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今回紹介いたしますのはこちら。

「夏目アラタの結婚」第1巻 乃木坂太郎先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


乃木坂先生は99年にデビューされたベテランの漫画家さんです。
代表作はドラマ化もされた大ヒット作「医龍」。
その連載終了後も、「幽霊塔」「第3のギデオン」と様々な作品を発表し、活躍されております。
そんな乃木坂先生の最新作である本作、気になるその内容は……?


夏目アラタは、児童相談所に勤務しております。
が、そんな方が木からは少し創造の出来ない、粗野な印象を受ける人物であるアラタ、事実今回も事情も深く精査せずに突っ走ってしまい、大失敗をしてしまいました。
幸い相手が許してくれたために大事にはなりませんでしたが、訴訟を起こされてもおかしくないとんでもない失敗……
先輩の桃山にもこっぴどく叱られたのですが、新たはまったくへこんではいない様子で、むしろ首にされてもいいとでも言いたげな態度です。
この仕事は向いていない、とはっきり言ってしまうアラタなのですが……その理由はこんなもの。
体にあざを作った幼児とか、彩に放置された野良犬みたいな目になっちまったガキとか毎日見てると心が病んでしまう。
それは、新たが15年前に児相イチの問題児だったアラタだからこそ、助けきれないもどかしさで感じてしまう気持ちなのでしょう。
アラタは、桃山や社長は自分の使い方を間違えてる、と言いだします。
自分が役に立つのは、
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「相手を半殺しにしてでも子供を守りたい時」だ、と!!
俺はその時のための鉄砲玉だ、俺は責任とってかっこよくやめられるし、子供も救える一石二鳥だ。

新たをどう使うかは置いておきまして、とりあえず今ある仕事はしなければなりません。
やって来たのは、最近不登校になった14歳の少年、山下卓斗君の家です。
以前も桃山と一緒に来たことがある彼ですが、お父さんがバラバラ殺人事件の被害者だ、というかなり暗い事情があるのです。
デリケートな案件だけに、桃山としてもアラタに担当はさせたくないのですが、なぜか卓斗くんのほうがアラタを指名してきたのです。
謝りたいことと、頼みたいことがある、と。

卓斗くんの父親を殺した犯人は捕まりました。
ですが今になっても父親の「首」は見つからないまま。
犯人は完全に黙秘していたため、情報が全く得られなかったのです。
そこで卓斗くんはとんでもないことをしてしまいます。
それは……アラタの名前を使って、犯人と文通を始める、というもの!!
遺族だから実名はヤバいと思い、ちょうど家に名刺があったし(ムカつく人だったし)、犯人好みの30台の男のフリをして手紙を送ってみたところ、返事が来てしまったとのこと。
そして最後に来た手紙にこう書いてあったのです。
今度、直接会って話そうよ。

結果として、アラタは卓斗くんの代わりに犯人と面会することにしました。
その代わり、卓斗くんにもう決して手紙を書いてはいけない、と固く誓わせて。
……実はこの身代わりの身代わりを受け入れたのは、興味本位だったり、卓斗くんの父親の首を見つけてあげようとしたりした、というのが理由ではありません。
卓斗くんに手紙の話を聞いていた時、彼の表情や態度から、アラタはあることに気が付いていたのです。
文通を面白がり始めていた。
父親を想う純粋な気持ちが、「悪」の側へ一線越えかけていた、ということに。
……ですが桃山でさえ、卓斗くんがなぜその犯人との文通を楽しんでしまっていたのかの理由が、何となく共感出来てしまうようです。
なにせその犯人は……
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世間を騒がせた衝撃の殺人犯、「品川ピエロ」なのですから。

事件が発覚したのは2年前の秋でした。
伊州の通報を受けて警察が踏み込むと、そこにいたのはバラバラの死体をバッグに詰めている最中の、ピエロの扮装をした「女性」だったのです。
名前は品川真珠。
社会的に成功した30代の男性ばかりを狙って殺し、死体をバラバラに分解。
咲の二人の犠牲者の遺体はいまだにそれぞれ右足と左手が見つかっておらず、逮捕時に発見された死体も未だ首が見つかっておりません。
発覚したのは三人の殺害と死体遺棄ですが、室内の結婚から4人目のDNAも発見され、身元がわからず立件はされなかったものの、少なくとも4人がここで彼女の手にかかったようです。
一審の判決死刑。
裁判所に現れた彼女はひどく痩せ、長い髪で顔を隠すようにしていて……
法廷画家が描いたひどく歯並びの悪い口元と、ふとったぽえろのイメージが人々の印象に残ったのでした。

凶悪連続殺人犯に会うのは、怖くないとは言えないでしょう。
ですが面会時間はわずか15分、さらに強化アクリルを通しての面会ですから、大丈夫だとアラタは余裕すら見せています。
道化師はその一線を越えることはできない。
そう言って、面会に挑むアラタの胸中は……不覚にも、ワクワクしてきています。
卓斗のことを笑えないな、と自嘲し……気を取り直し、真面目な公務員モードで面会に挑むことにしたアラタ。
やがてアクリル板の向こうのドアが開き……入ってきました。
太ったピエロ、あるいはやせぎすの歯並びの悪い女。
そんなイメージと全く違う、
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まるで高校生と見紛うような、小柄で童顔の女性が!!
ですがその大人しそうな風貌にもかかわらず、アラタの体には鳥肌が立ってしまっています。
彼女の内に秘められた、何かを感じ取ったのでしょうか。
どう話す?何を話す?
戸惑いながら、初めましてと自己紹介しようとした言葉を遮るように、彼女はアラタの名前を呼びました。
中学生みたいな字書く人だよね?
……予想外の展開に、アラタは咄嗟に、育ちが悪くて、とひきつった笑いで返すのですが……
思ってたのと違う、と面会室から立ち去ろうとしてしまうのです!!
このまま帰らせては何もなりませんし、おそらくもう二度とチャンスは巡ってこないでしょう。
どうにかして引き留めなければならない!
アラタは頭をフル回転させ……
ドンと壁を叩いて真珠を引き留め、スカした表情を浮かべながらこう言ったのです!
品川真珠!!
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俺と、結婚しよーぜ!!
……真珠は、微かに微笑んで……!



と言うわけで、とんでもない幕開けとなった本作。
この後アラタは、真珠から信頼を得るために様々な手を打つことになります。
徐々にわかっていくのですが、この真珠と言う女はただものではありません。
異常なほど頭が切れ、さらに駆け引きもわかっている底知れない真珠。
おそらくアラタが文通をしていた人物とは別人であることもわかっているようなのですが、それでも彼女はのらりくらりと振る舞い、そして「結婚」の話を進めて行き……!
このまま物語はアラタと真珠の結婚を前提とした探り合いが描かれていきます。
底知れない恐ろしさと、得体のしれない魅力を併せ持つ「品川ピエロ」真珠。
彼女はその中でとんでもないことを言いだし、物語はどんどんと混迷。
果たしてアラタは卓斗くんの父親の首の情報を手にすることができるのでしょうか。
そして、真珠との結婚はどうなるのでしょうか?
予想不可能な物語から、目が離せなくなる事うけあいですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!