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今回紹介いたしますのはこちら。

「双亡亭壊すべし」第14巻 藤田和日郎先生 

小学館さんの少年サンデーコミックスより刊行です。




さて、帰黒と青一の衝撃の関係が明らかになった前巻。
ですが奴らは青一たちのかつての仲間の形を作り、精神的にも追い詰めながら戦いを挑んできます。
そして紅は泥努に連れ去られ、モデルになるよう命ぜられていて……?



恐ろしい存在である奴ら。
ですが人間からすれば恐怖の対象でしかない奴らは、泥努に対しては逆に恐怖に怯えているようです。
奴らは泥努を利用してこの星に侵略しようと企んでいたはず。
だと言うのに、泥努にはこうべを垂れて絶対服従。
泥努は、奴らの都合など自分にとってはどうでもいいからそっちでやれ、と全く相手にしていません。
鬼離田菊代、残花の部下、しの……
今のヤツらの中核と言えるメンバーがそろっても、泥努の一瞥にはかなわないのです。

泥努は紅をモデルに絵を描き始めます。
敵の真っただ中で、たった一人囚われてしまっている紅。
一見すると絶体絶命のピンチですが……紅はチャンスをうかがっています。
紅の持つ最大の技、奥伝「花の輪」。
通常の攻撃では泥努に効果はありませんが、練り上げに練り上げた気を県に纏わせて放つこの技ならば、泥努に致命傷を与えることができるはず。
ですが花の輪を放つには、木を極限まで練り上げなければなりません。
モデルをしながら、気を練り上げていることを悟られないように……話をし続ける。
紅はそう決意し、早速口を開くのです。

最初は話しかけても、黙れと冷たくあしらうだけだった泥努。
ですが、紅のこんな言葉には反応せずにはいられません。
お前はきっと何でもわかってるんでしょうけど、ただ一つ、お前が間違っているところがあるわ。
それは、お姉さんの言葉について。
……泥努にとって「全て」と言ってもいい、姉の存在。
その姉の言葉についての解釈が間違っている……?
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泥努は初めて紅の言葉に興味を抱き、それは何だ、と問いかけてきました。
話に集中させれば、気を錬る時間も作りやすくなる。
10分間、時間を稼げば……
紅は、実際に見てきた泥努の過去から、泥努とその姉の間に起きたことを把握しています。
13歳だった泥努は、幽鬼のようになった姉に元気を取り戻してもらうため、絵を描き続けた。
でも姉はその絵を手にも取らずに、じょうずねえ、と答えるだけ……
そのころの泥努は、姉が入れ込んだ男の描く絵が理解できませんでした。
しかし姉はその絵をこう評していたのです。
じょうずというより、むねがぽおっとあったかくなる、と。
泥努の「じょうずな絵」は、姉の想い人の「あったかくなる絵」より下に位置付けられていた。
「あったかくなる絵」の意味がわからない泥努は、それもまた理解できなかったのです。
今の泥努は、その事をこう判断しています。
あの下手な流行画家に思いをかけ、引き離されて精神が病んでいた、そんな状態の価値観など信じるに足りない、と。
……着々とたまりつつある気。
そこで紅は、さらに話を続けます。
確かに泥努の姉は普通の精神状態ではなかったかもしれない。
でもあの夜、最期の一夜だけは、正気だった……
「姉ちゃんを、殺してね。」
そう幼い泥努に頼んだ姉。
姉はクリスチャンだったため、自殺は出来なかったのです。
だから泥努に頼んだ……泥努の心がどれだけ傷つくか、想像もしないで。
そして……
その続きを離そうとしたその瞬間、泥努は無数の手を伸ばし、紅を威圧します。
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それをこの私の前で、口にするのか。
この腕どもがお前を千切り殺すぞ!
強烈な怒りを表す泥努。
ですがそれは逆に言えば、時間を稼ぐために泥努の気をそらそうと言う紅の思惑通り。
泥努に怯まず、紅は続けるのです。
泥努に首を締めさせながら、姉が言った言葉。
絵、もっともっともっとじょうずになってね。
なぜ姉は最期まで自分にそう言ったのか?
何故一度も自分の絵を「あったかい」と言ってくれなかったのか?
泥努は、その時の姉は自分のことなど見ていなかったからだ、と思っていました。
ですがそれは違います。
姉は知っていたのです。
泥努が絵を描く目的が、姉に「あったかい絵」と言ってもらうためだけになっていたことを。
……かつて無心に絵を描いていた泥努が、純粋な気持ちを忘れ自分の言葉をもらうためだけに描いている。
自分の寿命は間もなく尽きる。
わたしがいなくなったら、弟はもう二度と絵を描かなくなってしまうだろう。
そして一度でも弟の絵に「あったかくなる」と言ってしまったら、満足して絵を描かなくなってしまうかもしれない。
……だから姉はあの時、もっと「じょうずになって」と言い残したのだ……
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その言葉を聞いて、泥努は激昂します。
嘘をつくな!
あの状態で、弟に殺されるあの乱れたあの瞬間に、姉はそんなことを思ったと言うのか!!
とても信じることができないその事実。
ですがその時点ですぐ紅を千切り殺さなかったことから……泥努自身ももしかしたら、と思い当たるところがあったのかもしれません。
紅は、泥努の問いかけにこう答えました。
だって彼女は、絵が好きだったから……
そう答えた瞬間です。
紅の気が練りあがったのは!!
すぐさま紅は泥努の手を振り払い、地面に落ちていた短刀を拾い上げます!!
そして振り向きざまに必殺の花の輪を放つ……
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はずでした。
そこにいた泥努は、放心状態で立ち尽くしています。
全てに納得がいってしまった泥努が、今までに見せなかった表情を浮かべていたからなのでしょうか。
それとも、紅の本能が何かを察知したのでしょうか。
とにかく、紅は花の輪を放つことができませんでした。
泥努は完全に納得がいったと言ったように、そうかとつぶやき……
そして、こう言ったのです。
お前が私を殺さなかったのは正しい。
外の者どもはその命を少し永らえた。
……その言葉の、真意は……!



と言うわけで、新たな局面を迎える今巻。
前半では前巻の青一と帰黒の戦いの決着が描かれ、後半では改めて双亡亭に突入しようとしている宿木たちの戦いが描かれます。
どれもが見逃せない内容で、激しい戦いとともに驚くべき事実が明かされていき、着々と物語がクライマックスに近づいているのがわかります!
新たな敵も現れながら進展していく物語はさらに混迷!!
それが言ったこの後物語にどんな作用をもたらすのか?
人間たちに勝ち目はあるのか?
そして泥努の行っていた言葉の意味は……
さらに今巻の終盤では、とうとう泥努が動くことに!!
ますますその恐ろしさを強大にしていく双亡亭。
果たして人間たちはヤツらの野望を挫き、泥努の狂気を治め、人類を救うことができるのか!?
また一つの山を迎えている本作、一体どのような展開となるのか……
目が離せませんね!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!