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今回紹介いたしますのはこちら。

「潮が舞い子が舞い」第2巻 阿部共実先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、海辺の田舎町にある高校を舞台に、高校生たちがあーでもないこーでもないと日常を過ごしていく様を描いていく本作。
個性豊か過ぎる2年4組の面々がお話のメインとなるのですが、今回は生徒ではない人物にスポットの当たったお話を紹介させていただきたいと思います!


視聴覚室の前に、ちょっぴり不真面目な二人、白樺と黒羽根の二人が立っておりました。
世界史の教師、摩耶に施錠と鍵の返却を任されたのですが……なぜよりによって自分たちを選んだのか、二人にもよくわかりません。
人選いかれとるよな、などと言いながら視聴覚室に誰もいなくなるのを待っているのですが、仲良しオタク女子3人組の会話が盛り上がってしまっておりまして、なかなか出てきてくれません。
彼女達もプレッシャーをかけられるのはあまり楽しいものではないようで、自分たちが職員室に持っていくから鍵を置いていってくれ、と二人に声をかけてきまして……
白樺たちも友人を教室に待たせていますので、まさに渡りに船。
鍵はしかるべきものの元へ行くもんだな、と教室に戻るのでした。
と、その道中で通りがかる職員室。
見た目に反して真面目なところのある黒羽根は、鍵は女子に渡したと報告した方がいいかな、と提案してくるのですが、白樺はそんなの無視で良いだろと返答。
連れ待たせてるしな、と黒羽根も同意し、そのまま通り過ぎようとするのです。
するとその後ろから声が掛けられました。
摩耶先生です。
君たち鍵はどうしたの、閉め忘れたからって無視して帰ろうとしたんでしょう。
そう決めつけてきた摩耶先生に説明しようとする黒羽根ですが、摩耶先生は何だかスイッチが入ってしまい、話も聞かずに自分の言葉を続けます。
服や髪は乱れてても君たちは約束を守れること信じて任せたのに、ちょっと職員室来て、愛の指導するよお。
……もはや何を言っても聞いてくれなそうだとあきらめた白樺たち、大人しく摩耶先生について行きます。
そしてそんな事情を知らないまま、摩耶先生は言うのです。
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誰にだって失敗はある、だから他人の失敗は許しなさい。
でも自分の失敗は自分が叱ってあげないと成長できないんだよ。
……はあ、と答えるしかない黒羽根。
するとその場に担任の那智先生もやってきまして、何かやらかしたのかと事情を聞いてきました。
摩耶先生は鍵の返却をすっぽかしたんだと言う説明を始めたのですが……
そこに視聴覚室から戻って来た三人組が現れまして、説教中の摩耶先生を横目に、忙しそうだからと那智先生に視聴覚室の鍵を返したのです。
……皆の視線が摩耶先生に注がれ、シンと静まり返り……
摩耶先生は一言、
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あれ?これ私やっちゃいました?とぽつり。
これ私SNSにさらされて炎上する感じですか?
ちょっと待ってちょっと待って、これ待って待って待って!
せっかく自分の失敗は自分でしかれって名言ばしこーん決まったと思ったのに、クソ恥ずい。
この明言、また別の生徒を叱る機会があった時新鮮な気持ちで再使用していい?
もったいなくて黒羽根君。
待たせておいて第一声がこれなのはどうかというツッコミは置いておきまして、意見を求められた黒羽根は、まあ著作権は先生にありますから、と無難に返答。
白樺も、俺達は摩耶ちゃんの失敗を責めないよ、誰にだって失敗はあるから、と優しい声をかけてあげる……と思わせておいて、でも自分の失敗は自分が叱ってあげないと成長できないんだよ、と裏切りの著作権無視を決めたのでした!

