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今回紹介いたしますのはこちら。

「可愛そうにね、元気くん」第1巻 古宮海先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックスより刊行です。


古宮先生は15年にヤングジャンプの新人賞を受賞してデビューした新人の漫画家さんです。
その後スガワラエスコ先生のアシスタントなどをされながら、読み切りを数本発表。
19年に本作にて連載デビュー、そして初の単行本刊行となりました。

そんな古宮先生の描く本作、分類するならばラブコメとなるでしょうか。
確かに男女の恋模様を描く作品ではあるのですが、かなり変わった設定が盛り込まれた作品となっていて……?



保健室にやって来た八千緑七子。
体育の授業中にアクシデントで鼻血を出してしまいまして、保健委員の廣田元気に連れられて保健室にやって来たのです。
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派手に鼻血が出て、口の中や体操服まで赤く染めてしまった八千緑を、元気は何ともいえない表情で見つめているのですが……
見た目ほどひどいけがではなかったようで、ただの鼻血だからそんなに心配しなくていいよ、と保健の先生は太鼓判。
元気はそれを聞いて教室に戻るのです。

次の授業が始まってしばらくたつと、八千緑は教室に戻ってきました。
事情を知らないその科目の先生は、遅刻は何度目だ、前回あれだけ言ったのにどうしてお前はそうなんだ、と怒り始めます。
こんなことからも何となくわかるように、八千緑は「どんくさい」ことでも有名な女子。
あんなどんくさい八千緑を毎回保健室まで連れて行って偉いな、実は好きだったりする?と友人の大田は元気をからかうのですが……
今までずっと保健委員だし、ちゃんとやらないといけないっていうか、体育さぼれるし……八千緑はねーよ、と元気は返すのです。
と、そのとき、クラスのアイドルの呼び声も高い優しく成績優秀な美少女、鷺沢守が声をあげました。
私がボールをぶつけちゃって保健室に行っていたから遅れてしまったんだ、だから遅刻にはしないで上げてください、と言う守。
彼女は教師にも信頼が厚いようで、そう言うなら仕方ないな、と八千緑の遅刻は帳消しになったのでした。

そんな日の夕方。
自宅に帰った元気は、一心不乱に机に向かっていました。
勉強をしているわけではありません。
彼が描いているのは、同人誌用の漫画です。
それも……なんと、女の子がただひたすら痛めつけられるだけ、と言う特定の嗜好を持った狭い狭い層に向けての!!
さらに驚くべきことに、その漫画の主人公……といいますか、痛めつけられる対象のヒロインのビジュアルは、八千緑そのものなのです!!

元気が自分の性癖を自覚したのは、子供のころ、姉と一緒に見ていた女児向けアニメでした。
キラキラした女の子がピンチに追い込まれて、容赦なく敵に打ちのめされる。
そんなシーンを見て、作ることのできる笑顔より、偽ることのできない苦悶の表情に興奮を追吠えることに気がついてしまったのです。
女の子はかわいそうであればあるほどカワイイ。
そう言う点で、八千緑さんは完璧だ。
鼻血を出して戸惑ってるの、可愛かった。
赤い血が白い歯に透けてエロかった。
痛くて涙目になってるの可愛すぎる。
もっと見たい、もっと。
泣いて、苦しんで、怯えて、逃げて、痛がって、絶望して、可愛そうであればあるほど、可愛くって、可哀想で、
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「可愛そう」なんだ。
そんなことを考えながら漫画を描いているうちに、元気は眠りに落ちてしまいました。
この漫画は、今日中に完成させないと締め切りに間に合いません。
ですが、あと少しだけ、仕上げが残ってしまっている状態で眠ってしまって……
止む無く元気は、その仕上げを学校でやろう、と密かに原稿をもって登校します。
人目を忍んで作業をしようとしているときに限って邪魔と言うのは入るもので、場所を探してきょろきょろしているところをよりによって守に見つかってしまったり。
幸い彼女は何も気が付かなかったのか、汗凄いよ、と元気の汗を拭いてくれて、そのまま部活に向かってくれました。

なんとか人目を忍んで、昼休みに人気のない地学準備室に入って原稿を仕上げにかかる元気。
終った!と言うところでチャイムが鳴ってしまい、慌てて原稿を鞄に突っ込んで教室に戻ります。
一枚、その原稿が机の棚の中に残っていることに気が付かずに……!!

