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今回紹介いたしますのはこちら。

「私以外人類全員百合」第1巻 晴瀬ひろき先生 

KADOKAWAさんの角川コミックス・エースより刊行です。



晴瀬先生は05年にwebコミック誌の漫画賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
デビュー後は原作付き作品やオリジナル作品の読み切りや連載を様々な雑誌で発表。
デビューから現在に至るまで、活躍を続けていらっしゃいます。

そんな晴瀬先生の最新作となる本作は、そのタイトル通りの作品となっています。
私以外人類全員百合、そのタイトル通りの作品と言う事は……?



潤野茉莉花は、「ふつう」を貴ぶ少女です。
ですがその日から、彼女の愛していた「ふつう」は、「ふつう」ではなくなってしまいました。
目の前で行われている、
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女の子同士のキス。
その二人は藤堂と萩野という茉莉花の友達なのですが、少なくとも昨日まではこう言うことをするような関係ではないはずでした。
一体何事なのかと茉莉花が二人に問いかけてみても、何ってちゅーだけど、と当たり前のように答えるのです。
キミらそう言う関係だったの?女子同士で……
恐る恐るストレートに尋ねてみると、彼女たちはケロッとした顔でこんなことを言うのです。
女同士でって、当たり前のことじゃない。
そういや昔は男ってのがいたんだよね、なんか歴史で習ったね。

異変が起きたのは藤堂と萩野の二人だけではありません。
その違和感は徐々に大きくなっていきますが、それがはっきりとはわからないまま学校にたどり着いた茉莉花。
クラスメイトと朝の挨拶などを交わしているうち……その違和感の正体が完全につかめてしまいました。
男子がいない。
驚愕のはずのこの学校に、男子の姿がない……?
耳を澄ましてクラスメイトの女子たちの話を聞いていると、女子同士で今度のデートはどこに行くかと話していたり、女子が女性のグラビアの載った本をにやにやしながら見ていたりと、やはりどう考えても「そもそも男子の存在自体がない」としか思えない状況が拡がっていて……
普通、じゃない!
あまりの出来事にショックを受けた茉莉花は、いったん保健室に避難することにしたのでした。

一人ベッドに寝そべって携帯電話でニュースなんかを見ていても、その不安が加速するニュースしか記されておりません。
私の知ってる世界じゃない、私の頭がおかしくなったと言うのか、夢なら覚めて!!
そんなことを言いながら、頭をがんがんと机に打ち付けて正気に(?)戻ろうとする茉莉花なのですが、当然そんなことをしても元の世界に戻れるわけでもなく。
その上、隣のベッドで寝ていたらしい女子に、静かにしてくれませんかと注意されてしまいました。
彼女は学年一の秀才の呼び声高い美少女、香散見りり。
りりは茉莉花に、世界がどうのとか何を言っているのか、まあどうでもいい、うるさくて読書もできない、と言い残してさっさと保健室を去ってしまうのでした。

その後の歴史の授業なんかも踏まえ、茉莉花は確信します。
最初は自分の頭がおかしくなったのかと思ったが、そうではないことに。
この世界は100年ほど前に謎のウィルスによって男性が生まれなくなり、ついには1920年ごろに男性がいなくなってしまったらしいのです。
さらに友人や知人、芸能人や政治家、スポーツ選手まで、男性はもともと存在しないか、あるいは茉莉花の知っている人物によく似那女性にとってかわられている……
何でこうなったのか分からない、でも、そうとしか考えられない。
ここは……
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女性しかいない世界なんだ。
どうしていいかわからない茉莉花でしたが、その後街中でたまたま、りりがチンピラ(女性)に絡まれている場面に出くわします。
最初は拘わらない方がいいと思っていた茉莉花ですが、やはり見殺しにするわけにもいきません。
強引に間に割って入り、りりの手を引いてダッシュで逃げ出す茉莉花!
何とか無事に逃げ出すことができまして、りりもお礼を言ってその場を離れようとするのです。
が、そこで茉莉花はリリの持っている本のタイトルが引っかかった様子。
「量子物理学」「並行世界」。
そんな言葉が躍る本を読んでいると言う事は、自分の置かれている立場も理解してくれるかも……!

茉莉花はりりをカフェに連れ込み、事情を説明。
相談にのってくれないか、とお願いするのですが、そこでりりはこう答えるのです。
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頭おかしい?
男性がいる世界から来た?信じられませんね。
あなたの頭がおかしいってのが一番蓋然性が高いかと。
並行正解の存在はあくまで理論上の話し、世界を行ったり来たりはフィクションのお話です。
まさに取り付く島のないと言った風情のりりですが、茉莉花には一つだけ元板世界の証明になるアイテムを持っていました。
それは、歴史の教科書です!
これだけは茉莉花の世界のもので、中に書かれている歴史も茉莉花の世界の内容で……
りりも流石に、茉莉花がちょっと嘘をつくためだけに作ったにしてはよく出来過ぎている、と少し信じる気になってくれたようで。
それでも、そんなことあるわけない、とその時はあしらわれたのですが……

その後も何とか相談にのってもらおうと、彼女に粘り強くアプローチする茉莉花。
その根気に負けたのか、それとも何かほかに理由があったのか……
気が変わりました、信じた気になってあげてもいいです、と急にりりが態度を変えたのです!
あの教科書の存在、そして自分の手を引いて助けてくれたこと。
それはりりの心を動かしていまして、彼女にこう言わしめたのです。
本当だと証明されたわけじゃありません、でも嘘だと証明されたわけでもない。
だから、助けてくれたお礼として、信じた気になって協力してあげます。
誰も頼ることのできない状況で、秀才のりりが手助けしてくれると言うのは本当にありがたいもの!!
ありがとう、と満面の笑顔で応じようとする茉莉花なのですが、りりは最後にこう付け足すのです。
ただし、その代わり
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私と付き合って。



と言うわけで、突如として男性のいない、自分以外はみな同棲の女性を恋愛対象として見る世界に迷い込んでしまった茉莉花。
この世界は女性しか存在せず、男性は滅びてしまっているようです。
茉莉花はなぜこの世界に迷い込んでいしまったのでしょうか。
そして、100年ほど前に男性を滅ぼすことになったウィルスとは何なのか?
そんな謎に、茉莉花はりりとともに迫っていくことになるのです!

こう言ったパラレルワールド物、本作のような軽めのノリのお話だとそう言った世界の謎なんかは割とあっさり目に描かれてしまうことが多いような気がします。
ですが本作はそのあたりをガッツリ掘り下げていくようで、世界の謎、そして茉莉花がなぜこの世界に来たのか、と言う謎をしっかり掘り下げ、そこから茉莉花が元の世界に帰るための手段を探すのです!
さらにそこに加えて、りりと茉莉花の恋愛要素も加わります。
ふつうを愛する茉莉花が、りりに対して恋愛感情を抱くことは、今のところ、ありません。
ですが逆にりりの方はと言うと、女性にこいするのがふつうなわけで……
深まる世界と茉莉花の謎に加え、切ない恋心が絡み合う本作。
晴瀬先生によれば、まずタイトルが思い浮かんでそこから話を作っていったと言う本作ですが、その勢いでラストまでお話ができているのだとか。
と言う事は、最後までしっかりと考え抜かれた謎の真相や、二人の恋心の決着がおそらくばっちり描かれると言う事!
謎と恋、どちらも見逃せません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!