誤解もとけたところでぞろぞろと職員室を出て帰ろうとする生徒たち。
それを摩耶先生は追いかけつつ、本当に怒ってない?SNSにさらさない?とくどいほど確認。
黒羽根は、気にしてないっすから、それに摩耶先生俺らにもすげえラフに接してくれるじゃないすか、そう言う人少ないからありがたいんすよ、とまたまた優しい返答。
いやーんすごく良い子、これが私の教え子どえーす!とおどける摩耶先生、和解のしるしにみんなで仲良し写真を撮ってSNSにアップしよう!としつこいほどSNS炎上対策をしようとしやがります。
せっかくだし女子も一緒にとろう、と三人組も呼び寄せ、黒羽根と柚下に抱え上げてもらった状態で所信を取ろうとするのですが……
そこで見かねた那智先生が声をかけてきます。
女子はともかく、男子生徒とのそんな写真あげて誤解産んだら大問題になるだろ、と……

やることなすこと上手く行かない、男子高校生に何て変な感情湧くわけないじゃん、と嘆く摩耶先生。
なのに、でも男子高校生は先生に興味持ってもいいんだよ、先生はもう大人の女だからね、となぜか黒羽根にアピールしますと、黒羽根はほほを染めて顔を背け、ちょっとやめてくださいよ、と予想外にウブな反応。
那智先生はそれを見て、生徒にセクハラするな、お前凶で教員免職になる意気込み七日、とまた冷静なツッコミをしてきて……
今の一連の行動がセクハラになるとは夢にも思わなかった摩耶先生、一転落ち込みまくり。
教師って、大人って難しすぎだよ、私だって数年前まで子供だったのに。
仕事や付き合いやで自分の時間なんてなくて、それができて当たり前で誰も褒めてくれなくて。
なのに少しでも失敗すると方々から怒られたり嘲笑われたりする。
子供は将来こんな大人の生活を送るために学校で過ごしているの?
常にマジレスの那智先生は、そこにこう返答。
そうだな、俺も注意してばかりだが、摩耶は失敗したり愚痴たれたり言い訳しながらも、生徒と仕事にしっかり向き合い逃げない姿勢は根性あると思ってるよ。
後輩の摩耶の成果をしっかり褒めると言う仕事を俺は怠っていた、摩耶はよくやってるし、非常に助かっているよ。
その言葉を聞いた摩耶先生……
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かっこえ、バチ惚れこいたろかな、とさっき泣いた(?)カラスがもう笑っております。
そして、大人とか教師とか学校っていろいろ大変なのに、ヨゴレてるみたいなイメージ先行し過ぎじゃない?と生徒に妙な話を振り始めます。
女子たちは、テレビなんかのエンタメ作品は子供対大人とかの全体悪の対立抗争を作って見やすくしている、そのイメージを引っ張り過ぎてる人はいるかも、と摩耶先生よりしっかりした意見を言う始末。
黒羽根もまた、大人が悪いとか社会が悪いとか誰かの責任ばかり気にして自分のことを棚に上げて省みないださいガキにはなりたくない、とまたらしからぬ真面目な台詞。
摩耶先生もにっこりしまして、もうほんと良い子!良い子ついでに髪形や服装なおして!とリアルな教育的指導をかましつつ、こう続けるのです。
でも、子供も時々今どきの若者は荒れてるとか、何々世代とかひとくくりにされてネガティブに報じられたり、描かれたりするのも私は少し抵抗あるんだよ。
私の可愛い生徒に悪い子は一人もいないから、リアルではない。
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あれ?これいまのセリフ、SNSに投稿したらバスるんじゃない?
ネット上で再使用してもいーい?
……せっかくいいセリフを言っても、結局セルフで台無しにしてしまう摩耶先生。
結局最初から最後まで、彼女の独り相撲の放課後なのでした……




と言うわけで、生徒たちだけでなく、先生たちもなかなか癖のある人たちばかり那本作。
今巻で初登場した摩耶先生ですが、残念ながら主役のお話はこの一話だけ。
いい先生かもしれないけどダメな大人である摩耶先生の今後の活躍に期待してしまうのは自分だけではない……はずですよね!?
その他のお話では、基本通り生徒たちメインのお話がたっぷり収録。
2年4組の様々生徒たちに次々とスポットライトを当てて行きまして、その豊か過ぎる個性をふんだんに味わわせてくれるのです!
今巻では第1巻以上に様々な人物が主役を務めてくれまして、その人数たるや数えきれないほど!
そんな彼らのくだらなかったり、甘酸っぱかったり、ほっこりしたりする小気味いい会話劇をお腹いっぱいご堪能ください!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!