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今回紹介いたしますのはこちら。

「のこのこ」第1巻 明治カナ子先生 

朝日新聞出版社さんのNemuki+コミックスより刊行です。


明治先生は90年代後半から活躍されている漫画家さんです。
初単行本は成年向けコミックスでしたが、その後はBL系の作品をメインに活動。
近年ではGOGOバンチと言った男性向けの雑誌でも連載するなど、活躍の幅を広げていらっしゃいます。
そんな明治先生の最新作は、ホラー漫画となっています。
ですがわかりやすいあからさまに怖がらせに来る系のホラーではなく、主人公の周りで奇妙な出来事が起こっていくじんわりと来るホラーでありながら、日常系の味わいもある作品となっていまして……?




今日は、のこの誕生日。
今日で10歳になるのこ、小学生ならば誕生日はおいしいものが食べられたり、プレゼントがもらえたりと嬉しい日だと思っている子が多いことでしょう。
ですがのこにとっては、誕生日は憂鬱な日なのです。
朝、さっとカーテンを開けて外を見ますと、そこにあったのは
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庭を埋め尽くすような夥しい動物の死骸!!
のこが仰天するのも仕方のないことですが、一緒に住んでいるおばあちゃんは慣れたもの。
見ない方がいい、あとで役場の正装か連絡しておくよ、と簡単そうに言うのです。
そしてもう一人一緒に暮らしているお兄ちゃん、丹固は面白半分と言った感じで、今年は何だった?とのこに尋ねてきました。
動物の死体だったと言うと、へぇ肉か、去年は庭いっぱいにサンマがびっしりで鼻がもげるかと思ったけど、肉なら売れるんじゃねえの?と気楽に言うのです。
おばあちゃんは、受け取ったら何が起こるかわからないから売らない、きっぱりそれを否定するのですが……

あの動物の死骸、そして去年の大量のサンマ。
それは、のこへの「貢ぎ物」です。
小学生へのプレゼントが肉や魚なんてリサーチ不足だな、と笑う丹固なのですが……
実はのこにはそれほど物欲というものがなく、欲しいものは何かと聞かれても即答はできなかったりします。
何か欲しいものってあるかなと考えた末、出てきたのは昔丹固が作ってくれた手作り人形が思い浮かびました。
もう一個欲しい、お友達作ってあげたい、とのこは丹固におねだりするものの、あれは夏休みの宿題で作ったんだ、面倒だからイヤ、と断られてしまい……
今思い出しても、あの人形をもらった時はすごくうれしかったのこ。
こんなうれしいプレゼントはない、と思った……はずなのですが、なんでしょう、もっともっと、すごくうれしいものをもらった記憶もあるような……?
のこはどうしてもそれが何か思い出せないのです。

そもそもこの貢ぎ物をくれるのは誰なのか。
それのことを、のこは「影人間」と呼んでいます。
パッと見ると普通の人間と何ら変わらないのですが、目を凝らしてよく見るとそれは何処かおぼろげで、普通の人間ではなく……
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そして何より、そもそものこと丹固以外には見えないのです。
何かにつけてのこに何かをあげようとする影人間。
どんな小さなものでも受け取るな、あいつらの言うことは無視しろ。
丹固から繰り返し言われている忠告は、小学生ののこでもしっかりと胸に刻み込まれています。
ちなみにのこはもっと幼いころ、影人間に直接何で自分と仲良くしたいのか?と尋ねたことがありました。
影人間によると、のこはとても「運がいい」とのことでした。
強運の持ち主で、影人間にとっての「福の神」のような存在で、貢ぎ物を捧げることで彼らにとっていいことが起こるらしいのです。
じゃあもらってもいいんじゃないかと言う気持ちもよぎるわけですが、影人間が「あげる」と言って渡してくれたものというのは、どこかの誰かの所有物だったもので。
受け取ってしまうと、結果的にのこが盗んだことになってしまいますので……やっぱり受け取るわけにはいかないのです。

ある日、丹固はのこに、あいつらと縁を切りたいか?と尋ねてきました。
勿論、それが一番の望みだよ、と即答しますと……丹子は、じゃあ望みをかなえてやる、とあっさり返答。
それがどれだけ本気なのかはわかりませんが……のこは、丹固はやっぱり自分の一番の理解者なんだ、とお兄ちゃんに対する信頼を強めるのでした。

そんなのこでも、将来やりたいことがあります。
何もないこの田舎を出て、東京で暮らすこと!
それほど難しい夢ではないのですが、それはあくまで普通の立場の者にとっての話です。
誕生日ごとに、動物の死体やらサンマやらがドカッと届けられる。
ここは相当な田舎町ですから、大きな庭の中だけに届けられたそれは人目につくことがあまりなく、大きな騒動にはなりません。
今回の件に関しては、役場が来るまでもなく、いつの間にか忽然とし甲斐が消えてしまいましたから、なおさら騒がれるようなことはありませんでした。
ですが、これが人だらけの東京で起きたとしたら?
……考えるまでもなく大騒動になることでしょう。
東京に行くには、この誕生日の大貢ぎ物大会をどうにかしなければいけません。
でもどうすればどうにかなるというのでしょうか?
のこは漠然とした絶望を感じるものの、そこは子供ですから深く傷つくこともなく、すぐ気を取り直したのですが……
そこに丹子がやって来ました。
のこで、出かけるぞ。
その人形も持ってこいよ。
突然丹固はそう言って、のこを連れだしたのです!

