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今回紹介いたしますのはこちら。

「忘却のサチコ」第13巻 阿部潤先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、トラウマを乗り越えつつあり、今やすっかり食事が日常の一部となりつつあるサチコさん。
編集者としての仕事も以前にもましてバリバリとこなすのですが、担当している作家の先生方は曲者ぞろい。
今回もそんな個性の強すぎる先生方に翻弄されてしまうようですが……?



編集長肝いりの、文芸誌記念号の発売が刻々と近づいてきています。
今までも様々なトラブルを起こして編集者たちを悩ませて来てはいる者の、その実力は折り紙付きの先生方の名前がずらりと並んだ記念号、その原稿も着々と上がってきていました。
看板である村島先生と有村先生の二大書下ろしに関しては、その仕事ぶりに絶大な信頼を寄せられているサチコさんが担当。
村島先生の原稿はすでに上がっておりますし、有村先生も京都の自宅でラストスパートに入っている……はずだったのです。
ところがそこでとんでもない一方が舞い込んできてしまいます。
有村先生が京都の自宅ではなく、東京にいる。
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それも、病院に入院している、という!!

慌てて駆け付けますと、有村先生は大病を患ったとか大怪我をしたと言うわけではなく、急性胃炎で病院に担ぎ込まれたのだそうで。
数日安静にすれば大丈夫だろうと言う診断結果も出ているのですが……そもそもなぜ有村先生が東京にいるのでしょうか?
事情を聞いてみますと、有村先生はいきなりぽろぽろと大粒の涙を流し始め……全てを明かしてくれました。
自分が散歩から帰ってきたら、奥様が家出をしてしまっていた。
それも、「信じてたのに」と一言だけ書かれた手紙を残して……

実は以前、有村先生は愛人を作って奥様にばれてしまったことがありました。
その時もサチコさんは巻き込まれてしまったのですが……それはともかくとしまして、その時も奥様は家出をしたのだそうです。
結局家出先の熱海まで言って平謝りして許してもらったとのことで。
いつも奥様は家出をすると、金沢や函館といった遠く向かってしまいます。
奥様はSNSで写真だけをアップして行きまして、それを頼りにいつも何とか探し当てるのだそうです。
……そして今回はと言いますと……有村先生、いつもは愛人を作ったり女性遊びをしたりしていたのですが、本当に今回ばかりは何の心当たりもないのだとのこと。
しかもいつものようなSNSへの写真のアップロードもなく、そもそも置手紙も初めてで……
クレジット会社に問い合わせて東京行きのチケットを買ったことだけはわかったのですが、このいつもとは違う家出に有村先生はほとほと参ってしまっていたのです。
ストレスで胃炎を発症させるくらいですから、追い込みで着手していたはずの原稿は真っ白。
このままでは大きな目玉の一つがかけてしまうわけですから……
有村先生の日ごろの行いの姓が大きいとはいえ、助け舟を出さないわけにはいかなくなってしまうのです。

サチコさんは有村先生のリストアップした、少しでも奥様が行きそうなところをしらみつぶしに当たってみました。
ですがほとんど空ぶり、最後に残った歌舞伎鑑賞の後に必ず寄ると言うレストランに行ってみることにしました。
中には……やはり奥様はいません。
簡単にはいかないか、とがっくりと肩を落とすサチコさんなのですが、このお店がかつての有村先生の著書に出てきたお店と言う事もあり、ゲン担ぎとばかりにここで夕食を取ることにしたのでした。

頼んだのは
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ビーフとタンのミックスシチューセット。
ビーフシチューなのに土鍋に入って出てくると言う見た目のインパクトも強い一品なのですが、味もそのインパクトに負けません。
土鍋の中でぐつぐつと沸き立つようなソースの中から牛肉を取り出して口に運びますと、ほろほろと口の中で崩れる柔らかさと、そこに絡みつくデミグラスソースの酸味とまろやかなコクが心を奪います。
日本酒が隠し味に入れてあるとのことで、まさに和と洋のマリアージュといったところでしょうか。
続けて口に運んだタンもまたとろとろの食感で、異なる食感が一層口を楽しませてくれます。
勿論野菜も忘れてはいけません。
ジャガイモ、ブロッコリー、ニンジン、様々な野菜がゴロゴロとてんこ盛りになっていまして、特にニンジンの甘味はシチューに負けない野菜のうまみを放ち、シチューとのコントラストが抜群なのです!
日本酒ベースの上品なソースに、それぞれの役者が大立ち回り。
まさにこれぞ、
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「和」のビーフシチュー!!
サチコさんの捜索の疲れも瞬く間に癒されるのでした。

人心地ついたところで、情報を整理してみるサチコさん。
奥様のSNSにアップされていた、家出の時の画像を見て行くと……
そこで、見えてきたのです。
奥様がどんな基準で、家出先を選んでいたのか、が!!

サチコさんは、奥様を見つけることができました。
とある旅館から出てきたところを捕まえまして、いつのように90度腰を曲げて頭を下げ、お迎えに上がったと声をかけるサチコさん。
王してここがわかったのか、という奥様の問いかけに、サチコさんは一冊の本を取り出して見せました。
それは、有村先生が剥製時代に別のペンネームで書いた同人小説。
その小説に、この旅館から見える景色がかかれていたのです。
今までの家出先もすべて、有村先生が書いてきた小説の舞台。
そこからサチコさんは、今回の家出先を見事割り出したと言うわけです!!
奥様はサチコさんの知識の深さに驚き、笑ってくれました。
そして、主人は何て?と現状を聞いてきます。
サチコさんはしっかりと、今は女性関係は何問題がない潔白だから安心してください、これで戻っていただけますね!と答えますと……
奥様は、ひとつ息をついて……こう言うのでした。
ええ、もちろん。
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それはできません!!



と言うわけで、美味しい食事で閃いて事件解決……と思いきや、まさかのどんでん返しが待っていたエピソードを収録した今巻。
このエピソードは前中後編の三本立てになっておりまして、この後は奥様の本当の家出理由に迫っていく展開となっております!
勿論その中でも「忘却」は忘れません。
もう忘却のための食事ではなくなっているような気もしますが!!

と思いきや、サチコさんのトラウマが完全には払しょくされていなかったことがわかるエピソードも収録。
まだまだサチコさんの忘却の日々が続くことを示してくれます!
そのエピソード他にも、サチコさんをライバル視する小野が久々に登場するエピソードや、失踪した伝説のSF作家に原稿に依頼に行くお話などなど様々なお話が収録。
それぞれにしっかりと恒例の食事シーンもありますので、そちらもたっぷりご堪能ください!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!