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今回紹介いたしますのはこちら。

「白異本 弐」 原作・外薗昌也先生 作画・高港基資先生 

日本文芸社さんのニチブン・コミックスより刊行です。


さて、外薗先生と高港先生というホラー漫画界のビッグネーム2名のタッグによる作品である本作。
前作「白異本」は、恐怖譚に憑りつかれた作家、外園が普通ではありえない死を迎え、完結したかに見えました。
ですが本作は、その続きから物語が始まるようで……?



死の直前、体重250キロを超えるほどの巨体になっていた外園。
ところが死後の計量では、彼の体重は66キロにまで減っていました。
まるで、死の直前、彼の中から巨大な何かが抜け出した、かのように……

そんな外園がほうぼう手を尽くし、集めた怪異をまとめたノート。
それは今、外園の担当編集の手にわたっていました。
担当は、外園を悼むためなのか、ノートを手に取り……
集められた怪異を読み始めるのでした。


埼玉県のとある団地でのことです。
電気関係の会社に勤めるAは、その団地に漏電の検査にやってきていました。
ですが団地と言うのは多くの人が住んでいました、その多くの人の中には協力的ではない人も少なからず存在します。
その日もきちんと自治体を通じてその日に検査があると言う事は住民に伝えてあるのですが、Aの姿を見るなり「うるせぇ」とにらみつけ、ドアを閉めてしまうような人物もいまして。
なかなか仕事はままならないのでした。

止む無く次の家のインターフォンを鳴らすA。
すみません、漏電の検査なんですが、と声をかけますと、中からあいてますからどうぞ、と言う女性の声が帰ってきました。
ここはマトモだ、と内心胸をなでおろし、Aは室内へと入っていきました。
すると、玄関から続いている廊下に、一人の女性が壁にもたれかかったまま待ち構えているかのように立っているのです。
女性は、3分ほどで終わりますと言うAに、お願いします、とほほ笑む女性。
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なかなかの美人さんで、おまけに胸元が大胆に開いた服を着ておりまして、Aは少しばかり緊張してしまっている様子。
それでも手早く漏電の検査を終えまして、異常なしと報告するA。
書類にハンコをもらって帰ろうとしたのですが……
その瞬間、突然吹き切りの警報器のような音が大きく鳴り響きました。
近くに踏切があるんですかね?と尋ねるAなのですが、女性は小さく笑い、その質問には答えずにこんなことを言うのです。
電車に飛び込めば一瞬で即死すると思うでしょ?でもそんなことないの。
それどころか時間が止まったみたいに痛みが続くのよ。
それまでの人生が走馬灯みたいに蘇るなんてのんきなもんじゃないの。
巨大な鉄の塊が迫って来る時の風圧、金属の表面に触れた瞬間の冷たさ、想像したこともなかった激痛、口の中一杯に拡がる鉄の味、車両の下に巻き込まれ、めちゃくちゃに転がりながら手足が潰れ、引きちぎれていく感覚。
その間ずっと、「停めて、電車停めて」って思ってるの。
長い長い間、電車と線路の間を引きずり回されやっと停車……
人が周囲に集まってくる足音を聞いた時、やっと意識がなくなるの。
……この女性は何を言っているのでしょうか。
恐ろしいと言うか、君の悪いと言うか……
Aは辛うじて愛想笑いを浮かべ、怖いですね、ととってつけたような感想を言うと、印鑑もらえます?とさっさと終わらせるための言葉を続けます。
はいはい、ちょっと待ってね。
そう言うと女性は、寄りかかっていた壁から離れ、Aに背中を向けるのですが……
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その背中は、痛々しい傷だらけではありませんか!!
さらに歩き方もひょこひょこと普通ではない歩き方をしていて……まさか今の話は、彼女の体験談なのか!?とAは一気にうすら寒くなってしまうのです!!
と、その瞬間に奥の部屋から何かが倒れるような音と、彼女の物らしき悲鳴が聞こえてきました。
慌てて大丈夫ですかと駆けつけますと……
薄暗い部屋には、義手と義足が落ちています。
それとともに……
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うふふ、転んじゃったぁ、と……生きている人間とは思えない邪悪な笑みを浮かべて転がる、四肢の無い先ほどの女性がいたのです!!
慌てて逃げ出したA。
その後調べてみたものの、あの団地の近くに踏切も線路もないことがわかりました。
ではあの音は、あの女性は一体何だったのでしょう。
自殺に失敗した不幸な女性なのか?
いや、あの表情はとても生きている人間の物とは思えません。
それよりなにより……あれ以来、夜寝ているときに……来るのです。
彼の部屋の窓を這って、
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あの女性が……!!


ひとしきり読み終えた後、担当はノートを閉じました。
これが実話?
これ全部この調子なのか?
数十冊はあろうかと言う、外園の怪異調査ノート。
担当は恐怖しながらも、そのノートを読む手を止めることができないのです。
……そしてその得体のしれない興味とともに、彼の体には耐え難い「痒み」が襲い掛かっていて……




と言うわけで、再始動した恐怖短編集。
今巻も基本的には一話完結型のお話が7話収録されています。
外薗先生の書く情け容赦のない恐ろしく惨い物語を、高港先生の確かな画力でより恐ろしく、よりおぞましく描いていく……
今回も納得のクオリティとなっております!!

紹介したお話を皮切りに、工事現場に存在する奇妙な存在を描く「工事現場」、なぜか生きているかのように綺麗な水死体を巡る異様な物語「水死体」、少年が拾った水かきのある手を巡って起こる怪「河童の手」、お盆には海に入ってはいけないという叔父の言葉の真実を知る「盆の海」、そして前後編で描かれる老人の霊が招く恐怖「二年越し怪談」……
そのドラマや結末は様々ながら、間違いなくどれも恐ろしく、生理的嫌悪感や得体のしれない不安を掻きたてられる怪奇な存在が姿を現す、夏にぴったりの一冊になっているのです!!

さらに外園のノートを担当が読むと言う構成になっている本作ですが、その担当も外園のように怪異に憑りつかれていくこととなります。
彼の体を襲う痒みは次第に増していき、そして……
彼もまた外園のように、悲惨な末路を迎えてしまうのでしょうか……?
今巻も「白異本」のように一冊で完結、単行本の売れ行きなんかを総合的に見て続巻を出すかどうか考えるタイプ……かと思いきや、既にこの単行本以降にも数話連載が行われています。
恐ろしい話の数々だけでなく、担当の行く末も、今後に託されることになるのか。
とにかくおそらく発行されるであろう「白異本 参」も楽しみでなりませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう