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今回紹介いたしますのはこちら。

「ヒナちゃんチェンジ」第1巻 梶川岳先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。



梶川先生は15年にジャンプ+でデビューした漫画家さんです。
連載デビューは16年にコミックゼノン系列のウェブ雑誌に連載された「真亜ちゃんは今日も家にいたい」で、こちらで初単行本刊行も果たしましたが、第1巻表記があったものの、全1巻で完結となってしまいました。

そんな梶川先生の最新作となる本作は、恋愛漫画となっております。
ですが単なる恋愛漫画ではなく……?



天野ヒナは、いじめられていました。
彼女の机は落書きだらけで、昼休みにその落書きを落とそうとしていると、クラスの男子からものを投げつけられました。
何も言い返せずに逃げるように教室を出ると、背後から聞こえてくるのはまたも笑い声、そしてだせぇ、と言う言葉。
言い返さなければ何も感じていないとでも思っているんじゃないか。
やり場のない憤りを胸に抱きながら、机を拭うぞうきんをすすいでいると、今度はクラスの女子たちが現れ、屋上で待ってたのにどうして来ないのか、と絡んできました。
ヒナが言いよどんでおりますと、窓からある男子生徒の姿が見えました。
女子生徒たちに囲まれたその男子生徒は、滝沢蓮。
彼はヒナと幼馴染なのですが、最近はすっかり疎遠。
そしてその人気ぶりはヒナとまさに正反対です。
蓮は一瞬ヒナと目が合うものの、友人のマコトに声をかけ、女子同士で仲良くやってるのに邪魔しちゃ悪いからとその場を去っていってしまいます。
その姿を見たいじめっ子の女子たちは、無視されている、こんな地味子を蓮くんが相手にするはずない、と笑うのですが……
ヒナは女子たちに、蛇口から流れている水に頭を突っ込まされると言ういじめを受けながら、心の中で反論をしました。
私と蓮くんは心で繋がってるからわかってる。
空気を読んで触れないだけで、きっと蓮くんは心を痛めてくれている。
きっとそう、そうだよね蓮くん。
分かってる。

放課後になると、ヒナはいじめっ子たちに見つからないよう息をひそめ、空き教室に隠れていました。
これからずっとこうして人目を避けて生きて行くのだろうか。
そう考えると、ヒナの気持ちはたまらなく沈んでいってしまうのですが……
そんな誰もいないはずの教室に人影を見つけます。
その人影は、
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蓮でした。
蓮は人目を忍んで……泣いていたようです。
しかも拳からは血がにじんでいて、その教室のロッカーには殴られた後が。
大変、保健室行かないと、と蓮を心配するヒナなのですが……
蓮はほっとけよ、と最初は突っぱね……その後、こんなことを明かしたのです。
さっき振られたんだ。
気持ち悪いってさ。
あいつがそんな風に俺を見ていないってわかってたけど、ただ横にいるのは辛かったんだ。
友人としてじゃなく、恋人として、と思ってしまった。
だけど男の俺じゃやっぱり……
……あれだけモテている蓮が女子にそこまで手ひどく振られると思えません。
そして、最後の言葉を聞くに、つまり……
告白した相手って、と尋ねたヒナに、蓮は答えます。
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マコトだよ。
お、おれ、ホモだったんだよ。
実際は手ひどく振られたわけではありません。
マコトは冗談か何かだと思い、そのネタはまずいだろ、でも男同士なんて想像できないよな、キスとかやっぱ、気持ち悪いもんな。
冗談に対しての軽いノリでの返答だったその言葉は、蓮の心を深くえぐったのです。
お前だって軽蔑するだろ、と問いかけてきた蓮に、ヒナはしないよ、と返答。
蓮くんはいい人だもの、私の中の蓮くんは変わらないから……
そう言ってくれたヒナに、蓮は思い切った行動をとりました。
こうして話すのも何年ぶりだろうな、あの頃は俺たちよく一緒に遊んでた。
こうやって、あの魔法を使ってた。
蓮はヒナと右手の小指と小指を絡ませ合いながら、続けます。
ヒナ、お願いがあるんだ。
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チェンジ。
子供のころ一緒に遊んでいたときに発見した、秘密の魔法。
二人の小指を絡み合わせて呪文を唱えると、二人の心が入れ替わる……
その魔法を使って二人は助け合ったり、悪戯をしたりしていました。
ですが成長するにつれて二人は立場も気持ちも離れて行ってしまい、この魔法も使うことはなくなっていったのです。

……ヒナの体を手に入れた蓮は、まっすぐマコトのもとに向かいます。
蓮の体のヒナは保健室に行って手の具合を見てもらいながら……本当は気付いていた真実を見つめ直していました。
ずっと前から、蓮が自分のことなど見ていない事を。
蓮が……自分のことを選ばない事、を。

大分時間がたち、夕日が山に沈もうかと言うところになって、ようやくヒナの体の蓮は待ち合わせていた図書室に入ってきました。
そこで蓮は入ってくるなり、こんなつもりじゃなかった、とへたり込んでしまいました。
とにかく体を元に戻すヒナ。
すると……足と足の間から……垂れてくるものがあったのです。
蓮は何度も何度も頭を地面に打ち付け、後悔の言葉を絞り出します。
バカだ、あいつにもっと近づきたかっただけなのに、マコトを前にしたら気が高ぶって、抑えられなくて……
……そう、蓮は、ヒナの体の初めてを、勝手に捧げてしまったのです!!
許されることなはずがありません。
ヒナ自身も大変なショックを受けているでしょう。
ですがヒナは言うのです。
蓮くん、想いは伝えられたんでしょ?
愛し合えたんでしょ?
私は怒ってないよ。
許してあげる。
だって私とあなたは二人で一人じゃない。
……そんな一見優しく聞こえる言葉の裏には、ヒナの黒い感情が燻っていました。
これは、蓮くんと私をつなぐ唯一の絆。
密かに焦がれていた蓮。
決して自分の方を向くことのない蓮。
その蓮を、自分から離れることをできなくすることができる……!!
ヒナは言いました。
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望むなら私のこの体、また貸してあげるよ。
……そんな、呪いの言葉を……



と言うわけで、想いを伝えるだけのはずが、とんでもないことをしてしまった蓮。
ですがヒナは決して結ばれることのないと思っていた蓮との関係が持てることを良しとして、その過ちを許し、さらに自分の体を貸すことを約束するのです。
しかしこんなことで全員が幸せになれるはずがありません。
一応はマコトと結ばれることのできた蓮ですが、マコトとしてはヒナと関係に及んだとしか思っていないわけで、自分が受け入れられたわけではないという悩みがついて回ることは間違いないでしょう。
さらに、大切なものを奪ってしまったヒナへの引け目も感じているわけで……
対するヒナは、蓮のことをつなぎとめることだけはできているものの、自分の体でマコトと心を通わせている蓮を見させられると言う責め苦も受けてしまいます。
さらにその想いを募らせる中で、ヒナもとんでもないことをしてしまい……!?
秘密の魔法が生み出す、さらなる秘密。
ヒナと蓮が、そして巻き込まれたマコトを始めする周囲の人物はどのような未来を迎えるのか?
これからも様々な事件が待ち受けているであろう、不穏な空気は漂い続けています。
果たして物語はどう転がり、どう結ばれるのか。
見守り続けるほか、なさそうです!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!