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今回紹介いたしますのはこちら。

「無敵の人」第1巻 きづきあきら先生+サトウナンキ先生 

双葉社さんのアクションコミックスより刊行です。


さて、様々な世情を盛り込んだ作品を生み出し続けているきづき先生とサトウ先生。
その時々の時事ネタと言いますか、流行り廃りを取り入れ、エロス要素とバイオレンス要素を混ぜこんだサスペンス系の作品を得意とされている先生方ですが、本作もそんな作品となっています。

最近特に話題に上ることが多くなったネットスラング「無敵の人」。
本作はそんな無敵の人を取り巻くある活動に焦点を当てた作品で……?



高瀬いのりは、学校で授業を受けています。
授業が始まると、いのりをはじめとしたクラスの面々は「ローカ」と呼ばれる眼鏡型のVRデバイスを装着しました。
AR、VRどちらにも対応したローカはすっかり世間に定着し、授業をわかりやすく飾り立てる道具として、そしてもちろん日常生活にも深くかかわるようになっていました。

いのりは友人のミキとともに、放課後カフェでお茶をします。
そこには二人しかいないものの、ローカによってオンラインで繋がり、二人の友人であるまあちゅんのアバターが同席していました。
まあちゅんはいじめが原因で不登校になってしまったのですが、現在はいじめっ子たちを誤らせることに成功し、問題は解決している、様に見えます。
いのりはまあちゅんに学校に来てほしいと言うのですが、まあちゅんの方は、自分は淘汰された、適応できなかったからもう学校には行かない、と言うのです。
それでも、必要じゃない人間なんていない、と説得を続けるいのりなのですが、今度はまあちゅん、こんなことを言い始めました。
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わたしは突然変異の新種なの、進化した私にはもうリアルは必要じゃない、リアルなんて人はない面が大事と言いながら見た目や話し方で差別される……
まあちゅんがいじめられたきっかけは、彼女の太目な体型や、そばかすの目立つ容姿にもあったのでしょうか。
結局いのりは説得できずじまいなのでした。

まあちゅんのアバターがログアウトしたあと、ローカを外してミキといのりは改めてまあちゅんに関しての話を始めます。
ミキはどちらかと言うとまあちゅん派のようで、リアルなんて無理してくる意味あるのかな、とうつむきながらつぶやきました。
いのりは、ずっと引きこもってていいわけない、いつかはリアルに戻らなきゃいけないんだよ、まあちゅんにはもっと強くなってもらいたい、と熱のこもった反論をするのですが……
ミキは、すごい、いのりちゃんは何でそんなに他人のためにやれるの、と褒めた……かと思いきや、その後こんなことを言うのです。
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いのりちゃんみたいに自分の体をトレースしアアアバターを使えるような、自信のある子にはわからないよ。
自分に悩みがないから、他人にそんなに必死になれるんだね。
……とんでもない言葉、怒ってもいいであろう言葉。
それを投げかけられてもなお、いのりは、そうだね、私には相談するような悩みないから、と角を立てないよう返すのですが……

今見えている景色に注釈を加えて情報や通知を表示するARモード。
現実の視覚を遮断して仮想空間でネットを使用するVRモード。
その二つをローカによって使い分け、生きているいのりたち。
まあちゅんはVRで引きこもり、ミキはARで他人を拒絶して生きている……
会いたいときに会いたい人の、会いたい部分にだけ繋がることができる。
そんなこの世界で、いのりは……

