっくり返るほどの熱狂に包まれるのでした!!

お預けで焦らされた分、手の平返しで食べたい欲求が爆発する。
このコンボを食らって銀の虜にならないものはいない……
まさに神の如き業前。
あの稽古すら、この部屋の者たちのカラダ、汗、体臭などをチェックすることで最も欲している味や栄養素を見切るためのものだったのではないか、と言う予感まで漂わせるのです!
あなたはどなたなんですか、と思わず尋ねるものの、銀は涼しい顔で、ただのちゃんこ版ですと言うにとどまり……

気が付けば部屋の男たちは軒並みお腹いっぱいになって床に転がっておりました。
……そう、銀の前に皆、伏していて……!!
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決まり手、「食い倒れ」。
入門以来負け知らず、千の技を持つ男。
その噂はどうやら嘘偽りのないものだったようです。
あまりにも、あまりにもうますぎる銀のちゃんこ……
そのちゃんこはこんな予感を、いや、確信を抱かせるのです。
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相撲界は、銀を中心に回りだす……!!



と言うわけで、まさかのちゃんこ版を主人公とした物語となっている本作。
この後も様々な場所で、様々な相手に、銀はちゃんこをふるまっていくことになります。
そしてそこで巻き起こるトラブルを、余すことなくちゃんこの力で解決していくのです!!
相撲鳥が主役の漫画で貼りますが、相撲シーンはほぼなし!!
ツッコミどころ満載ながら、謎の説得力と魅力を持つ銀のちゃんこをぜひ皆様もご賞味ください!!

そして本作、ビッグコミック系の雑誌でよく行われている、単行本一冊分連載を行い、その売れ行きなどを見て続くかどうかを決める「ルートNEO」企画の作品となっている為、この第1巻で一応完結してもいい感じのクライマックスを迎えます。
本作の悪乗り部分を最大限に強めたようなその最終回用のお話もかなり読者の度肝を抜いてくれるのですが、なんと本作は第1巻発売を待たずしてすでに連載を再開しております!!
本作の不可思議な魅力は、この偉業(?)も証明しているのではないでしょうか……!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!