ks0
今回紹介いたしますのはこちら。

「孔雀王~戦国転生~」第5巻 荻野真先生
 
リイド社さんのSPコミックスより刊行です。


さて、いよいよその動きを本格化させ始めた悪徳太子。
孔雀はその怪しげな動きを阻止し、阿修羅とともに元の世界に変えることができるのでしょうか……?



悪徳太子の策略は続々とその実を結びます。
信長は「神」として覚醒し、大勢の部下ならぬ信徒を率いて安土城を健城、その勢力を拡大。
そして裏では明智光秀をそそのかし、裏切るよう差し向けていました。
一体悪徳太子は何をしようとしてこんな行動に出たのでしょうか。
悪徳太子は、イエズス会の宣教師・オルガンティーのにその目的を明かしていました。
イエズス会の信者たちの目的とは何か。
それは、イエス・キリストと同じ、死と再生を修行によって追体験することです。
死に際して聞かれた神の心理の声を聞き、髪の住まう天国の家に招かれるために。
悪徳太子はこう言いました。
神の声をこの国の仏教では「本当の仏の応え」と言う、だからあの寺は「本応寺」と名付けられた。
平安京はヘブライ語でエルサレムを意味し、イエスが人々に福音を伝えたガラリア(竪琴)湖は、琵琶湖と意味が重なる。
そしてイエズス会が作られた1543年は、日本で織田信長が生まれた年……!
イエスの死後、1500年かけてようやく願いが叶った。
ks1
この極東の地で、イエスの死を再現させるために!!
悪徳太子は、信長こそが第2のイエスだと言うのです。
では、悪徳太子自身は何者なのでしょうか。
彼は「聖人」が貫かれる様を目撃し、自らは髪を打った裏切者として国を追われた男……ユダ!!
悪徳太子はイエスを装ったユダその人なのです!!
そして阿修羅を名乗る女も、その中に住まう魂は阿修羅のそれではなく。
二人の目的は、ユダがイエスの血を手に入れて更なる力を入手すること、そして阿修羅の肉体を使っている者は、イエスの肉を手に入れて自らの体とすることだったのです!
イエスが処刑されたその時、槍をつきたてたローマ兵は、自らの罪の重さに気が付き、皇帝に背いて斬首されました。
となると、この世界で信長を手にかけることになるあの男も、そうなるのか。
もしかすると槍の呪いに憑りつかれて自ら地獄に落ちるかもしれない。
仮に真実に気がついて救いを求めても、救いの神は二度とアイツの前には現れない。
ユダと阿修羅はそんなことを、ほくそ笑みながら話すのでした。

孔雀は青海とともに、信長のいる京を目指していました。
その懐には、「魂箱」なる箱がぶら下げられています。
箱の中には、あの有名な興福寺の阿修羅像の中にこめられていた魂を抜き取ったものが入れられています。
その魂と言うのはもちろん、あの人物の魂なわけですが……
やはり悪徳太子は、そう簡単に孔雀たちのしたいことをさせてくれないようです。
二人の前に立ちはだかるのは、徳川家康の家臣たち。
彼らは家康と同じように、吸血鬼へと身を落としています。
孔雀は魂箱を青海に託し、戦闘態勢へ!
すかさず大日如来の印を結び、吸血鬼たちを浄化するのですが……その吸血鬼たちは陽動でした。
密かに忍び寄っていた家康が、青海を拘束!!
ks2
のど元に刃物を突き付け、京に行くな、さもなくば青海を殺して魂箱を破壊する、と脅すのです!!
流石の孔雀もこの状況には焦る……と思いきや、冷静なまま、誰にそれを頼まれたかと家康に尋ねました。
家康は、悪徳太子ではなく、阿修羅の体を使っているあの人物だと答えました。
家康が今川義元の下僕のような扱いを受けていた頃、前線に出されて死にかけたことがあった。
その時家康日を飲ませて助けてくれたのが、巫女姿の阿修羅だった。
「わたしの血を飲めばお前はしばらくの間不死となり、どんなに傷ついても必ず生き残れよう、その代わり私の仲間になり、頼みを聞いてね。」
そうして家康は巫女姿の阿修羅の名前すら知らないまま、不死の存在ならば神に近い存在なのだろうと考え、彼女の部下同然に働いていたのです。
ですが孔雀は言うのです。
本物の神ならば、イエスのように本の姿で復活できる。
だが悪魔は他社の若く新鮮な血肉を奪わねば、時とともにその肉体は腐り果てる。
お前の部下たちも言うレは腐った死体となって動けなくなるが、だからと言って他人の血を飲めばその魂は未来永劫地獄から出られる呪われた悪魔となる……
呪われた道に踏み込んでしまっていたことを知り、絶句する家康。
ですが孔雀は、まだ家康たちには人間の錠が残っているから安心しろ、と言います。
そして、いっしょに京に行って、自分と巫女姿の阿修羅とどっちを信じるか自分で決めろ、と決断を促したのです!!

ですがもうすべてが手遅れでした。
京では、明智光秀が信長を討つための槍を渡されていました。
それはイエスを殺したあの、「ロンギヌスの槍」。
その槍を手にした光秀は本応寺を大軍で取り囲んで火を放ち、一気に襲撃を開始!!
そして……
ks3
光秀は、信長をロンギヌスの槍で刺し貫いたのです!!
孔雀はまだ強に突いてはいないながら、その気配を感じ取ったようです。
突然足を止めた孔雀に、どうしたのかと尋ねる家康たち。
孔雀は、もう手遅れだ、信長は死んだよ、と冷静に語るのです。
仰天する家康たちに、孔雀はさらに言いました。
これはもう最初から決まっていたことで、いくらおれでも歴史は変えられない。
ks4
……だが、過去は変わらぬが未来は変えられる。
おれはそのためにこの戦国時代に転生したんだ!!



と言うわけで、一気にクライマックスへと向かう本作。
こうして物語は、荻野先生が病床で描き切ってくださった最終回へと突入していきます。
悪徳太子ことイスカリオテのユダ、そして阿修羅の体の中に救っていた存在。
彼らとの最終決戦が幕を開けるのです。
その最終話にして、孔雀王シリーズのヒロインである阿修羅がとうとう本当の復活。
そして、彼女が本当にヒロインであったことをしっかりと示すフィナーレへと向かい、激闘の幕は閉じるのです。
「曲神紀」の続きとして始まった本作ですが、荻野先生がお亡くなりになったことで、「退魔聖伝」から続いていた物語の全ての決着はつけられずじまいになってしまいました。
ですが「戦国転生」の物語はきっちりと終わりを告げ、そして阿修羅と孔雀と言う部分に関してはきちんとした決着がつけられたのです。
「孔雀王」シリーズの物語としての最後を描いた本作、「孔雀王」シリーズ全体の総まとめのような結末を描いて下さった「ライジング」。
その二作をもって、荻野先生は「孔雀王」シリーズを、駆け足にはなってしまいましたがまとめあげて下さったのでしょう。
読者としては「退魔聖伝」「曲神紀」で残った、キャラクターたちのその後と言った要素が明かされなかったのは残念ですが……
それでも、荻野先生が導き出した本作の結末が読めただけでも、感謝の一言に尽きるのではないでしょうか。


荻野先生、お疲れさまでした。
安らかにお眠りください。