サンマの雨を止めてやる。
そう言って丹固がのこと向かったのは、なんと東京でした。
そして東京の、雑居ビルの地下にある「会員制」と書かれた奇妙な部屋の中に入っていきました。
以前影人間の後をつけて行ったらここに入っていった、と言うその部屋……
一見するとちょっと敷居が高そうではあるものの、普通のお店に見えます。
が、様子をうかがっていると……影人間が出入りしている様子。
それを確認すると、丹固はのこにあの人形を渡すよう求めてきました。
人形を、あの店に投げ入れると言うのです。
人形と言うのは、身代わりにするために作られたりもする。
人間の代わりに呪いを受けたり、呪いの道具になったりする。
……突然恐ろしいことを言い出す丹固に、のこは恐る恐る尋ねます。
でもその人形は違う……違うよね?
元は夏休みの宿題で作ったんだよね?
じゃ、返して、その子は、「のこのこ」は、あたしの友達……大切なの。
のこは人形にのこのこと名前をつけて大事にしていました。
のこのこ……「のこ の 子」。
いい名前じゃん、身代わりにぴったりだな、と丹固は人形を離しません。
人形が欲しいなら同じのを作ってやるから、となだめようとする丹固なのですが、のこはガンとゆずりません。
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同じやつなんてない、その子は家族なの!と泣きながら縋るのこ!
流石の丹固も泣かれると無慈悲に人形を投げ入れることもできず……

しばらく二人は、物陰に腰かけたまま押し黙っていたのですが、やがてのこの方から声をあげました。
この子を差し出したら、もう影人間は出てこない?
……丹固も今まで試したことはないわけですから、絶対大丈夫とは言えません。
ですが……丹固はのこが大好きなお兄ちゃんで、一番の理解者で、欠点が見つからないような理想の存在。
彼の言う事ならば……きっと間違いはないでしょう。
のこは意を決し、ちゃんとお別れをしたら使ってもいい!と宣言。
お花で飾ってあげる!と言うと、丹固はどこからか一輪の花を取り出し、来れていいかと尋ねてきました。
ありがと、とそれを受け取ると……
のこはぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、お別れをして……
丹固がのこのこを店に投げ込んだのでした。
すると店の中からは、想像できないほど多くの人の、いや、影人間の声が沸き上がりました!!
のこさま、のこちゃん、のこ、のこ、のこさまぁ!
よくぞいらしてくださいました!!
店の中で影人間が大熱狂しているのを確認し、丹固はのこの手を引いてその場から駆けだしました。
これからは影人間は「のこのこ」を祀ってくれるだろう、のこより大事にしてくれるさ。
大切なのこのことの別れは悲しかったはずですが、のこは丹固と手をつないで帰れることに幸せも感じていました。

それは、保育園に通っていたあの頃のこと。
お友達の舞ちゃんを見送り、一人保育園の砂場で砂遊びをしていたのこは、一人呟いていました。
舞ちゃんはいいな、お兄ちゃんが迎えに来てくれる。
のこにもお兄ちゃんがいればいいのに。
のこも、お兄ちゃんが欲しい。
……おばあちゃんは仕事が忙しくて、お迎えが来るのはいつも一番最後。
いつも一人、砂場で泣きながらお迎えを待っていました。
そんな彼女に……影人間がささやいたのです。
のこちゃん、欲しいものあげる、なんでもあげる、仲よくしよう。
その声に応えずに泣き続けているのこに、その影人間は言いました。
何で泣いてるの?欲しいものなんでのあげるよ?
するとのこは振り返ることもなく、泣きながら答えたのです。
お迎えが欲しい、のこも迎えに来てくれるお兄ちゃんが欲しい。
……そっと、のこの頭をなでる手。
一緒に帰ろう、のこ。
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振り返るとそこには、おぼろげな影人間ではなく……丹固が優しく微笑んでいました。
その日から……のこには、お兄ちゃんができたのです。
丹固は欠点がなく、のこを理解してくれて、優しい……完璧なお兄ちゃんです。
それはそうでしょう。
丹固は人間ではないのですから。
でも怖くはありません。
お兄ちゃんは家族なのです。
……のこにはあまり欲しいものはありません。
それは多分、小さいころに一番欲しいものを、もらったからでしょう。



と言うわけで、のこと丹固の日常を描いていく本作。
本作はこの第1話に当たるお話が17年に読み切りとして掲載され、18年より連載化されました。
連載化された初回、第2話に当たるお話からはのこは高校生となり、憧れの状況生活を始めることになるのです!
そうなったと言う事は、丹固の狙い通り影人間は姿を見せなくなったと言う事。
あれ以来落ち着いた日常を過ごしていたのこなのですが、上京の際に起きたある出来事をきっかけに、再び不思議な出来事が巻き起こるようになってしまうのです!
憧れの東京での学校生活とともに幕開ける、影人間とのアレコレ。
おぼろげな姿で現れ、貢ぎ物をしてくるだけだったはずの影人間が、上京してからは全く違う姿で、全く違う方法でのこに近づくようになり……
ゾクゾクと背筋を寒くさせるびっくり系やグロ系のホラーではなく、奇妙な出来事やちょっとした違和感、得体のしれない存在と言った、静かにやって来るしっとり系のホラー漫画となっています。
本作の鍵となるであろう謎の多い影人間ですが、元影人間だったと思われる丹固をはじめ、姿を現さないのこの両親や、のこ自身にも大きな謎が隠されているなど、様々な謎が用意。
これからどうなるのか分からない影人間たちの行動も気になるところですが、そんな謎も出し惜しみなくあっさり明かされたりも!
出し惜しみなく進んでいく本作の今後に要注目ですね!!

そんなホラー要素やドラマ部分の他にも、個性的なキャラクターも魅力の一つ!
ちょっぴり天然の入った素直なのこも可愛らしく、3話から本格参戦する池山先輩も一癖ある面白いキャラクター。
脇を飾るその他のキャラも個性的な人物ぞろいで、物語を一層鮮やかに彩ってくれていますよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!