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今回紹介いたしますのはこちら。

「サーカスの娘 オルガ」第3巻 山本ルンルン先生 

エンターブレインさんのハルタコミックスより刊行です。


さて、それぞれの道を歩み始め、10年の月日が経ったオルガとユーリィ。
果たして二人の道はこのまま交わることはないのでしょうか。
それとも……?



サーカスで大成功を収め、一躍スターとなったオルガ。
一方のユーリィは、父の家業を継いで実業家となり、工場の運営を行っていました。
ですが、ユーリィは心は満ち足りません。
言われるがままに継いだ仕事、まさしく貴族と言った振る舞いしか知らない妻。
未だ強い力を持つ父親には逆らうこともできず、工場の従業員たちの不満を解消することもできず……
悶々とした日々を送っていたところに出会ったのは、オルガ……ではなく、オルガの恋人役としてサーカスのスターとなっている男、レオでした。
彼は腐りかけているユーリィに辛辣な言葉を投げかけるのですが……
その言葉は、ユーリィに決断をさせるのでした。

ユーリィは戦場に立っていました。
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厳しい戦局の中で、ユーリィは辛くも生き残っています。
その日もギリギリのところで何とか生き延び、野営地でのささやかな休息をとっていました。
ユーリィは、じっと右手を見つめます。
その手はかすかにふるえていました。
戦争とはいえ、人をその手にかけた罪悪感なのか……
そんなことをしていると、ユーリィに声をかけてくる男がいます。
男の名はエフレーム。
見るからに軽薄そうな彼は、ユーリィが富豪の息子であることを知っていました。
そして……ユーリィが志願兵として戦場にやって来たことも。
何を勘違いしたのか、エフレームはユーリィが何かをやらかし、そのほとぼりを覚ますために船上に来たと思い込んでいるようです。
どちらかと言うとそれは、エフレームの方だったりするのですが……
ユーリィはと言うと、エフレームにまともな対応をするのも面倒なようで。
今は体を休めないと。
それと僕は今ただの兵士だ、お前と同じ。

ユーリィはその日のことを思い出していました。
志願兵になると言った時、両親は驚き、父はこう言いました。
それはお前のやるべきことではない、と。
ですがユーリィはこう返したのです。
これはぼくの人生じゃない。
……当然父は怒ります。
思い上がりは甚だしいぞ、何様のつもりだ、人は自分のしたいことではなく、するべきことをするのだ。
ユーリィはそんな父を見つめて言うのです。
そう思っていました、でもそれでは、ぼくの魂は?
ぼくはもう、世界を変えるしかないんです。
もうユーリィの決意は揺るぎません。
両親もそれを察知したのでしょう、狂気の沙汰だ、個人の幸福など、そんな身勝手、絶対に許さんぞ!と捨て台詞を残して退散していきました。
……残ったのは妻だけ。
彼女は……絞り出すように尋ねました。
わたしとの結婚も、するべきだからしたの?
その問いかけに、ユーリィは一言、何よりも彼の気持ちを雄弁に語る言葉で返すのです。
……ごめん。

食事の配給が始まりました。
あまりうまいとは言えない、少ない食事に毒づくエフレームですが、他の兵士たちはそんなエフレームを小馬鹿にします。
ママの手料理が恋しいのかな?
ガタガタ抜かすんじゃねえよ、帰れるのは勝った時か死んだとき、ここはそう言うところだ。
それでも来たからには覚悟を決めな。
そう一喝した兵士たちですが、やはり地元に残してきた妻や恋人が恋しいのは変わらないようです。
話の流れで、兵士たちは各々のパートナーはこれこれこういう顔で……と教え合う流れになったのですが、何となく話を聞いていたユーリィは、それを参考にして似顔絵を描いてあげました。
その絵は兵士たちに大評判!
お守り代わりにする、とユーリィに次々注文が舞い込むのです。
自分の絵がこれほど求められたのはどれくらいぶりでしょうか。
ユーリィはかすかに頬を染め、談笑しながら似顔絵を描き続けるのですが、そこでエフレームから、思わぬ人物の似顔絵を頼まれるのです。
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サーカスの、オルガって娘知ってるかい?
……まぎれもなく、あのオルガのことです。
オルガは兵士たちにも大人気で、美しく華やかな演技をしながらも、お金持ちよりも庶民に肩入れしてくれる彼女の話を始めるとものすごく盛り上がるのです。
と、エフレームはそこで見栄を張り、昔オルガと付き合っていたんだ、と嘘をつき始めました。
すぐ別れたけど愛し合っていた、できるならもう一度彼女に会って謝り、熱いキスを交わしたい……
そう騙るエフレーム。
その嘘を信じたわけではないのでしょうが……やはり、思い入れの深いオルガの絵を描いてくれ、と言われて、戦場でササッと描いてしまう気にはなれないのでしょう。
今日は手がかじかんできたから、と似顔絵を打ち切るのです。
何も知らないエフレームは、また明日描いてくれよな、とユーリィの肩をたたくのでした。