いのりは家に帰り、母親と二人で食卓を囲みます。
何となく電源の入っているテレビでは、近所で起こった連続殺人事件について報道しています。
ですがその事に関してはさらりと流しまして、すぐ母親はチャンネルを変えてとりとめもない話題に変えてしまうのです。
と、その時でした。
2階から、大きな物音がしたのは。
母親に促され、いのりはその音のもとに向かいます。
二階には、立ち入り禁止と大きな貼り紙をした部屋があって……そのドアの前にいのりが立つと、突然ドアが開いていのりは中に引っ張り込まれました。
中にいるのは……いのりの兄。
いのりの兄はいのりの目に指を突き付け、脱がないと目を潰すぞ、と迫るのです。
うちにはおばけがいる。
いのりは兄のことを「おばけ」と言っていました。
おばけは、いのりや母親に容赦な暴力を振るい、思うが儘に弄んでいるようです。
最近では、いのりのお腹に「ワタシハBitchデス」などとナイフで切り傷をつけて傷跡を残すと言う、とんでもない凶行に出ていました。
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どんなにまじめにやっても、お前はもう彼氏も結婚も無理だ。
そう笑うおばけは、いのりの体に更なる凌辱を与え……
いのりの目には、ぼんやりと部屋中にあるお化けの狂気がうつっています。
そう言えば先ほどのニュースでは、連続殺人犯が大型の刃物を使っていると言っていた。
それはそこにある、斧の様なものなのか。
あるいはおなかに文字を刻んだあのナイフの様なものなんだろうか……
そして部屋にはさらにハンマーやらスタンガン、ポリタンクがところせましと並んでいます。
もしかしたらニュースで行っていた殺人犯は、うちにいる……?
考えたくもない現実を前に、いのりは……ローカを使いました。
これでリアルからいなくなれる。
海か、よその国か、ここ以外ならどこだっていい。
……他人に話せるような悩みなんてない。
本当の悩みは、知られるくらいなら死んだほうがマシだ。
わたしが悪いの?
弱くて自分を守れない、誰にも守ってもらえないから、淘汰されるの?
全てを諦め、ただ涙を流して耐えるいのり。
その時のことでした、
ローカで映し出された世界に、見覚えのない少女のアバターが現れ、こう声をかけてきたのです。
声は出さないで、思うだけでいいから。
あなたの悩みを、取り除いてほしい?
……思いがけない言葉。
このアバターは何なのか、なぜ自分のことを知っているのか。
そんなことを考えることもできず、いのりはただ一言、こう答えるのです。
うん。

いのりの顔にかかる、真っ赤な液体。
ローカを外すと、そこには……
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頭から血を流し、もう二度と動くことのない、頭から血を流して倒れるおばけの体と……
パーカー姿の男が立っていました。
彼は手に持った己から真っ赤な血をしたたらせながら、こう言うのです。
僕と、来て。
こうして、いのりの運命は大きく色を変えることになるのです。
この男、ニルと、あのアバターの持ち主、シューニャとの出会いによって……



と言うわけで、人に相談するような悩みはない、人には言えない深刻な悩みを持っていたいのりの運命が変わっていく本作。
いのりの兄が、引きこもって人生を捨て、何も失うものの亡くなった、所謂「無敵の人」。
その無敵の人が、もしかするととんでもない事件を起こしているのではないか?と言う恐怖と、それを聞くこともできないまま兄の鬼畜の所業を受け入れ続けていたいのりたち。
なのですがそこで、シューシャとニルが一気にその状況を変えたのです。
と言ってもこれは、ただ困っていたところを助けてくれた、と言う単純なものではありません。
いのりたちはひとまず、絶望の状況を逃れることは出来ました。
ですが、その後どうなるかの二つの道のどちらかを選ばされることになってしまうのです。
その選択は、いのりの今までの生活を一気に変えることになり……
いのりはさらなる「無敵の人」とのかかわりを持たざるを得ない道を選ぶのです。

本作の第1巻の表紙は、主役と言えるであろういのりでも、鍵を握るニルでもシューシャでもありません。
ではこの人物は誰なのか?
その意味が解る、衝撃の展開をぜひともその目でご確認ください!!

さらにきづき+サトウ先生作品には欠かせない、男女のいびつな関係も描かれていくようです。
「無敵の人」に翻弄され、「無敵の人」に近づいていくいのり。
彼女とニルの今後からも目が離せませんよ!





今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!