yu0
今回紹介いたしますのはこちら。

「よふかしのうた」第1巻 コトヤマ先生 

小学館さんの少年サンデーコミックスより刊行です。


さて、「だがしかし」のコトヤマ先生による最新作となる本作。
アニメ化も果たした「だがしかし」に続く作品となればやはり注目を浴びるわけですが、果しえ本作はどのような作品となっているのでしょうか……?


中学二年生の夜守コウは、その日初めて誰にも何も言わずに、一人で夜、外に出ました。
初めて体験する夜の街は……いつもとまるで違って見え、コウの気持ちを高揚させました。
夜ってすごい、ただ歩いているだけで楽しいんだ。
そんなことを考えながら一人歩くコウ。
夜こそが自分の居場所なんだ、と嘯くコウですが……
それがかっこつけのセリフであることは自身よくわかっています。
こうして外に出る決心をしたのは、最近夜眠れなくなったからです、
そして夜眠れなくなったのは……学校に行かなくなってから。
そのきっかけは、ちょっとしたことでした。

学校生活ですが……コウは、自分ではうまくやれていたと考えています。
勉強は得意なほうでしたし、クラスメイトとの関係も良好……だったと感じています、表面上は。
ではどうしてこうなったかというと、それはこんな出来事がきっかけになったのです。
コウはある日、女子から告白されました。
その告白をコウは、ごめん、俺付き合うとかよくわからないんだ、と断ったのです。
もちろん告白されて嫌なことはありません。
自分が彼女にとって最も好ましい人物だったということで、光栄だといってもいいでしょう。
ですが……好きとか嫌いとか、愛と恋とか、そういったものがコウには、本当によくわからなかったのです。
すると、彼女の友達らしい女子数名に呼び出されました。
いきなり見ず知らずの女子に呼び出され、なんであの子を振ったのか、泣いてたよ、とまるで自分が悪いかのように糾弾される……
ごめん。
口ではそう謝っていたものの、心の中では怒りが渦巻いていたコウ。
おまえは誰なんだよ、うるせーよ、殺すぞ、だから女は嫌いなんだよ。
そんなことがあった翌日、玄関先で突然すべてが嫌になり……
コウは、学校に行くのをやめてしまったのです。

学校に行かなくなって体力が有り余ったからなのか、ほかの原因なのか。
コウはすっかり眠れなくなり、こうして夜で歩くまでになってしまいました。
久しぶりに乗ったブランコからジャンプしたら、思いのほか勢いがついてしまい、すっころんでしまったコウ。
そんなコウの目下の悩みは……学校に行かない云々、は置いておきまして、眠れないことです。
そこでコウは、ネットでちょっと検索してみます。
すると出てくるわ出てくるわ、同じ悩みを持つ人たちの意見。
散歩はいいとか、人と電話するとか、そういった意見の中で特に多く目にするのが「お酒」でした。
そんな意見を目にしたときに、たまたま通りがt型お酒の自動販売機。
高鳴る胸の動悸を抑え……コウは、自動販売機のボタンを押すと……
yu1
お酒買ってる、いいなあ。
あれ、君いくつ?ハタチ過ぎてるようには見えないけどなあ?
そう、声をかけてくる女性が現れたのです!!
慌てて逃げようとするコウですが、彼女はコウの首根っこをつかんで逃がしません。
そして彼女はこういうのです。
安心しなよ、あたしは別に君を交番に連れてこうとか思ってるかけじゃない。
tu2
お前、眠れないんじゃないか、少年。
あたしが君を助けてやろう。

彼女が言うには、眠れない理由は一つだといいます。
今日という日に満足していないから。
コウは彼女に誘われるがまま、夜の街を歩きます。
彼女はいきなり酔っ払いにハイテンションで話しかけてみたり、それをコウにも同じようにさせてみたり。
なんだか彼女のノリはそれほど気分の悪くなるものではなく、一緒にいて嫌にならない女性もいるんだな、などとコウは考えるのです。
すると彼女、コウにそろそろ眠れそうかと聞いてきました。
まだ眠れなさそうと答えるのもなんですので、そうですね、と答えるコウ。
その返答を聞くと彼女は、こんなことを言い出したのです!
そうか、じゃ、行こうか、あたしんち。

あたしは眠れない人間の相談に乗って、その悩みを解決してやりたいんだ。
そんなことを言いながら彼女は、近所にある雑居ビルに向かいます。
その一室に入ると、そこには布団が一つ、枕が二つ……?
さらに彼女はおもむろに服を脱ぎ、なんだかちょっと見たことのない謎にセクシーな格好になりました。
yu3
エッチなことする気か!?とビビるコウ。
一緒に寝るだけだよという彼女から逃げ出そうとするものの、やっぱり彼女は逃がしてはくれません。
何にもしないって、先っぽだけだから!
眠りたいんだろ?起きた時にはそらもうすっきりしてるから!!
ものすごい勢いで誘ってくる彼女を拒絶しきれず、布団に横になるコウ。
すると彼女は、何も考えないで、ゆっくりと呼吸をして……と、リラックスを促す声をかけてきます。
そんなことで眠れるとは到底思えないのですが……なんでしょう、得体のしれない女性相手とは言え、感じられる謎の安心感!
人と寝るってこんな気持ちなのか、と感心するのです。
この人も変な人なだけでいい人なのかもしれない。
そう考えたコウ、彼女をがっかりさせるのもなんだからと、寝たふりをしてやり過ごしてから帰ることにしました。
……しばらくすると、彼女が声をかけてきます。
寝た?本当に寝たの?本当は起きてんじゃないの?
何度か確認し、返事がないことを確認すると……
何やら、笑い声を漏らし始める彼女。
……誰かがこんなことを言いました。
人の血は、
yu4
夜が一番うまいと。
いただきます。
そう言って彼女は、コウの首筋に口を伸ばし……!!
少し血を吸った彼女は、驚きの表情を浮かべ、こう言いました。
なんだこいつ……めちゃくちゃ美味い!
……さすがにそんなことをされては、寝たふりを続けることもできません。
なんすか今の、とコウはたまらず声をかけてしまい……
こうして、二人の物語は始まったのです。
夜の世界に居場所を求める少年と……吸血鬼の物語が。



というわけで、コウと吸血鬼の七草ナズナが出会う本作。
吸血鬼といえば、血を吸って仲間やら眷属やらを増やしていくというイメージがございますが、本作の吸血鬼は仲間の増やし方がちょっと変わっているようです。
そのため今回のように血を吸われたことでコウが吸血鬼になることはないのですが……
この後、コウはとある理由で、ナズナに恋をしよう、と努力する、という展開になっていくのです!!
ナズナはコウという極上のえさをキープするため、コウはナズナに恋をしてその先にある目的をなす為、夜の逢瀬を重ねていくことに。
吸血鬼というだけあって浮世離れしているところのあるナズナと、ちょっぴり斜に構えたところのあるコウは相性も悪くなさそう。
二人は何となくいい感じになっていく、ような……?
ですがそこでまた大きな変化となるであろう要素が加えられ、物語はちょっぴり色を変えていき!?
コウとナズナの夜は、静かに、そして騒がしく続いていきそうです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!