元気がその事に気が付いたのは、郵便局で原稿を検めている時でした。
あそこに忘れたに違いない、と思い立った元気、すぐに地学準備室に飛んで帰ります。
普通ならばあんなところ、誰も来ないでしょう。
ですが先ほど、あの八千緑さんが、先生に地学準備室への片づけ物を頼まれていたシーンを見かけていて……!!
大丈夫、八千緑さんは足遅いし、原稿があるとしても机の中だろう、見ないって、大丈夫。
祈るようにそんなことを考えながら、地学準備室に飛び込むと、そこには……
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その机の前に立ち尽くしている、八千緑さんがいたのです……!!

見られてしまったのか!?
様々な嫌な考えが頭をよぎり、何も声をかけられなくなってしまう元気。
見られたとしてもペンネームしか書いていないから自分が描いたとはわからないはず……
何で何も言わないんだ?見たんだろ、見てないのか?
俺のこと気付いてるのか、何か言ってくれよ!!
真っ青な顔をあげると、すぐそこに八千緑の顔がありました。
その血傘に驚いて後ずさりしてしまう元気ですが、八千緑は、ごめんなさい、息を切らしていて苦しそうだったから、具合悪いのかなって思って、とつぶやきます。
この反応は……見られてない、バレてない!
そう判断して落ち着きを取り戻した元気は、ここの掃除当番を頼まれてたのを忘れてて走ってきたんだ、と出まかせを並べてごまかしました。
そしてそのまま、八千緑さんそんなに謝らなくていいと思うよ、今は何も悪い子としてないし、保健室行くときとかも謝んなくていいし……仕事だし!と、続けます。
せっかく二人きりになれたんだから何かしゃべらなくちゃいけない、と思ってとっさに行った言葉でしたが、あまり気のきいたセリフではなかったか、と後悔する元気。
ところが八千緑は、
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ありがと、そんな風に言ってもらったの、初めて。
そう言って、恥ずかしそうに頬を染めて……!!

もしかしたら脈あるのかなこれ!?
元気はそんなことを考えて、一人小躍り。
自分が彼女を痛めつける妄想をして興奮している変態で、そんな自分に恋をする資格なんてない、と自分で思っていたことも忘れるほど嬉しかったのでしょう。
ですが、元気は知らなかったのです。
地学準備室から帰っていく八千緑。
彼女の口元に、元気にかけられた言葉のおかげだけではなさそうな……笑みが湛えられていたことに……!



と言うわけで、好きな女子が痛めつけられるシチュエーションに興奮を覚える元気と、そんな彼が密かに思いを寄せる八千緑を中心に物語が進んでいく本作。
八千緑が可哀想な目に会うたびにそんな彼女を可愛いと思ってしまう元気は、そんな自分を変えな帰ればならないと思いながらも、なかなか実行に移せない毎日を過ごしていきます。
そんな二人の物語がじっくりと進んでいく……かと思いきや、そこに大きな波紋を立てるのが、まさかの守!
守の思いもよらない行動によって、物語は予想外な展開を見せることとなってしまうのです!!

元気と八千緑、そして守。
元気の歪んだ、それでもまっすぐな思いが実る時は来るのか。
守がそこに介入してくる理由は何なのか。
そして、八千緑にも何やら秘められた秘密が……?
それぞれ違った魅力を持ち、そしてそれぞれ違った秘密を持っているヒロイン達。
古宮先生のこだわりが感じられる描き込まれた絵柄で、そんな彼女達の魅力が一層増加しております!
様々な思いの錯綜する、秘密のラブストーリー。
その着地点はどこなのか?
これから先も目の離せない展開となりそうです!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!