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今回紹介いたしますのはこちら。

「静さまは初恋である、浪漫斯はまだない。」第2巻 石川秀幸先生 

集英社さんのヤングジャンプコミックスより刊行です。


さて、薩摩の男・凪との間で「初恋」をはぐくみ始めた静。
文明開化は進んでいるとはいえ、いまだ武家の誇りを強く抱く静と凪、その関係は一気に縮まることはありません。
ですが徐々に、確実に二人はその距離を縮めていって……?



静と凪と茅、三人の奇妙な三角関係が出来上がってしまい、どちらを選ぶのか?という選択を強いられてしまう静。
ですがそのどちらを選ぶのか、という問題よりもむしろ、武家の娘である自分が、その務めを果たす事もできないまま恋愛をしてもいいのかという問題に頭を悩ませていました。
そこで静は姉の雪に相談することにしたのですが、その最中にゆきは突然吐血し、倒れてしまったのです。


ラビニア先生によれば、雪は予断を許さない状況とのこと。
このままでは、もって五年。
そして、今の医療技術では雪の病気を根治することはできない……といいます。
あまりにも厳しすぎる現実を、静は受け入れることができません。
雪姉さまは静よりずっと小さいうちから吉原に買われて、それ以来外に出たことがないのじゃ!
静は雪姉さまのことを何も知らなかったのじゃ、恋愛や自転車、外の世界にあんなにあこがれていたなんて……
静は、なにも……
先生に縋り付き訴え、そしてうなだれる静。
自分がどういったところで、この現実が覆ることはないことをよく知っているのでしょう。
先生も困っていますと、隣の部屋から雪の声が聞こえてきました。
意識を取り戻したのか、と慌てて二人がその部屋に向かいますと、雪はか細い声でこう言いました。
雪が死したら、この体好きに切り刻むがよい。
静さん以前申して負ったではないか。
医者になるには解剖実験が不可欠、けれど日本では検体が著しく不足していると。
よいのじゃ、助けられるより助ける人間になれるのなら。
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雪も、武家の姫なのじゃ。
……静はたまらず先生に駆け寄り、雪が何の病気にかかっているのかを問いかけます。
吉原に長くいたものがかかる、死に至る病……
先生は悩んだ末にこたえようとするのですが、ゆきは人差し指を自分の唇に当て、にっこりと笑うのです。
……わかったところで、何もできない。
先生は、雪の気持ちを代わりに静に伝えるのでした。

静は雪との思い出を思い出し、涙に暮れていました。
馬の乗り方を教えてくれた雪。
流鏑馬を見事に成功して見せた雪。
吉原に向かうとき、笑顔で別れた雪……
そして最後に静は、母が死の間際に残した言葉を思い出します。
武家が滅びたこの時代で、母が娘に残せるのは着物くらいなものじゃ。
母が死しても、泣かなければな。
母の着物を受け継いだ静。
ここで泣いてしまえば、母の思いすらも裏切ってしまうことになる……!!
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静はぐっと涙をこらえ、そして頭を出し始めていた鼻水をすすりあげ……
茅に、医術開業試験の願書を取り寄せるように命じました!!
助けられるより助ける人間になる。
静は武家の姫としてその道を選び、姉もことも自ら治す……そう決意したのです!!
この時代、医者になる資格得るには東京大学の医学部を卒業することが唯一の無条件で医者になれる道。
ですがまだこのころ、女子が大学に入学することは許されていませんでした。
しかし医術開業試験の願書には女人禁制の文字はありません。
果てしなく険しい道で、今の静の学力では到底合格するとは思えませんが……それでも、静はそのわずかな可能性に賭けてみることにしたのです!!

……が。
自ら直接内務省に持ち込んだその願書は、
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あっけなく破り捨てられてしまいました。
女が正式な医者になるという前例はないから認められない。
女人禁制と書いていないのは、女の受験は想定していないだけに過ぎない。
我が国の国是は富国強兵。
女の仕事は子を産み育てること、女が学問など何を血迷っている。
……静の行動は、あまりに早すぎたのです。
このころの日本では何をどうしても静が、女性が医者になることは、できない……

沈み込む静ですが、それを見て凪や茅は一生懸命元気づけようとします。
凪は自分が医大に入って病気の研究を進め、雪を治して見せると豪語。
茅は、父親が政府の役人だから凄腕の医者を世界中から探して見せる、と言いました。
その二人のやさしさに感動と感謝を抑えきれない静ですが……
皆の気持ちに甘えていては、武家の姫とは言えない!とその言葉を素直に受け止めることはできないのです。
見かねたラビニア先生は、とうとう最後の手段を静に提案することにしました。
雪、あなたにその二人を捨てる覚悟はある?
恋愛を代償に、あなたは医者に慣れて、雪も助かるかもしれない。
……その方法とは……
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海外留学!!



というわけで、クライマックスを迎える本作。
凪と静の恋模様を描いていったこのシリーズですが、その二人の関係の決着よりも大きな選択が静に強いられることになりました。
静は海外留学の道を選ぶのか、凪や茅との関係を選ぶのか?
仮に留学したところで、雪の治療が間に合うかどうかは別の問題なのですから……
クライマックスを迎える静の初恋、必見です!

そんなクライマックスに至るまでにも見どころは満点です。
静と茅がどうして今のような関係になったのかに迫る過去編、そして西郷どんと凪のあれこれの行方……
いつものような静のちょっとずれた行動、というのは控えめながら、クライマックスに向けてのドラマ、そして凪や茅と静との恋模様の描写は大増量!
三人がどのような道を歩んで完結へと向かうのか……皆様の目でご確認ください!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!