その夜のことです。
敵兵の奇襲が野営地を襲ったのは!!
降り注ぐ銃弾を、身をかがめて避けるユーリィ。
すぐさま銃を取り、身を隠しながら敵兵を迎撃するのですが……
野営地には、ユーリィが似顔絵を描いてあげた男の無惨な死体が転がっています。
ぞっとするユーリィですが、感傷に浸っている場アリではありません。
再び迎撃をしていますと、背後に人影が現れます。
それは、エフレームでした。
むやみに外に出るなと言われていたはずなのに、何故?
ユーリィの背後に仁王立ちしているエフレーム。
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その腹部には、真っ赤な血の染みがにじんでいて……!!
倒れ込んだエフレームを必死に助けようとするユーリィ。
もういい、さすがにこれはもう死ぬわオレ、とこんな時でも軽薄さを崩さないエフレームでしたが、それでもユーリィは声をかけ続けます。
オルガにもう一度会うんだろ、もう一度会ってキスをするんだろ!?
消え入りそうな声で、それは嘘だと打ち明けようとするエフレームですが、ユーリィはそれを遮るように言うのです。
オルガは強い人だろ、待ってるぞ、強い人間を。
しぶとく生き延びて、またオルガに会いに行こう、いいな?
そんなユーリィの気持ちは痛いほどエフレームに通じていたのでしょう。
そうだな、と言って……
エフレームは血を吐いて絶命するのでした。
……動かなくなったエフレームに、もう一度声をかけるユーリィ。
その瞬間のことでした。
敵の銃弾が、ユーリィの頭に当たったのは……

見渡す限り真っ暗な世界に、降り注ぐ雪。
子供の姿のユーリィは、その世界できょろきょろと周りを見渡します。
すると、真っ暗な世界の中でひときわ強い光を放ちながら、躍っている少女の姿が見えました。
それは……オルガです。
涙を浮かべながらユーリィがオルガのもとにたどり着くと……オルガはにっこりと微笑み、ユーリィの手を握ります。
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そして二人は、光に包まれたまま踊り……そして……




と言うわけで、クライマックスを迎える本作。
オルガとユーリィは別々の人生を送り、ユーリィは結婚までしていました。
ですがお互い、それなりの成功を収めていたにもかかわらず、どうしても心の底から幸福を感じることは出来ていません。
それはやはり、幼い日に惹かれあい、そしてお互いその気持ちを薄々感じていながらも別れざるを得なかった想い人の存在が引っかかっていたのでしょう。
作中でハッキリとそう明言はしませんが、描かれているオルガとユーリィの表情や行動の機微にしっかりと現れているのです。
ままならない人生から、せめて自分の魂を取り戻そうと行動したユーリィですが、戦場はあまりにも過酷。
ユーリィは銃弾を頭に受けてしまい……

そしてユーリィが今どうなっているか知る由もないオルガは、レオとともに順調と言っていい生活を送っていました。
上昇志向の強いレオは、自分をもっと大きくするため、演技に政治色を盛り込んで大衆を味方につけ、さらに大スターであるオルガも利用しようとしているのです。
オルガはこのままレオと結ばれ、彼を引き上げるための道具となってしまうのでしょうか。
成り上がろうと言うレオですが、決してその性根は悪と言うわけではありませんから、不幸にはならないかもしれません、が……

オルガとユーリィ、身分の違う二人の恋。
その物語は今巻でフィナーレを迎えます。
二人の恋は、悲恋で終わるのか、あるいは大団円となるのか。
感動が押し寄せ、幸せな気分になれること間違いなしのラスト2話は、間違いなく必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!