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今回紹介いたしますのはこちら。

「一日三食絶対食べたい」第2巻 久野田ショウ先生 

講談社さんのアフタヌーンKCより刊行です。


さて、氷に包まれた世界で一緒に暮らす、ユキとリッカの日常を描いていく本作。
先輩のスギタにちくちくやられながらも、ユキはリッカと三食キッチリ食べるために頑張るのです!!



ある日のこと。
リッカと一緒にお買い物に来ていたユキは、思いがけないものを見かけてしまいました。
あのスギタが、
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若い女性と二人きりで何か話している……!!
普段のスギタの様子からは考えられない(?)その現場を見かけてしまったユキはそれはもう仰天!!
その女性がどこかへ立ち去った後、すぐさまスギタに声をかけてしまいました!
今の誰すか!?彼女すか!?ねぇ!!
そのアレなテンションにイラッと来たのか、スギタはユキの足をギュッと踏みつけ、騒ぐな、殺すぞ、と圧をかけて黙らせまして……
妹だよ、血縁関係のある、と簡潔に彼女の素性を説明するのです。
ユキは依然スギタが「独り身」であると聞いていたため、勝手に一人で暮らしていると思い込んでいました。
ですがその独り身と言うのは独身であると言う意味だったようで……前々からスギタは妹さんと暮らしていたようです。
そこにリッカが走ってやって来ました。
衝撃の瞬間を見つけてしまったユキは、リッカのことをすっかり忘れてダッシュでスギタに声をかけに来てしまっていまして。
急に走り出してどうしたの、と言うリッカに、ユキは、すみません。アメあげますから許してください!と平謝り。
そこで、ユキくんっていつもアメで解決しようとする~、とリッカが指摘しますと、ユキはへへへとごまかすように笑い……
そんな様子をみて、スギタは言いました。
他人なのに仲いいね、と。
5年も一緒に住んでますし、普通ですよ、とユキは答えたのですが、スギタは……
そう、と一言だけ答え、そこで会話は終わってしまうのでした。

最近のユキは妙にお金に執着しております。
なんでも今月はリッカの誕生日なんだそうで、何をしてあげるかは何も決めていないものの、とにかく何かを上げるためにお金を貯めているのだとか。
ユキは、スギタに妹さんの誕生日に何かあげているのかと聞くのですが、スギタから帰ってきたのは予想外の言葉でした。
そう言えば、誕生日知らんわ。
なんとスギタが妹さんに関して知っているのは、名前・性別・年齢・仕事くらい。
お互い相手に興味がないから聞いてない、と言うのです!

……スギタは、リッカに限らず色々な人のいろいろな部分に興味を持つユキのことを凄いと思っていました。
家に帰ればお帰りと言ってくれる妹さんですが、明日は仕事で遅くなりそう、じゃあ自分は早く帰れるから先に夕飯を食べている……そんな会話をするくらいで、他の会話はほとんどありません。
自分の家とはまるで違う。
でも、兄妹なんて会話がないのが普通だろ。
スギタはそう考えながらも、妹さんと一緒に暮らすことになった日のことを思い出すのです。

親の離婚が原因で、再開するまで10年以上あっていなかった二人。
母の葬式で再会して、一緒にビオトープに来たのですが……
就職口を探しに来たスギタは、受付でいろいろと聞いて行くうちに、外での作業をさせられるなんてめんどくさい、きつい仕事を延々とさせられるなんて、生き残った方が損してない?と彼らしいネガティブな感想ばかりが募っていくのです。
祖と言って適当に死んだほうがマシかもな、すこし考えよう。
そんな考えに思い至り、他の科の予約時間になるので失礼します、また来ます、と適当に面接を打ち切ってその場を離れようとしたのですが……
そこで、涙を浮かべている妹の姿を見てしまったのです。
死んでしまった方がマシかも、とまで考えている自分とは違い……不安か、悲しいのか、その両方なのか……涙を落としている彼女。
それを見て、スギタの脳裏に浮かんだ言葉は……「マジか」でした。
とにかく彼女のその顔を見て、スギタの中で何かが決まったようです。
受付の方に振り返り、自分は学位は医学部生だった、何か役に立てることはないか、と尋ねて……
しばらくたった後、スギタは妹さんにハンカチを差し出しながら言いました。
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詩織、オレが君を養うことになったから、帰るぞ。

その時から、5年の月日が経ちました。
あまり趣味などがないこともあり、スギタの元には結構なお金がたまっています。
欲しいものもなく、煙草も室内では吸えないし、とただただたまるだけのお金。
思ったより、金溜めるのってつまんないな。
スギタはそんな感想を抱きながらも……
渡す相手がいる分、自分のために使うよりはずっとましだ。
そう考えるのでした。

またある日のこと。
食事中に、妹さんが口を開きました。
お兄さん、話があるんだけど。
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私、この部屋を出て行こうと思うの。
……22歳の女友達と一緒にルームシェアをすることにした、と言う妹さん。
スギタは、そう、へー、わかった、詳しいことはまた明日聞く、といつものような感情の希薄な返答をして、ただただ受け入れました。
ですが、実際は平静ではなかったようで。
暗い部屋の中電気もつけず、部屋の中では吸えないはずの煙草の煙を燻らせながら……
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ホントに、何も知らなかったな。
どこを見るともなく、スギタはそんなことを考えるのでした……



と言うわけで、スギタを掘り下げるエピソードが収録された今巻。
あんな調子のスギタでしたが、妹さんのことは彼なりに大事に思っていたのでしょう。
そんな時に突然下された、出て行くと言う宣言。
それは表には出さないでしょうが、相当なショックだったはず……
スギタはこのまま特に何もせず、妹さんを見送るのでしょうか。
妹さんは本当に、スギタの言うように彼に興味がなかったのでしょうか?
そんな寂しい予感もする中……やっぱりユキが絡んできまして、スギタと妹さんの関係は少しずつ変わっていったりするのです!!

その他、前巻から引き続いて描かれているユキの移動話の決着がつけられるお話、ユキの失敗を皆が助けてくれるちょっといいお話、そして作業員たちみんなの謎のやる気によって露天風呂制作に取り掛かるお話など、様々なエピソードが収録!
厳しい環境の中でも前向きに生きて行くユキたちの姿に、ほっこりすること間違いなしですよ!!

さらに巻末には17年に発表された読み切り「宇宙のライカ」を収録。
こちらはぐっとシリアスなお話で、様々な思いを抱かせてくれる読み応えあるストーリーが楽しめる内容になっております!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!